「生き続けること。」ものすごくうるさくて、ありえないほど近い ちゃーはんさんの映画レビュー(感想・評価)
生き続けること。
共感する側というのか、観る視点というのか、感情移入する登場人物によって、見た後の感想も、得た感動も変わってくる。
お父さんの視点に立ってみると、どれだけ、息子に愛され、憧れられていた親だったのだろうと、思わずにはいられない。
息子にとって、お父さんがすべてだった。どうにもならない困難をも撃ち壊す力が関係性の中に生まれていた。
息子の視点に立ってみると、どれほど、お父さんから可愛がられ、生きていく力を与えられていたのかと、人生のほぼすべてがお父さんだったということが分かる。
単純な家族愛の物語ではない、息子が真実を探求するだけの物語でもない。
息子は、お父さんとのつながりが、この世界と関わる唯一の方法だった。
それがすべてだった。
絶対に失いたくないものを抱えながら、それを失う恐怖に耐えながら、生きていくのが人生というものであるなら、彼は人生そのものを失ったことになる。
しかし、そうではない、と教えてくれる。
絶対に失いたくないものを失っても、それらは心に生き続け、心の中で大事に大切にしようとすることで、人は強くなっていく。
生き続けることでしか、大切にできないものもある。
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