「ポスターコピーの通り一縷の光も届かない大傑作」哀しき獣 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
ポスターコピーの通り一縷の光も届かない大傑作
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出稼ぎに出た妻が行方不明になり自暴自棄のタクシー運転手が借金帳消しを条件にある殺人を請け負う。嫁の消息を追いながら標的を狙うチャンスを伺っていた矢先に目の前で標的が殺され、追われる身となった男。警察、男に殺人を依頼した組織、そして殺人を目撃された組織のボスがそれぞれ血眼で男を追う中、男は生きて故郷に帰れないことを覚悟し、妻の消息と事件の真相を求め満身創痍のまま駆け巡る。
登場人物がとにかく濃い。台詞らしい台詞は数える程。男達の狂暴さが男達の佇まいだけで雄弁に語られ、男達が黙々と夜を駆け血を流し眠る様を淡々と冷徹な視点で映し続ける。とにかく流血量がハンパなくて、観ているこっちの血液が吸い取られるかのような錯覚に陥る。意外にも程がある真相と鉛のように重たい結末、そして羽毛のように軽い死がぐちゃぐちゃに掻き混ぜられてドブ川にポイ捨てされるかのような無常感。K-Popのような軽快な音楽を量産する一方でこういうドス黒い闇もシレっと産み落としてみせる韓国では、何十年か前にこの国にあったのに何処かに消えてしまったむせ返る狂気が今でもとぐろを巻いてるのかと思うと背筋が凍ります。コピーの通り一縷の光も届かない大傑作、参りました。
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