「やや難解」009 RE:CYBORG 山田たぬきさんの映画レビュー(感想・評価)
やや難解
天使編への一つの回答。
神山節ともいえる現代思想からの引用、迫力あるサウンドには目を見張った。3Dも悪くなかった。
全編を得体のしれない「彼」の緊張、不安、興味、畏怖が貫いている。
「彼」の正体を知りたいという欲求は途絶えることはなかったが、結局その正体は明かされずに幕を閉じた。
石ノ森章太郎さえ出せなかった「彼」の正体という回答を棚上げする所に監督の石ノ森への尊敬、そしてこの世界には近代科学の象徴ともいえるサイボーグでさえも「わからない」前近代的ななにかが存在する。それでもそれに対して人間は自らの信ずる「正義」を行使するしかない。そんな気持ちが隠れてるように思えた。
ラストを夢オチと解釈する人もいるようだが私はそうは思わない。
「彼」である脳(これは劇中の「彼」への一つの解釈にすぎないが)が、ジョーの望み通りに作り上げた虚構の世界だと思う。水にうかぶ三人のサイボーグ、そしてフランソワーズが水を「渡る」ことで出会うジョーの死が水を象徴として暗示されてるように思えた。
世界は救われたが、やはりジョーは無限の宇宙を彷徨っているのだろう。
ジョーもまた、「彼」に導かれた天使というイコンで連綿と紡がれた世界を救う為の媒介者だったのだ。
これを敗北と捉えるか、勝利と捉えるか。ハッピーエンドと捉えるかバッドエンドと捉えるか。「彼」の声と同じくその「聞こえ方」は決して一通りであるはずはない。
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yu-mi1963さんのコメント
2012年10月29日
山田たぬきさんのラストの解釈になるほどと納得させられました。
これならば一本の映画としても成立します。
もやもやがちょっとだけ晴れたかもしれません。