劇場公開日 2021年3月12日

マジック・ランタン・サイクルのレビュー・感想・評価

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4.0ち○○がいっぱい

2021年3月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ち、ち○○のことしか覚えてない。。
途中で地震があったのだが、
(これ、もしこのままビルが倒壊したら、最後に目にしたものがこの映画ってことになるのか。ちょっとやだなあ)
って真面目に思った。
短編映画をまとめた作品集なのだが、いずれもストーリーみたいなものはあまりないので、読み解くのが相当に難しいというか諦めた。これは映像を楽しむものだ。

そんな中、「スコピオ・ライジング」だけは例外的に分かりやすい。というか、監督の背景を何も知らなくても、ああこれはゲイムービーなんだって分かるくらい露骨。
エンジンのついてる乗り物というのは大概男性名詞だが、この作品はその中でも徹底的にバイクに拘る。バイクに上半身裸の男。この組み合わせは確かにセクシーだ。
そして映像は、髑髏や銃、ジェームス・ディーン、ドラッグ、と死の象徴をこれでもかというくらいに上乗せしていく。そもそもがバイク自体常に死と隣合わせの乗り物だし、タイトルにも使われるサソリ(映像内でも繰り返しモチーフに使われる)だって、死または死を賭したゲームの象徴だ。
そして、生が女性性の象徴だとするなら、対極の死は男性性の象徴だ。更に映像はふざけあい裸を見せる男たちや服を剥き性器を顕にさせる男たち、果ては教会でふざける男など、聖性の冒涜を重ねていき、死=悪魔性を描くことでこれでもかというくらいに男の世界を強調していく。
それは恐らく、監督自身が欲して止まない世界の描写なのだろう。男性として男性を欲することは、割と短絡的に悪魔崇拝に繋がるものであるのは歴史が証明しているし、暴力や死のイメージが男性性をより強化するのも、チキンレースやロシアンルーレットなどの度胸試しを見れば自明のことだ。

もう1本、「花火」も凄い。男の裸と暴力、そして男根や精液のイメージ。ああ、これが欲しいんだな、とよく分かる。
私自身はゲイの気持ちは全く分からない。ただ、自分の欲するものをこんなに直截的に表現できる才能って凄いな、と圧倒された。

なお、「花火」の花火ち○○については、『鉄男』におけるドリルち○○ばりに分かりやすく、かつ大胆な描写でびっくりしたことだけは付記しておく。

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よしえ

3.0ゲイと悪魔と前衛と。シュルレアリスムを受け継ぎ、サイケへと橋渡しした重要作家の実験映画集成。

2021年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

名のみ知っていて未視聴だったマジック・ランタン・サイクルを、アップリンクにて。

多少神格化されすぎているきらいは否めないものの、今見てもそれなりに面白い。
この人がいないと、のちのデレク・ジャーマンやシュヴァンクマイエルもあんな芸風にはならなかったかもしれないし、音楽シーンにおけるMVカルチャーの発展もなかったかもしれないと思えば、やはり重要な映像作家だといえる。
少なくとも、意識下の妄想や、夢の内容をそのまま映像化する手法においては、ダリやブニュエルらシュルレアリストの前衛映画を引き継ぎ、その後のサイケデリックやドラッグ・ムーヴィーに橋渡しした役割は大きい。
また、音楽においてはジョン・ケージやモートン・フェルドマン、絵画においてはジャクスン・ポロックやデ・クーニング、ジャスパー・ジョーンズ、ラウシェンバーグらが担った、NYの50年代から60年代にかけての「前衛」の、「映画」パートを象徴する存在でもあった(ちなみにこの時期のアートの中心人物の多くは同性愛者だった)。

同性愛、アレイスター・クロウリーへの傾倒、ミック・ジャガーやジミー・ペイジ、マンソン・ファミリーのメンバーとの交流、『ハリウッド・バビロン』の著者・・・などなど、アンガーを特徴づける面白要素は数多ある。
ただ、これだけは言える。
この人ほど、「映像技術とモンタージュの効果」、すなわち「映画というメディアのもつ力」に、絶大な信頼感をもって作品制作にあたっている監督はそうはいない。
なんというか、映像上のトリックやモンタージュ、手管を使うことに、ホントに衒いがないんだよね。玩具を得た子供のように、嬉々としてやってる。
要するに、この人は、映画の「手法」の力を100%信じていたということだ。
スコセッシ他、多くの映画人に敬愛されるゆえんである。

以下、上映順に。
●ルシファー・ライジング(1996→1980完成)
諸々の理由で製作が何度も頓挫したということもあってか、完成品としてはかなりグダグダなつくり。まるで素人がつくったカラオケ映像のようなクロウリー教本で、これならまだ幸福の科学の勧誘ビデオのほうが面白い。少なくとも、映画人としてのアンガーの名誉になるような作品ではないと思う。夜景にはフランドルやイタリア15世紀絵画の「地獄」の影響が垣間見られる。

●快楽殿の創造(1953)
悪魔崇拝とサイケデリック wth ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」。もっともアンガーのイメージに近い作品かもしれないが、個人的にはやはり前半が冗長に過ぎる。後半のサイケパートは、面白いけど一本調子で飽きる&技術的に荒っぽい&仕上がりが粗いという印象。ドラッグの引き起こすトリップをそのまま映像化したようなノリは、形而下の自動筆記に近い感覚があり、アンガー作品の中でももっともシュルレアリスティックである。

●我が悪魔の兄弟の呪文(1969)
上の二つと同路線だが、一番まとまりがよいし、出来もよいように思う。ミック・ジャガー作曲のノイズ音楽にのせて、やけにまつ毛の白い少年の嫌ったらしい表情とモンタージュで組み込まれる、ゲイの性妄想、悪魔崇拝の断片、アンソール的な仮面のイメージ。これらが三すくみのように影響しあって、やがてはサイケデリックな映像の奔流へと高揚してゆく。今でいうプロジェクションマッピングを用いたドリアン・グレイの肖像のようなカットが印象的。

●人造の水(1953)
9本中、もっとも美しくバランスのとれた珠玉の一篇。ヴェネチアの謝肉祭を抜け出してきたかのような古風なドレスをまとった仮面の女を案内役に、チボリ公園の噴水をさまざまな角度から映しこんでゆく。「流水の美」(自然)と、「人造物である噴水のバロキッシュな美」(人工)、その噴水が水流と風化で遺跡のようになった古雅の美」(自然+人工+時間)という、三つの美がめくるめくカメラワークで収められる。
モチーフ上、自然と人工の調和がはかられると同時に、画面内では光と影の調和、映画としては映像と音楽の調和がつねに追求される。水を用いた「ファンタジア」のような感じだ。
シンプルなぶん、観るもののノスタルジィと想像力をいや増しにかきたてる逸品といえる。

●スコピオ・ライジング(1963)
バイクの整備と幼少時のチョロQ遊びの平行モンタージュ。→裸レザーのヘルズ・エンジェルズ・ファッションショー。→部屋でくつろぐ青年がフル装備でバイクに乗りに行くシーケンス(テレビ画面にはマーロン・ブランド、壁にはジェームズ・ディーン、手元には新聞漫画、装飾はスカル。最後歩いていくシーンでキリストのイメージ挿入)→バイクのモトクロスレース→公道・路上での走行映像(ナチスのイメージ)。
オールディーズが全編流れ続ける密度の濃いBGMは、主人公が鏡に銃を構えてみせるシーンと合わせて、その後スコセッシに受容されたものといえる(『タクシードライバー』!)。
ゲイ・カルチャーとヘルズ・エンジェルズたちのバイク・カルチャーの明確な親和性、アスペ少年のようなバイク趣味への偏愛の表出、どちらかといえば陽性で衒いのないまっすぐな空気感など、アンガーの個人的な趣味とフェチシズムにおおらかに従った愛すべき作品で、一ミクロンもバイクに興味のない僕でもずいぶんと楽しそうに見えてほっこりした。そっか、出陣する彼のなかでは自分はキリスト並みなんだなw(そういや、俺だって子供のころ、出かけるときはいつも必殺シリーズの出陣テーマ曲が脳内で鳴り響いてたもんだ)。

●K.K.K. Kusutom Kar Kommandos(1965)
「スコピオ・ライジング」のバイクをカスタム・カーに置き換えただけの同工異曲の小品で、メカの美に対するフェティッシュな傾倒や性的なほのめかし(パフですりすり)はあるものの、総じて地味な仕上がり。もしかすると当時のCMとイメージが共有されているのかも、と思って観ていたが、まさにフォード財団からの依頼作らしい。で別件で委嘱料を使いきったので、4分しか作れなかった、と。

●プース・モーメント(1949)
次々と緞帳のようにあがる服、服、服。それ着た女性が、屋上で寝そべり、外出する。なんのことはない情景を凝ったカメラワークで撮った作品だが、これは20年代のハリウッド女優のオフを描いている作品らしい。登場するドレスは、すべて無声映画時代のハリウッドの衣装デザイナーだった祖母の私物とのこと。残念ながら僕は、画面内情報だけからは、これがそういう懐古趣味的映画だと気づくことはできなかった。

●ラビッツ・ムーン(1950)
月に棲むという兎をテーマに、月に焦がれる道化と、彼が思いを寄せる可憐な娘、それを揶揄するもう一人の道化(悪魔)の織り成す、コメディア・デラルテ風のパントマイム(ピエロとコロンビーヌ、ハーレクイン)。日本の昔話が元ネタとアップリンクの紹介にあるが、発想源はどう考えてもシェーンベルクのメロドラマ(音楽付き詩朗読)「月に憑かれたピエロ」だろう。
サイレント・ムーヴィーへの憧憬に満ちた擬古的でノスタルジックな作例だが、しょうじき観ていて退屈。マイムもダンスもやけに素人臭くて、キッチュが先に立ってしまうのが難か。おっと思わされたのは、本物の兎の上に死体のような道化人形が降ってくる刹那的エンディングくらいかも。ちなみに、何バージョンかあるようだ。

●花火(1947)
大トリに最高に面白いものを観せてもらって、感謝。
これ、淫夢厨大喜びやろ(笑)。
17歳のアンガーが監督したという彼の実質的デビュー作。
全編これゲイの性妄想という直情的な実験映画で、これのせいでケネス・アンガーはわいせつ容疑で逮捕されたらしい。たしかにむき出しというか、節操がないというか、すがすがしいまでに淫夢そのものなので、官憲も過敏に反応したんだろうなあ……。
途中、水夫にリンチ・レイプされる妄想シーンがあるが、「水夫」は古くからあるゲイ・アイコンである。船に閉じ込められているむくつけき男たちの間で、いやおうなしに愛が生まれるM/Mはそれこそ星の数こそあって、メルヴィル原作のベンジャミン・ブリテンの歌劇「ビリー・バッド」などもその一例だろう。単に男が男に欲情するだけでなく、サドマゾキズムがセットになっている点でも「花火」と「ビリー・バッド」は共通し(後者では天使のような水夫ビリーに焦がれる想いを自認できない船長が、ついにビリーを拷問しなぶり殺す)大変興味ぶかい。
性象徴としては、こっぱずかしくなるくらい直接的な描写になっていて、白濁液顔射とか酒瓶からの煙噴出とか、隠喩を超えて明喩、いや軽くギャグの領域に踏み込んでいる。股間に花火をつけながら、レスピーギの「アッピア街道の松」が大音響で鳴り響く終盤のクライマックスには腹を抱えて爆笑した。
まあこれだけ直接的になるくらい、抑圧下の性衝動というのはマグマのように熱く滾るものだということで、その生々しさと衒いのなさゆえに、当事者性(およびこれが撮られた時代背景)においては、どこまでも切実で、悲痛ですらあるのだけれど。

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じゃい

2.5なんとなく未消化で言うことがない。 噴水の撮影法が白眉。ゲイロジッ...

2021年3月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

なんとなく未消化で言うことがない。
噴水の撮影法が白眉。ゲイロジックも上手い。

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kazuyuki

4.5"Scorpio Rising"

2021年1月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

知的

難しい

「花火」(47年)
Fireworks
ゲイとサディズムで構成されているようで、水兵に抱き抱えられ、精液を思わせるふんだんに溢れるミルク、股間から発射される火花、マッチョな男とのやり取り、屈強な水兵たちに殴られ、恋人と寄り添う束の間。

「プース・モーメント」(49年)
Puce Moment
煌びやかなドレスが何着と画面いっぱいに、選んだドレスを着る女、屋上へと移動、高級そうなワンちゃん数匹を引き連れて、数曲流れるサイケな音楽はボーカルが一緒、バンド名が分からない、49年にある音楽ではない筈、後から加えたものなのか?

「ラビッツ・ムーン」(50年)
Rabbit's Moon
月に焦がれる道化の男、交わる不思議な人々、サーカスを思わせる雰囲気、全編流れるのはザ・フラミンゴスにザ・デルズやザ・カプリス、マリー・ウェルズにザ・エルドラドスといったオールディーズやドゥーワップ。

「人造の水」(53年)
Eaux D'Artifice
チボリ公園?噴水と色々な流れをする水、貴婦人が足速に、ビバルディの"四季"が流れ、奥ゆかしい雰囲気と小難しさ。

「快楽殿の創造」(54年)
Inauguration Of The Pleasure Dome
これぞ映像の魔術師と言える怪作、斬新な作品全体のLOOKとサイケな美的センスが素晴らしい。
とにかく飽きることのない刺激的な映像の場面転換など先鋭的で実験的な凄まじさ!?

「スコピオ・ライジング」(64年)
Scorpio Rising
これを観る為の"マジック・ランタン・サイクル"でもあり、これこそがケネス・アンガーと個人的に。
「乱暴者」のマーロン・ブランド、ジェームズ・ディーン、ヒトラー、キリスト、本作を観て激怒なヘルズ・エンジェルス、圧倒的なゲイの世界観は"トム・オブ・フィンランド"でもありフリードキンの「クルージング」的でもある。
ウィレム・デフォーの「ラブレス」でのスタイルにライアン・ゴズリングのジャケットの蠍な「ドライヴ」などリスペクトされる訳で。

「K.K.K. Kustom Kar Kommandos」(65年)
T型フォードのホットロッドを優しく愛でる三分間に身も心も癒される。

「我が悪魔の兄弟の呪文」(69年)
Invocation Of My Demon Brother
悪魔崇拝的なナチズムと"オルタモントの悲劇"のストーンズやヘルズ・エンジェルスを映し込み、フルチン姿の男たちと音楽はミック・ジャガー。

「ラビッツ・ムーン」(79年バージョン)
Rabbit's Moon
ドゥーワップの楽曲群からジャンルはポストパンクへと様変わり"The Raincoats"の曲がループされる。
音楽が変わるだけでまた違った感想も生まれてくる。

「ルシファー・ライジング」(81年)
Lucifer Rising
神秘的で悪魔主義的な世界観とマリアンヌ・フェイスフルやマンソン・ファミリーからボビー・ボーソレイユが音楽を担う、ヒッピー的要素がプンプンと醸し出されたハリウッド・バビロンの萎びた模造。

「マウス・ヘブン」(04年)
Mouse Heaven
1920年代から30年代に限定したアンティークのミッキー・マウスの人形や玩具などのグッズがたくさん出て来てミッキーファンには楽しめる??

「ザ・マン・ウィー・ウォント・トゥー・ハング」(02年)
The Man We Want Go Hang
1998年4月にロンドンのオクトーバー・ギャラリーで開催されたアレスター・クロウリーの絵画展「THE OLD MASTER」のドキュメンタリーをケネス・アンガーが監督した作品。
まぁ作品を接写したような、登場する品々はジミー・ペイジなどのコレクションから、らしい。

「ラビッツ・ムーン」(フッテージ)
Rabbit's Moon
メイキング映像集的な無音。

10年以上前にこのDVDを購入してから久々に鑑賞、ケネス・アンガーというより"スコピオ・ライジング"に興味津々だったあの頃、その気持ちはいまだに変わらないが他の作品も興味深い反面、独特な世界観に難しさと斬新さがゴチャゴチャに廃れない凄まじさ。

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万年 東一