「妻を信じていれば…。」哀しき獣 jirouさんの映画レビュー(感想・評価)
妻を信じていれば…。
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ラストカット、電車から降りてきたのは主人公の妻。韓国での出稼ぎを終えて鞄は金でパンパンだ。もし主人公が妻を信じていれば、その帰りを待っていれば、これほど大変な事件に巻き込まれずに済んだのに…。
ただ、朝鮮族として差別されてきた主人公は、たとえ妻であっても信じ抜くことはできなかった。人を疑わなければ生きていけないからだ。実際、この映画内であらゆる危機に主人公は晒されるが、なんとか生き残れてきたのは人を疑っていたからだ。
ナ ・ホンジン監督は『コクソン』でも疑心をテーマとして扱っていた。人を疑うことで生じてしまう孤独や寂しさを描きたいのだと思う。ゆえに主人公は中国にも韓国にも居場所を見つけることができずに、その中間地点である黄海で息絶える。
追記
バス会社の社長は自身の愛人と教授が浮気していると思い、教授殺害を計画した。そして教授の妻は、夫が浮気していると思い、バス会社社長とは別で殺害計画を立てた。ただ、この映画の中で教授は良い人間として描かれている。主人公の困窮を感じ取り、金を恵んでくれていた。さらに言うと、教授が浮気していたという明確な証拠は出てこない。もし教授が本当は浮気していなかったとすると、疑心から生じた殺害依頼が回りまわって、妻の浮気を疑う主人公の元に届いたということになる。つまり疑う気持ちが無ければ、そもそも事件は起きなかったということだ。
マジかよ…ナホンジン…。そこまで計算していたっていうのかい…? だとしたら凄すぎるぜ。
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