「愚か者も美点」よりよき人生 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
愚か者も美点
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自己資金0でレストランを開業しようとすること自体無謀だが、これ程酷い状況になる前に引き返すことは出来た。
しかし、ヤンは“自分の店”に固執するあまり、利益が出るうちに店を売れという助言を聞き入れない。
とにかく進んでみてやってから考えるというヤンには同情出来ないのだが、そんな彼にも美点はある。
(モントリオールでの仕事の為カナダへ行った)別れたはずの恋人ナディアから彼女の息子スリマンを預けられても断らない。
母親と離れた寂しさから万引きしてしまうスリマンをキチンと叱るし、どんなに苦しい状況になってもスリマンを放りだそうとはしない。
ヤンは悪い人間ではないのだ。
それでも、世の中にはそんな彼の愚かさにつけこもうとする人間に溢れている。
ありふれた人間のありふれた愚かさにつけ込んでくる。
悲しいかなそれはリアルな現実で、観る側はヤンとスリマンをハラハラしながら見守ることになる。
ラスト、スリマンと母親ナディアは再会し、ハッピーエンドを思わせるが、ヤンの借金はなくなった訳ではないし、カナダへの渡航費用は店を安く買い叩いた怪しげな貸金業者から奪ったものだ。
彼等三人の再出発、前途には雲がないわけではない。
この辺りのほろ苦さはフランス映画ならではかもしれない。
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