「人喰い巨人の描写は強く印象に残る作品。」進撃の巨人 ATTACK ON TITAN Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
人喰い巨人の描写は強く印象に残る作品。
特筆すべきは人喰い巨人の描写。
実際の人間が演じる巨人はフルCGとは異なる趣が有りました。
人喰い巨人。
ヒトに限りなく近いフォルムだが。
フォルムの近いヒトを食する恐怖。
有るべきモノが有るべき所に無い違和感。
圧倒的な体格と再生力を保持する絶望。
本作に限らず“人喰い巨人”が持つ特性。
その特性が巧く表現されていたと思います。
人喰い巨人を彩る哀れな人間達も良く。
引き千切られ、食い千切られ、壁に叩きつけられ、丸呑みされる人間。
彼等の哀れな断末魔、末路がキチンと描かれており。
昨今のヌルたい志の低い邦画の中では誠意を感じました。
また序盤の教会場面も良かった。
鉄格子越しに手を犇めき合う様子の浅ましい人間達。
絶望の声と共に隙間から夥しい量の絵の具が流れる。
仲間を排除して閉ざした扉が、自らを閉じ込める檻となる。
その皮肉さにグッときました。
また終盤のウルトラマン場面も割合好きでした。
グロさを伴った巨人同士の格闘。
片や怠惰なフォルムの巨人、片や筋肉線維が剥き出しの巨人。
彼等のスピーディな取っ組み合いは観ていて楽しかったです。
画面に飛び散る飛沫表現も好みでした。
惜しむらくは戦闘以外のドラマ部分。
特に調査兵団の設立以降のドラマは……正直しんどい。
次の展開に転がすための契機、切欠が酷く。
水崎綾女が「子供の声がする」と言い単独行動を始めた時には思わず嘆息。
その後も『素人集団だから』では乗り切れない程の間抜けな行動の釣瓶打ち。
作り手が意図したか否かは分かりませんが水崎綾女がアレな事になった瞬間は思わずガッツポーズが出ました。
また作品内の設定も色々とノイズに。
原作に想い入れが無いため登場人物の名前は然程気になりませんでしたが。
軍用車や不発弾やガスがブイブイ幅を利かせている世界。
デカい軍用車を穴に詰めれば、一兵隊に支給されている噴射ガスを集約して爆発させれば…と後生大事にしている爆発物の代替物が色々思い当たってしまいノイズに。
残された技術レベルとミッションのチグハグ感が最後まで残ってしまいました。
人喰い巨人の描写は強く印象に残る本作。
“特撮好事家”な或る年齢層の方が「あの時代、再び」を志した作品とも言えます。
これはこれで潤沢な予算を基に構築されるフルCGのハリウッド大作とはまた違った趣が。
何十分の一の予算でも技術と工夫で面白い作品は作れるのではないか、という日本特撮技術への誠意と愛情は感じる作品だと思います。
そこら辺の心意気を受け取るか否かで拒絶/否定の度合いが変わってくるような気がします。
オススメです。