劇場公開日 2012年3月16日

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「激変の時代を生きた女性首相の偉人ダイジェスト」マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0激変の時代を生きた女性首相の偉人ダイジェスト

2020年4月25日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

第二次世界大戦終結間際から1990年の首相退任までのサッチャーの政治家生活を描いた伝記映画。夫に先立たれ認知症が世間に公表された頃を軸に、過去の主要な出来事を頻繁にインサートして、イギリス政界や当時の社会状況をダイジェストした記録もの。映画「リトルダンサー」にある国営化政策の撤廃にからむ労働組合との軋轢、IRAのテロに対する強硬姿勢、アルゼンチンと戦争したフォークランド紛争、最後は人頭税導入で保守党内部で孤立するところなど、一応歴史のなかのサッチャーの立場は理解できる。対して私生活は説明不足で、娘キャロルは何度か登場するも息子マークの成人した姿はなく、夫デニスとの婚約エピソードはあるが、幻覚に度々現れるほどの夫婦愛の核心は描かれていない。故にサッチャーを演じたメリル・ストリープのひとり舞台に終わる。20代はさすがに若い女優に任せ、中年から晩年までのサッチャーの妥協なき強靭な女性像を見事に演じて、実力をみせつける。この演技で三度目オスカー受賞の名誉を獲得する。ただ精巧なメーキャップが内面の表現を削ぐ晩年は個人的にあまり感心しなかった。「クレイマー・クレイマー」「ソフィーの選択」、「フランス軍中尉の女」の名演には及ばない。
伝統に凝り固まった男性組織の硬直化を打破する、女性政治家の必要性をより深く描いても良かったのではないか。副首相の辞任劇が生きたはず。
情報量は多いがドラマとしての面白さはない。

Gustav