「ディカプリオがやりたかったことの集大成、たぶん」J・エドガー ゆみくらさんの映画レビュー(感想・評価)
ディカプリオがやりたかったことの集大成、たぶん
FBIはだれでも知っているが、その創始者フーパーについて知る人は、日本にはほとんどいないだろう。もちろん自分も含めてだが。
そのフーパーの人となりというのだろうか、映画を観るにつれて思ったのは、ここに描かれているフーパー像は、おそらくディカプリオがこれまでに映画でやりたかったことの集大成に違いない。
(ほぼ)同年代ということもあり、デビュー当時からずっと応援してきたディカプリオ。彼はこの映画で、これまでやりたかったことをきっとほぼすべてやり遂げることができたに違いない。そう思ってつい「泣ける」にチェックを入れてしまったが、フツーにこの映画を観て「泣く」ことはまずない。たぶん。
昔から老け役(というか役の晩年とか)を自分でやるのが好きだったディカプリオ。かつては、ただ付け髭を付けただけで童顔がよけいに目立ってしまったとかずさんな仕事ぶりが多かったが、今回の老けメイクにまるで違和感がなかったのは彼が年取って自前で老けてきたからなのか、それともメイク技術が格段に向上したからなのか……そう思うとまた目頭が熱くなる。
しかし泣く子も黙る「FBI」の権力者なんて、はたから見たら超絶エリートで近寄れんはずだが、やっぱり人っていろいろあるのね~、天は二物三物与えても必ず一つは奪うのね~などとしみじみ思ってしまう。最初らへんのナオミ・ワッツ扮する秘書(最後までナオミだと気が付かなかった)との最初のデートでいきなりひざまずいてプロポーズし、こっぱみじんに断られるシーンは妙に哀れを誘い、また泣けてしまった。
エリートも屈折してんだな~、エリートって完璧じゃないんだね……そうだ、人って完全無欠じゃなくっていいんだ、弱みがあってもいいんだ……とこの映画はきっと勇気を与えてくれる。んなわけないか。
でも最後は、フーパーが心から分かり合えるパートナーに出会えて本当によかった。床に倒れているディカプリオの腹のたるみ具合が、別の意味でまた涙を誘ったが。