「そんな動機のせいで人がいっぱい死んだのね」哀しき獣 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
そんな動機のせいで人がいっぱい死んだのね
ミョンという男に韓国で人を殺せと言われるグナム。その指を持ってくれば借金帳消しだ。狙った相手キム・ヒョンスンと出くわすものの、なんとかやり過ごして、彼の行動パターンを読むグナム。殺人実行のついでに妻ファジムの行方を探し続ける。ようやく居場所を見つけたが、ミョンに連絡すると、明日の船便で帰らなければならないと告げられ、実行に移そうとする。しかし、そこには殺人者の先客がいたのだ。なんとかその先客実行犯=被害者ヒョンスン教授の運転手を階段から突き落として殺したものの、すぐに警察がグナムを追う。
実行犯のボスであるバス会社社長のキム・テウォンは早速グナムを追って殺すよう指示を出す。そして、妻が見つからないまま、ミョンに連絡を取ろうとするグナム。テウォンの一味vsミョンの組織という構図が出来上がった。殺し合い、カーチェイス。派手に車をぶっ壊しながら、グナムはその隙をついて逃げる、逃げる、逃げる・・・
手振れカメラの映像が素人臭さも見せる映画。カーチェイスや乱闘シーンなど、金がかかってる様子なのに、編集が雑なのか、すべての動機や感情線がよくわからないまま進むストーリー。一方、警察は無能ぶりを発揮し、一人の男を追うために何台ものパトカーをぶつけてしまうといった面白さもある。そんな警察でも被害者、加害者の名前を教えてくれないほど個人情報保持にはうるさいのだ。また、グナムの妻は同棲していた男に痴情のもつれにより殺されてしまったようだし、悲しむ暇もないまま火葬してもらい、中国へ帰ることで頭がいっぱい。
二つの組織の対立構図や教授殺害の動機など、終盤になるにつれ疑問だらけで頭がいっぱいになった。テウォンが死ぬ間際に「俺の愛人が教授と寝た」とかつぶやいてたので、ようやく動機がわかった(笑)。ミョンはミョンで大量殺人の鬼となり、ホラー映画の様相を呈す。ここで冒頭の狂犬病が蔓延という意味が出てきた。そして傷だらけになりながらも、一人の船乗りの爺さんを脅して帰国しようとするグナム。しかし、その爺さんに殺されてしまい、ラストシーンでは、実は生きていた妻が帰国するという、あまりにも哀しいすれ違い。