「おっさんなのに可憐」アルバート氏の人生 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
おっさんなのに可憐
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グレン・クローズ、おっかないゴツい女優という印象だったんだが…。
男装してアルバート氏を演じるクローズは、何故か、かよわき幼子のようだった。
いや、見た目はちゃんとオッサン然として冴えない初老男なんだが、何ともいえない純真さだった。
孤児だったアルバート、職を得るため男装し女とバレぬよう働き生きてきた。
若い頃の悲惨な出来事がトラウマとなっており女には戻れなかった。
アルバートは孤独すぎて人の愛し方が判らない。
同僚の女性ヘレンを一生懸命口説くのだが、何かがチグハグで恋愛になっていない。性愛や欲望の影すらない。まるで恋に恋する少女のようだった。
(偶然知り合った、同じく男装のペイジ氏がきっちり恋愛もして女性と結婚までしているのになんという違いだろう。)
仕事も出来て苦労人のアルバート、見た目は立派なおっさんでも、心の奥底は大人の男でもなく女でもなく、子どものままだったような気がする。
アルバート氏が求めていたのは「恋人」ではない。
探していたのは、孤児の自分が知り得ない、温かい「家族」だったのかなあと思う。
口説いていた女性ヘレンや、憧れていたペイジに、求めていたのは恋や性愛ではなく、母性や父性だったのではないか。
そんなアルバート氏の願いは、ほろ苦いというにはあまりに切ない結末をむかえるのだが…。
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この映画、一番最後のシーンで少し救われる。
ヘレンは自分が産んだ子にアルバートと名付けた。
このアルバートには母ヘレンが居る。父代わりとなってくれそうな心優しきペイジ氏もそばにいる。
孤独の連鎖は断ち切れるのだなあと、希望を持てた瞬間だった。
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