「爺さんと自転車。」ビル・カニンガム&ニューヨーク ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
爺さんと自転車。
この日は御歳80歳を越えた爺さん映画二本立て♪という一日。
まず一本目は、ビル爺さん。NYタイムズ紙の人気カメラマン、
らしいのだけど…^^;
今作を観るまで名前も存じ上げず、お顔を拝見したのも初めて。
あら!でもアチラでは相当な有名人だったんだ、この御方って。
1929年生まれが、颯爽とスポーツサイクルに跨り街へ繰り出す。
いわゆるストリートファッションを撮るのが専門(新聞コラムの)
らしいのだが、まぁホントによく動いて、よく撮る。さすがだ。
カメラマン歴50年以上というのだから、腕ではプロの領域だし
名立たるファッションショーでも彼は写真を撮ってきている。
ただ面白いのは、彼の舞台はそこよりもストリートなのらしい。
一般人が日銭を賭けて命一杯自腹ファッションを醸し出す姿を
彼はいち早くモードに取り入れる。プロの着眼点もかなり正確。
新聞コラムの紹介で、そのファッションが口コミで広がるのは
日本の女子高生が雑誌やネットで流行らせるファッション眼と
よく似ている。え?なんであんな格好が流行るの??と私たち
オバサンが首を傾げるセンスにだって、それが世界的に広がる
人気を目の当たりにしたら、スゴイ!と認めざるを得なくなる。
目の付けどころ、っていうのはそれが大好きな人には神憑的に
存在するんだろうか。センスに乏しい私には羨ましい限りだ…。
しかし爺さんと自転車というと、昨今の流行りは桐谷さんだ(爆)
(スイマセン、桐谷さんはまだ60歳代なんだけど)
あの方は(マツコの番組などで紹介)株式のトレーダーなのだが
その身体能力がハンパじゃないらしい。是非とも彼とビルとで
自転車疾走競技でもやったらどうだ?とつい思ってしまったが、
何しろ80歳を越えてなお、あれだけスイスイ走れるのが羨ましい。
独身。独り暮らし。暮らしぶりはホントに質素。
しかし大きな違いはビル爺の方は、ホントに写真以外は要らない!
という感じなのだ。結婚も子供も家族も、豪邸も高級車も高級服も。
食べることにすら興味がない!というのには驚いた。
パーティーでも何も口にしない。あれで健康面は大丈夫なのか!?
撮影中もほとんどファストフードしか口にしていない。いわゆる
健康診断など、きちんと受けているんだろうか?(いないよねぇ)
大きなお世話だが、家族が居るなら、こんな風に口煩く言われる。
彼はカメラと写真以外の生活面ほとんどを切り捨て、
自身の好きなように生きている。彼の人生だし好きにしたらいいが
家族を抱えて責任塗れのお父さん方はさぞ羨ましがるだろう。
ビル爺の削ぎ落とし方は、本当に潔すぎて、口アングリなのだ^^;
しかし人生を振り返って(まだまだ振り返りなどしないのだろうが)
自分の好きなことを仕事にできて、それを思う存分やれて、迷惑が
かかるとすれば自分自身だけ…だったら、何にでも挑戦できそうだ。
ただ面白いのは、これはお国柄かもしれないけれど、
日本人はそれをやりながらも、常に家族を意識している気がする。
桐谷さんも「結婚はまだ諦めてない」「私にも家族がいれば…」なんて
言っていたし、次に観た「二郎は鮨の夢を見る」の二郎さんだって、
ご自身の子供達には最高の愛情と、継仕事を与え続けているのだ。
自分の人生なんだから、自分の好きなように…なんてのたまいつつ、
親を喜ばせたいとか、子供に楽をさせてあげたいとか、
結局そのために頑張ってしまう日本人という気がする(いい意味で)
ビル爺の笑顔が素晴らしく、その場にいる人を皆幸せにするような
ビッグスマイルで(悪態もつくけど^^;)他を巻き込んでいく優雅さが
何より羨ましい。多分観た後は青い上着を買いたくなることだろう。
(革新マニアが世間を才能で包むと凄い効果が生まれるってことね)