「哀しき長さ。」哀しき獣 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
哀しき長さ。
地元名画座で観た二本中の一本。
先に近年の方を観てしまったので、両方に出演していた
ハ・ジョンウが若返った!?なんて冒頭で思ってしまった。
最近の彼を観たのは「ベルリンファイル」だった。
過去作では「チェイサー」が有名だと思うが、今作はその
ナ・ホンジン監督による二作目。あの時は確かノミだが、
今回は手斧。あ~やっぱり凄惨なんだよね、小道具が…。
エラく長い上映時間(140分)に観る前からゲンナリしたが、
話が面白いので、冒頭は凄惨さより長さより惹き込まれた。
その分後半でダレて長くなり、追跡逆襲がメインになるため、
前半で主人公の巻き込まれ具合を楽しんでおいた方がいい。
しかし借金苦による殺人請負という、まったく楽しくない
理由からの展開になるので、血みどろシーンの覚悟は必要。
今作で一番勉強になるのは韓国系中国人(朝鮮族)への差別。
密入国して生活費を稼ぐしかない彼らへの韓国側の扱いは
かなり冷たい。出稼ぎに行ったまま戻らない妻を追いかけ、
その足跡を辿る主人公と彼に課された依頼殺人の真の目的。
サスペンスでありアクションでありギャング絡みのノワールで
ある今作は、あまりに内容がテンコ盛りすぎ後半で纏まらない。
スカッとする復讐を主人公が成功させるのならまだしも、
元締めがゾンビの如く追いかけてくるのでなかなか終わらない。
なんかこう…こんがらがって長くなっちゃった感アリ。
時間も内容もスッキリ終わらせれば評価が上がるだろう作品。
ラストの余韻が原題(黄海)通り素晴らしいのが、やや勿体ない。
今作でジョンウのファンがきっとまた増えたんだろうなぁ。
(働けど働けど…の世界。なんて不公平な世の中なんだろうねぇ)