「猛毒を以て猛毒を制す」外事警察 その男に騙されるな 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
猛毒を以て猛毒を制す
ドラマ版は未見なのだが、骨太なサスペンスを期待させる予告編に惹かれて鑑賞。
いやー、期待を裏切らない見事なサスペンス大作でしたよ!
フィクションとノンフィクションのキワキワをゆく設定、
緊迫感溢れる映像、三転四転する物語展開……
こんなキレのあるサスペンス、邦画じゃ滅多にお目にかかれない。
何より魅力的なのが、なかなか本性を現さない登場人物たちだ。
まずは渡部篤郎演じる主人公!
優男に見えて実はヤクザも裸足で逃げ出すほど狡猾な超危険人物。
ロロ・トマシさんのゲス野郎発言連発も納得のクズっぷりに戦慄(笑)。
国家の目論見に翻弄される一市民、真木よう子も良い。
ギラつくような怒りと娘への愛情が混在する眼差しが素晴らしかった。
その他、尾野真千子も石橋凌もエンケンも
安民鉄(役者名知らない)も田中ミン(変換できない)も
誰も彼も腹に一物抱えてて少しも油断なりません。
狸と狐がわんさか群れて騙し合いの化かし合いでしてよ。
そこらじゅうにチミモウリョウがバッコしておりましてよ。
石橋凌とNIS長官の最後の会話なんて……なんかもう、思考のスケールおかしいよ、あんたら……。
一方、ある意味最も分かり易いキャラが余貴美子演じる官房長官。
彼女のことなかれ主義っぷりは皮肉が利いてて笑えた。
まさに『対岸の火事』な対応だったが、核攻撃なんて事態が本当に起こったら
対岸だろうが地球の裏側だろうがタダじゃ済まないと思うけどね。
核の恐怖を誰よりも知るはずの我が国が、
新たな核の恐怖を生み出す温床になり兼ねないという恐るべき事実。
あの非核三原則だってとうの昔に反故にされてたくらいだから、
この物語が単なる作り話だと誰に断言できるのか……。
残念だったのは終盤。
展開がやや大味になってしまったし(のんびり会話してる場合じゃないよッ)、
ちょっとセンチメンタリズムに走り過ぎてしまった感があるかな。
別にセンチな話が嫌いな訳じゃないのだけど、
それまでの物語の空気には少々そぐわなかったというか。
だがそれを越えてのラスト30秒は、久々に背筋にゾゾッとくるサプライズだった。
確かに終盤の展開には何か違和感を感じてたが……
まさかそんな! そこまでやるかアンタ!?
こ、こ、公安って怖ええぇぇ〜!!
邦画規格外の出来にして、しかし日本でしか作れない、腹にズシンとくる社会派エンタメ大作!
オススメです!!
<2012/6/3鑑賞>