「「社会」という病巣」病院 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
「社会」という病巣
F.ワイズマン特集 - その3 (1970)
ニューヨーク・ハーレムにあるメトロポリタン病院を行き交う人々働く人々を記録したドキュメンタリーです。
ここはやはり凄まじい現場でした。様々な病気の治療・検診・手術の場面も多いのですが、アメリカだからなのかハーレムだからなのか、薬物の過剰摂取の患者も次々と取り上げられます。或る男は「誰かから手渡された錠剤をのんだらおかしくなった」と怪しげな事を言いながら「死にたくない」と騒ぎまわります。そして、信じられない量の嘔吐物を診察室内で吐き散らかすのです。こんなにも吐くものが胃の中にあるのかと驚くほどです。
また或る老人は「このままだと命に関わるから」と入院を勧められても決して応じようとせず、その理由も話しません。
恐らく精神疾患で入院していたと思える青年を退院させようとするのですが、息子に全く無関心な母の下に戻したら再び病が再発するのが目に見えているので医師は困惑します。
或る患者の治療には福祉センターとの連繋が必須と考えた医師はセンターと連絡を取ろうとするのですが、先方は出来るだけ関わらないようにしようと及び腰なのです。
こうして浮かび上がるのは、病院で肉体的な病を治療しようとしても、それは精神的な病と繋がっており、それは更に社会的な病巣と一体になっているという事実です。こりゃあ、お医者さんの活動は、目の前のバケツに開いた穴を対処療法的にとにかく塞ぎ続けているだけで、むなしくなるだろうなぁ。さりとて目の前の病人を放っておくわけにはいかないのです。
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