「悪「役」。」シュガー・ラッシュ 佐伯さんの映画レビュー(感想・評価)
悪「役」。
Fix-It Felixというゲームの悪役で、そのゲームの主人公やキャラクターが楽しそうに暮らすマンションの脇のゴミ溜めに一人ぼっちで暮らすラルフ。
ゴミ溜めから、みんなに慕われ好かれる主人公フェリックスを眺め、30年間悪役を演じ続けたラルフの「みんなから愛されるヒーローになりたい」という掟破りの夢。
そんなラルフが出会った、シュガーラッシュというゲームのキャラクターの女の子ヴァネロペ。
生意気で皮肉屋、ワガママだけど、「欠陥プログラム」と呼ばれる彼女もまた一人ぼっちです。
欠陥プログラムだということを理由に、レース出場を禁じられている彼女の夢は「レーサーになりたい」。
そんな似たもの同士の二人がぶつかりながらも協力し合い、ラルフは「ヒーローになりたい」という夢を、ヴァネロペは「レーサーになりたい」という夢を叶えます。
悪役会合でザンギエフも言っていたようにラルフは悪役でこそあれ、本当の悪人ではない。悪役がいなくちゃゲームは成り立ちません。
ラルフは気は短いですが心根はとっても優しいのです。
ヒーローメダルをずっと欲していたラルフにヴァネロペが首に掛けてプレゼントした「私のヒーロー」と書かれたクッキーのメダルはベタながらも涙が滲みました。
欠陥プログラムの彼女がレースに出場し、万が一優勝ということにでもなれば、プレイヤーに故障と思われ修理に出され電源が抜かれてしまう、そうしたら欠陥プログラムの彼女は避難することが出来ない、死んでしまう、と聞いてラルフは泣く泣く2人で作ったレース用の車を破壊します。
今まで「壊す」ことしか出来なかった自分が、初めて協力して何かを「作った」、それをまた自分の手で壊さなければならないラルフ、
信じていた、やっと出来た友達だと思っていた人間に理由も知らされずやっと手に入れた車を壊され「裏切り者!あんたなんかもういらない!」と涙を流し走り去るヴァネロペ、このあたりからがっつりストーリーに入り込んでいました。
子供のころ一度は考えたであろう、ゲームの電源を切ったら中のキャラクターは休んでいたり普通にお話したりしてるのかな…?という、トイストーリーのゲーム版という感覚でも楽しめました。
特にワクワク、更に発想に関心したのが、キャラクターがコンセントの線を電車のレールのようにして移動、コンセントの親の部分(たくさん刺さっているところ)が「ゲームセントラルステーション」という駅のようになっていたところ。
いい大人が子供のように「うおー!すっげー!!」とニヤニヤしてしまいました。
ゲームの設定やキャラクタービジュアルも凝っていて、特にシュガーラッシュのコースやキャラクターたちの衣装などがかわいすぎてもっとアップでゆっくり見たかったくらい。
ヴァネロペの髪についているデコレーション用シュガーもたまりません。
ドーナツの警官や、いろんな形のキャンディの観客、チョコレートの池にキャンデイの木、グミの腰掛け…、シュークリーム屋さんのキャラクター、ビアードパパが出てきたときは「おおっ!」となりました。
ゲームの悪役が悪役であることについて考え、そして「ヒーローになりたい」と思い、行動する、正に本当の意味での「自分探し」、大人が楽しめる映画でした。
短編の「紙ひこうき」もとっても素敵なお話!ちょっと涙ぐんでしまいました。
久しぶりのディズニー映画でしたが、やっぱりディズニーは鑑賞後幸せな気持ちになれるなーと思わされました。