「アルバート・ノッブス 数奇な人生」アルバート氏の人生 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
アルバート・ノッブス 数奇な人生
ホテルのウェイターとして長年真面目に働く初老の男性アルバート。人との関わり合いを避ける彼にはある秘密が。性別を男性と偽って生きてきた女性だった…。
主演グレン・クローズ、助演ジャネット・マクティアの演技は評価されたものの、作品自体の評価は芳しくなかったようだが、なかなか良作だと思った。
女性が独りで生きていくには厳しい時代。暗く辛い過去と断ち切る為、男性として生きていく事を決めたアルバート。
人となりも超が付くほど謙虚で真面目で、ホテルの同僚や宿泊客でなくとも一目置いてしまう。
ある日、ホテルにペンキ職人のペイジが働きに来る。
実は、ペイジもまた女性。
自分と同じでありながら、結婚もして全く違う生き方のペイジに、アルバートは大きく影響を受ける…。
アルバートに憧れて(?)、ホテルの若いメイド、ヘレンを伴侶に迎えようとアプローチし始めるのだが、それがまるで、初めて恋した内気な少年のよう。
また、アルバートはコツコツと金を貯め、煙草の店を出すという密かな夢も持っている。
アルバートが不器用で一途で純朴な分、周りの人物は醜い。
アルバートの金目当てで近付くヘレンと彼女の恋人でボイラー職人のジョー。金にがめついホテルの女主人、ベイカー夫人。
最も、ヘレンの場合、ジョーに遊ばれていただけなのだが。
ラストは賛否分かれる。
アルバートの人生は余りに哀しくもある。
しかし、自らの生き方に疑問を持ち、殻を破ろうとした、密やかながらの人生讃歌だと感じた。
主演・製作・脚本・主題歌作詞の4役を務めたグレン・クローズの入魂作。
最初は、いくら何でも名女優とは言え役柄には無理があるだろうと感じていたが、次第に違和感が無くなってくるのだから不思議。“アルバート氏”にしか見えない。
ペイジ役のジャネット・マクティアは秀逸。その男前振りも含め、正直、グレン・クローズを食っていた?