アルバート氏の人生のレビュー・感想・評価
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パパ活の悲しき末路
女性だが男性としてホテルの執事をするアルバートが、同じように男性として生きる女性に出会うことで自らも誰かと共に生活する夢を見ていく話。
同性愛だったりLGBTQの人たちの話って無駄に綺麗に描かれがちだけど、今作はアルバートが恋愛下手すぎて普通にめんどくさいおじさんなのが良い。こういうパパ活に上手く利用される感じは、たとえ女だったとしても同じ。異性愛者と変わらないダサい姿を描くことで、マイノリティが実はマイノリティでは無いことが示されてる気がする。
アルバートのセクシャリティは最後まで明確に定まることは無いものの、恋愛においての行為が完全におじさんだし、プロポーズの言葉も「世話する」から結婚してという風に男性性前面に出てちゃってるので、アルバートに自覚がなくてもやっぱり男なのかなと思った。
生き方に共感
重々しい時代に、必死で生きる姿が感動を呼びます。
その時代背景の割に、そこはかとなく漂うユーモアもあって、特に、序盤の「えっ、そうなの?」という展開には興味を惹かれ、つい続きを見ずにいられない展開で、見せ方が上手いな、と思いました。
映画は、決してハッピーには終わりませんが、登場人物がそれぞれていねいに描いてあり、落ち着くとこに落ち着く感じです。
じっくり、腰を据えて、彼?の人生を見るのもいいでしょう。
2014.6.22
人生何があるか分からない
主演のグレン・クローズは男性としての役柄を上手く演じていました。
観る前から女性が男装していると知っていたので、女性っぽさを探せば女性だと分かりますが、
何も知らずに観ればちょっと女性っぽい男性なのだろうと思うだけかもしれません。
美術も良く出来ていたと思います。
当時の雰囲気や、映画全体の色調を決めるポイントだったように思います。
この作品のテーマは「愛」というよりも「孤独」だと思いました。
女性が男性のフリをして生きていかなければならなかった時代背景や国の問題もあるとは思いますが、
何よりも人と人の繋がり。それもかなり深い意味での繋がりを求めた主人公の物語です。
10代の頃に一人身になり、ある出来事がきっかけとなって男性として生きる道を選びます。
ホテルで使用人として住み込みで働き、部屋には給料とチップを床下貯金して、自分で店を持つという計画を着々と進行中です。
そんなある日、職人のヒューバートがホテルの修繕にやってきますが、職人を泊める部屋が無かったので一日だけ主人公アルバートと相部屋になります。
このヒューバートがアルバートの人生を変えます。
職と伴侶があり、とても充実した日々を送っているヒューバートですが、彼もまた秘密を抱えています。
部屋に泊めたことでお互いの秘密を知る事となり、アルバートはヒューバートの生活に憧れを抱くようになります。
出店計画を伴侶と共に生活する場にグレードアップし、伴侶探しも開始します。
そして、伴侶として女性を選択しました。
なぜ自分が女性に戻って男性を伴侶としないのかという疑問が出てきますが、
これはアルバートが男性として生きると決断したある出来事が影響していると思います。男性を伴侶とするのは嫌なのです。
女性が職を得るのが大変な時代だったと言っても、アルバートの場合、自分が働いているホテルのオーナーは女性ですし、
自分で貯めた資金で店を出すのですから職はあります。それでも伴侶は女性なのです。
この女性を巡り、アルバートは希望を抱き、苦しみ、それでも新しい生活を夢見て前に進もうとします。
一人で静かに店をやりながら生きる道を選ぶ事もできたはずなのに、あえて困難な道を選びました。
それだけ彼女は"孤独"だったのだと思います。
親、兄弟、子も無く、友人も居ない、何十年も自分を偽り男性として生き、同僚とも言葉少なに生活し、店を出すという夢の中でも一人きり。
彼女にとってはその孤独が当然であり、それが自分の生きる道だったはず。
しかし、ヒューバートが現れた事で"孤独"を再認識してしまったのです。"孤独"の苦しみや辛さを思い、心を共有できる誰かとの繋がりを求めました。
それはアルバートにとって、生きている実感を感じられる唯一の時間だったのかもしれません。
一見、奇を衒ったような作品に見えますが、性別がどうとか関係無く、
一人の人間が人との繋がりを純粋に求めた、悲しくも人間味のある作品だと感じました。
肯定と理想
主人公のアルバートの生き方は、確かに自分らしさを押し殺したものだったかもしれないけれど、それでも尚、自分の人生(それこそ過去現在未来の全て)に対して肯定的であったように思えました。生きるために、夢のために、たくさん働いて、人を愛して、何もかもに必死であったようなアルバート。しかし、その実、現実的な部分と妄想の中に限った話の部分が入り交じるなど、彼は自分の人生を哀れなまま、あるいは寂しいままにしておくことを是とせず、先走ってしまうのです。彼は話しの節々で人間関係の距離の取り方を間違っていて、その必死さがより哀れを誘い、また幸福を願わずにはいられなくさせます。アルバートの生きた歳月を思うと虚しさがこみ上げてきます。
また、彼を取り巻く人間模様にも目を見張るものがあります。
男装については、ヒューバートの方が2,3枚上手かも…。それは多分、彼が彼の求める人生を忠実になぞってきたからこそなのでしょう。アルバートと似た出で立ちでありながら、雰囲気が全く違っていて面白いです。
女優の演技が素晴らしいこと、各キャラクターの人間像を考察していく余地がおおいにあること、ラストシーンの是非…などとても深く楽しめました。
どうにも共感できない人ばかり…。
なんともやりきれないラストでしたが…。
女ひとりでは生きていけない時代に男性として生きていくことを決めた‘アルバート氏’の人生。
グレンクローズのアルバートはどう考えてもチョットおかしな人…にしか思えない。
それに、アルバートが恋を抱く相手や、その恋人も勝手な奴らばかりでどうにも共感できない。
たしかに、グレンクローズの男装演技は一件の価値あり。
男性にしか見えんもん。
あとは、子供の澄んだ視線が救いでしょうか?
微妙にピントずれを感じる映画でした。
些細な夢が叶わぬ妄想に変わる哀れ
黙々と卒なく仕事をこなすウェイター、アルバートの姿を追うオープニングによって、“彼”の真面目な性格や優しさ、気配りのよさを知る。
女であることを隠し、コツコツと貯めたカネを隠し、いつかそのカネで自由を掴むのが夢だ。
そのままいったら、もうすぐ夢が叶うはずだったのが、ハンサムな“大男”ペンキ職人のヒューバート・ペイジによって狂い始める。
アルバートの「些細な夢」が、ヒューバートとの出会いによって「膨らむ夢」に変化してしまう。それが叶わない「妄想」だということに気づかないアルバートに哀れさを感じる。アルバートが求めたのは家族という形であって、そこに愛が伴わない。アルバート自身、これまで誰からも愛されたことがないのだ。
心から人を愛することができないまま、誰にも本名を明かさずアルバートのまま、一思いに夢を追ってしまう。
人々は40年もの“彼”の人生や夢を顧みることなく、それぞれの人生を歩み始める。世の中が何事もなかったかのように時を刻み続けることに無情感をおぼえる。
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