「ホームズの名を借りたアクション作品かと思ったけど、後半の緊迫した推理合戦には」シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ホームズの名を借りたアクション作品かと思ったけど、後半の緊迫した推理合戦には
コナン・ドイルの原作でもホームズの最大の敵として登場する天才的犯罪者モリアーティ教授が、真っ向からホームズに挑む。宿敵の陰謀を阻止するためにヨーロッパ中を駆け巡るホームズとワトソン。アクションもスケールも一段とグレードアップしている。
とにかくむちゃくちゃ展開が速い作品。正直言ってホームズとワトソン、そして敵役のモリアーティ教授が何をやっているのか、どんな状況に置かれているのかつかめないまま、どんどんストーリーは展開されいきます。印象に残るのは、前作に増して仕掛けの大きくなった、大爆破シーンの連発なんですね。これは、ホームズの映画でなく、ホームズの名を借りたアクション作品かと思いました。
ところが後半モリアーティ教授とホームズが直接対決するシーンで、このドンパチやっているシーン、ホームズは逃げ惑いながらも、しっかりモリアーティ教授を経済的に破綻に追い込んでいく仕掛けを着々と打っていたのだと明かされて、なるほどそこは腐っても鯛。これはやっぱりホームズ映画だったんだと思い知らされました。
とにかく大きな塔すら一発で倒してしまう巨砲が、ズトンとうなるシーンは迫力がありました。それと森のなかをホームズたちが敵襲の銃撃から逃走するシーンも、緩急をつけたスローモーションを多用する独特の映像でこれも緊迫感を印象づけていましたね。
それにしても、本作でホームズとワトソンの関係には大きな謎が残ります。前作でも、あの手この手でワトソン君の結婚を阻止しようとしますが失敗。それではと結婚式の前日に新郎を連れ回し、徹底的に酒を飲ませて前後不覚状態にしたあげく、新郎を式に放り込りこむのです。止めは、女装して新婚旅行中のワトソン夫妻が乗車した列車に潜り込んでハネムーンをジャック。台無しにしようとまで図っていたのです。何というホームズの執念でしょうか。余談ですが、本作の見せ場のひとつとなったダウニーの変装を超えた女装シーン。このアイデアはダウニーが出したもの。言いだしっぺとして、本当にやらざるをえなくなってしまったようです。口は災いの元ですね。
ホームズとワトソンの絆は、この映画の命綱ではあります。問題は、ふたりの“ブロマンス”をほのめかす過度な演出にあります。ホームズがワトソンに「幸せ?」って聞いたり、「新婚旅行のことは謝る」って言ったときのワトソンの返し「私も」と述べるなど、もはやブロマンスなんて言葉でごまかすよりも、ゲイの関係にあったと解釈する方が自然ではないでしょうか。だとしたらホームズがワトソンの結婚になぜ嫉妬するのかと言う謎にも、納得できます。
ふたりの息の合ったコンビぶりは、前作終了時から強めてあってきたダウニーとジュードの友情の賜物。「彼とは訓練中のルームメイトのような感じなんだ」と語るダウニーのジュードへの思いは、ホームズのワトソンへの思いと重なるようです。
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加えて小地蔵のお目当ては、ノオミ・ラパス。『ドラゴンタトゥの女』では、キャラクター面でハリウッド版に圧勝している彼女の存在感は、本作でもひけをとりません。主役のふたりに分け入って、今後3本柱のひとりとなっていくでしょう。女流アクションスタートして定着しつつあるノオミ・ラパスの今後の活躍が楽しみです。リドリー・スコット監督ノオミ・ラパス主演の『プロメテウス』も今から期待しています。