夢売るふたりのレビュー・感想・評価
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阿部サダヲと松たか子のための映画
結婚詐欺をする夫婦の話。
もっと暗い映画かと思っていたけど、
時々笑えるシーンが挟まっていて、
常にハラハラすることなく観れた。
松たか子の頭の良さ、憎悪が感じ取れるシーンがばかりが強く印象に残っている。
謎が残ったのはラストシーン。
だけど、きっと、「生きろ」というメッセージなのだと思う。
(ほぼ日の監督インタビューを見てそうなのだろうと思った。)
キャラが非常に分かりやすく、生き生きとしていて良かった。
また、料理が美味しそうで食欲をそそられた。
女の弱さと脆さを描いた映画だと思った。
それから、阿部サダヲと松たか子のための映画だと思った。
チト冗長
チト長いとかその割には冗長な描写が少なからずあるとか後半失速するとかこの監督さんの他の作品と共通する欠点はあるが,女性監督ならではの視点など魅力が上回る.主役二人をはじめとする出演陣の演技もすばらしい.
女の強欲
男と女、恋愛、結婚、生活、夢。
生々しい現実と焦がれ追い続ける理想を描いた作品。
女優がキーパーソンになる作品なだけに、松たか子さんというキャスティングがはまっていて、松さんなくしては、この作品は完成していないと確信している。
「虚しく哀しい」けれど、だからこそ、里子の強さが際立つ。
感慨深い作品。
『夢売るふたり』
松たか子、最優秀女優賞の演技は圧巻。
万札を叩きつけるお風呂場の冒頭シーンからラストまで、所帯持ってる男は思わず目を背けちゃうねこれ。
そこに博多弁が刺さる刺さる。
またBGMのギターが何ともイイ。憎い映画だぜ、西川監督さんよ。
他の映画も観たくなりました。
愛おしく恐い女と馬鹿で愛おしい男
序盤から中盤にかけては馬鹿で善良な男が、しっかり者の女に依存して生きているかに見える。それが物語が進むなかで、次第に揺らいでくる。一見、センセーショナルな展開のなかに、主人公ふたりの関係性の機微がとても丁寧に描かれていて、泣き笑いのような複雑な感情に支配されていく快感がある。
終盤のドタバタは少し雑な気もしたけれど、幕切れの鮮やかさにそんなことはどうでもよくなってしまった。
ラストシーンのあの表情を前向きに捉えるか後ろ向きに捉えるかで、物語に対する感想はかなり変わってくるように思う。個人的には希望を見たと思っている。
贅沢な。
せっかく阿部サダヲと松たか子なのに、
暗くて暗くて、重い映画。
宣伝だけを観て面白そうだから
観てみたけど、想像してたのと違って。
脇役もいい人、沢山出てたのにもったいない。
まさかチンピラに伊勢谷友介が出て来るなんて。
あれはあれで似合ってたけど、笑
そして、そんな簡単に世の中お金かしてくれる人いるのかな?
楽してお金稼ごうとして、よっぽど精神的に辛くなって淋しくて。
だったら地道でもこつこつ貯めて行った方が
絶対幸せだったのに。
夫婦になるって怖い。
こういうダメな男はけっこういる
男ばかりではないが、ここに登場した人物は結構いる。
特にリフティングをしている女の子はとても痛くて好きだった。
話は途中からテンションが下がってゆくが、この女の子のはとてもよかった。この子がその間のテンションをつないでくれた。
だから、ぼちぼちの作品。
夫婦の境界線
ターゲットを見つけシナリオを書くのは妻、妻のシナリオ通りに女たちの心の隙間につけ込み金を引き出すのは夫。最初は浮気した夫に対する腹いせ半分。しかし、妻はこの人には自分しかいない、という絶対的な自信があったはず。ところが、妻の不用意な発言から、夫婦の間の信頼が揺らぎだす…。
ストーリーも前提となる設定がまず巧みだし、相変わらず、この監督は仕草や目線といった言葉に頼らない感情表現が巧い。監督の要求に応える役者もいい。特に夫に騙される個性豊かな女たち(夫婦にとって“運命の女”となった鈴木砂羽も含めて)を演じた女優陣が素晴らしい。ただ、妻がマスターベーションするシーンやトイレで生理に気付くシーンは夫が別の女と寝ている状況で、夫婦生活がどうなってるかという遠回しな表現なんだろうが、これはもっと直接的でもよかったかも。
東京の下町の風景が柔らかく見える撮影はとても好みだった。
いいシーン、いい台詞、いい役者のオンパレード。
観終わったあとは、寝付けない映画です。
非常に映画的で、情熱的で、知的な、野心作であることに間違いはありません。
とりあえず、見て欲しい作品であります。
観終わったあとに、ああだこうだといつまでも頭から離れてくれないのは、やはり西川作品です・・・。
育児中なので映画館には行けなかったのですが、夫と一緒に見たかったので(笑)、夫婦で見ました。
(以下、少しネタバレ)
それを踏まえて、傑作になれなかった失敗作であったとも、言い換えられる作品でもあります。
『何が言いたいのか分からない』という感想が見受けられますが、それは、いいシーン、いい台詞、いい役者が多過ぎるに加えて、クライマックス(夫婦間であったり貫也と女たちとのシーンであったり)が幾度も差し込まれるので、どこに焦点を当てて観ればいいのか迷わせるのです。
脚本も監督自身が書かれているので、削れなかったのでしょうね。しかしこのテーマで、ほぼラストが想像つくにも関わらず、二時間以上引っ張るのはムリがあったように思います(『ゆれる』よりも20分弱長い)。
で、この映画では、なんだか色々なメッセージが語られちゃうのですが(それが鼻につくという人もいるでしょう。私も、カラッとブラックだった『蛇イチゴ』が好きだったなあ)、里子がモノローグのようにつぶやく「他人の人生に乗っかってると、卑怯な生き方になるよ」が西川監督の、映画を通じて女性に対するメッセージと受け取りました。
不倫、恋愛、結婚、人と同じように何かに乗っかってかないととやりきれないながらも、そんな中でもがく女性たちへのエール。
ただ、後半、ラストに向けて、夫婦関係の機微(詐欺を続けているうちに、2人の方が詐欺みたいな仮面夫婦になってしまった)という重く興味深いテーマと、↑のメッセージの持つフェミニズムが、里子という1人のキャラクターの中で平行して展開してしまったことで、里子の持つマグマのようなエネルギーが二分化してしまい、それに加えて貫也と女たちの一悶着やら子供までが絡み、ストーリーが破綻してしまったように思います。そしてラストを地に足を着けて働き始めた里子のまなざしに一気に収束させたのは・・・うーーん。それこそ役者に乗っかり過ぎに感じてしまいました。
(ロバートアルトマンなら、点でしかない女たちを線で繋げただろうし、スコセッシなら里子と対になるサブキャラを据えるとか、映画として構築しただろうな・・・別に彼らに倣うことはないんだけど、いいシーンのオンパレードだけでは映画にならないことを残念に思う。西川監督が大好きなだけに)
ちなみに私は、青空を番(つが)いの鳥が飛ぶのを眺めながら妻を想う貫也と、朝まだ人が夢を見ている時間に働き一人で生きることを選んだ里子、に、対照的なものを感じました。
夫婦は元に戻らないと思う。どうです?西川監督。
でっかい?が出ました
面白くありませんでした。
だけれども、見終わってから色々と思考を巡らすと、始めのそれとは違ってきます。
独特な視点の作品を作り続ける西川美和監督。コメディイメージの強い俳優を据えての最新作ということで、期待して鑑賞しました。
夫婦による結婚詐欺を主軸にした映画で、あまり良い印象は受けませんでした。
何しろ、主役二人が犯罪を犯す側ですから、どうあっても倫理的に誉められるわけがありません。
しかし、その行為はさておき、この映画の面白さは、どうやらその心内にあるようです。
物語が進むにつれ、登場人物の思惑が垣間見れるのですが、それは善意なのか悪意なのか?
愛情なのか憎悪なのか?
利己なのか利他なのか?
場面一つ一つにその両方が込められており、見る側としては混乱してしまいます。初見で面白くないと感じた理由もこの為です。
「人間は単純ではない。色々な面を持ち合わせている」と言われてしまえばそれまでですが、物語を提供するという意味で言えば、そのやり方は、どんな展開もアリになってしまうのでは…。
見ている私自身が、良心の呵責に耐えきれなくなりそうで、見終わった後は愕然としました。
しかし、時間を開けて熟考すると、初見とは違う側面も見えて来ました。「むしろ、単純なのにどちらにも転びきれない不安定な存在、それが人間」なのかと。
そして、物語後半に風俗嬢のくだりがあります。それがキーポイントに思えてきました。
もしそうだとしたら、相当意地悪な仕掛けです。(誉め言葉
私の思い込み過ぎでしょうか?
本意はどうなのかと、考えれば考えるほど混乱します。
でも、心に残る作品なのだから、やっぱり凄い映画です。
俳優の演技も素晴らしかったです。
阿部サダヲは、コメディ色を消して危うい夫を。
松たか子は、言葉少ない虚ろな妻を。
そして、脇を固める俳優陣の有り体は見事の一言です。
考えて考えて、唸りたい方にオススメです。
高麗屋の、お譲さんは、やはり、ただ者ではありませんでした。
松たか子さんと寺島しのぶさんは、どうしても比べられますが、たまたま、出演する作品が違うだけで、高麗屋さんのお譲さんとと音羽屋さんのお嬢さんとの実力の違いはないと感じました。
もう、公開して2か月くらいたっていると思いますが、有楽町の映画館は満席でした。
まず、脚本が秀逸。それこそ、冒頭の火事さえなければ、仲の良い夫婦が切り盛りして繁盛する小料理屋の話で終わるのでしょうが、極限まで追い詰めれた時には、奥さん(松たか子)=女性のほうが肝が据わるという、よく、有りがちな話ですが、それだけでは終わりません。
そこは、阿部サダヲ、松たか子の役者上手な登場人物。
一筋縄では行きません。最後まで、一気に、観ました。
「小さな幸せ」を守ることが、どれだけ、他人に迷惑を掛けて、涙を流し、血を流すかという、人間の業を見せつけられた作品でした。
高麗屋さん(松たか子)は、『告白』から、完全に、音羽屋さん(寺島しのぶ)に並んだと思います。
本作の続編は、ないでしょうが、北陸の港町で、つつましく、暮らしていく二人の将来を予想しながら、劇場を出ました。
今年の邦画の「当たり」のひとつです。
劇場迄行ったかいが有りました
欠点も穴もいっぱい。でも最高級のエンターテインメントです。吉川美和監督は凄い。ちっさい可憐な女の子みたいな監督がこんな人間の本性をえぐる深い闇を表現して行きます。好きな役者さんばかり‼吉川美和監督は伊丹十三監督を彷彿させますね。ひとつだけ注文を付けます。出だしからBGMにイライラ‼趣味悪く有りません?邪魔で邪魔でーーでも監督を信じてるから次回作楽しみです。
マスターベーション
この映画を一言で言えばマスターベーションかな。独りよがりと言うこと。
西川美和さんの脚本に大きな期待を持っていました。確かに惹かれる台詞もいくつかありましたが、言葉だけが一人歩きしているような印象を受けました。松さんが劇中で一人寂しく擦っているシーンにも象徴されるように、この映画はいろんな人の自己満足の映画と言えるのではないでしょうか。
固い。小説みたいな映画。
素晴らしい雨のシーンと実景の数々、そして『ディアドクター』にも増して、演出は堂々たる感じだったけど、なんでだろう、いっこうにエンジンがかからない。かからないのは脚本なんだろうと。
前の偽医者に続いての結婚詐欺の話、よっぽど西川監督は軽犯罪に潜む人間性が好きなんだろうな。で、今回は夫婦がテーマ。最初はうまくいって、ほころびがでて追い込まれていくのはこの手のパターンだけれど、まず軽犯罪映画につきものの軽妙さがない。冒頭に夫婦が出会うであろう割りと寂しい人々が並行して描き出されるが、騙されるのがそんな寂しい人たちばかりなので生き生きしてこない。この辺は『ディアドクター』と違う。また、美しい実景に差し挟まれてどんどん重くなっていく。いっそもっと嫁さんをモンスターにしてしまえばと思わなくもないが、いかんせん松たか子、かわいい。特にMな人にはまだまだいじめとしても甘いくらいだろう。夫婦の縛って縛られての関係は宗教か魔法のようなものだけど、でもやっぱりどこか快楽のようなもので回ってなければいけないような気がするが、エモーションと快楽がない。
この素材とこのキャラクターたち、小説だと生きるのだと思うけど、映画としてはまったく生きないな、と思った。
主演ふたりはよかったが、配役が地味に豪華で、鶴瓶ほかチョコっと豪華なキャストは効果的でないように思った。別の意味で、芝居はできなくとももっとカラッとしたキャラクターがいてくれたらと思った。
ブラックな夫婦善哉
結婚詐欺という主題の裏で人の心の微妙な移ろい、変化を描いている良作。
松たか子演じる妻里子の葛藤がよいです。
この里子は本音をうまくぶつけられない性格。
常に良妻を演じていて当たり障りなくどんな人にも感じよく接していくことができるタイプ。
対する夫の貫也は不器用だけど自分の内面をさらけ出して人とつきあうタイプ。
これって人に気に入られないことも多いけど相手の心の深いところを掴むことができるってこと。
里子がこの夫の特性を利用しようと考えたのは最初は浮気の腹いせだったかもしれないけどだんだん手管が巧妙になっていって騙すことに慣れてしまっていく。
そして貫也も様々な女性に接するうちに、自分の力に自信を持ったことと妻の冷徹な面に軽蔑の念を持つようになったことで夫婦の力関係、バランスが逆転していく。
すごいと思うのはどんなふうに二人の関係が変化しても夫婦の絆は決して切れないってところ。
里子は自分の汚い部分を貫也に見せたくないって思ってたんだろな。
自分を抑えてる里子がかっとなって本性を見せる部分、松さんの迫力がすごくよかったです。
しかし全体的に地味にまとまりすぎてるのが残念。も少し緩急つけて盛り上げてもよかった気が。
表情やしぐさで表現してるとこ多くてわかりづらいのだけど個人的にはこういう考えさせたり想像させるつくりの作品は好きです。
良くも悪くも二人三脚
女性監督が描く女性の怖さを、松たか子が実にうまく演じていて、男としては身のすくむ思いで観ていた。
風呂場でのシーン、あんな責めは今まで観たことないけれど、実際にあるのかもなんて気がした。あったらコワイとも…
この映画に出てくる人たちはみんな憎めない。結婚詐欺は勿論犯罪だが、夫への仕返しからどんどんエスカレートして、2人とも罪の意識が薄くなっていく中で、夫の貫也(阿部サダヲ)はふと我に返ったように良心に苛まれたりするのだが、妻の強さに負けて結婚詐欺を繰り返していく。
そしてストーリーはラストへ向かう。
因果応報か。里子(松たか子)の腕から夢が逃げて行ってしまうシーンは印象的だ。
本作の役者さんは皆ホントに上手いですね。主役の二人は勿論実力派だけど、あのウェイトリフティングの女性が実に良かった。本当の選手にしては演技が上手いなぁと思って観ていたけど、後で調べたら彼女は役者さんで、演技でウェイトリフティングの訓練をしていたら、本当に上手くなって大会で準優勝したとか。スゴイよね。
本作は女性の怖さ、強さ、愛の深さを見ることが出来ます。それに比べたら男はなんと弱く無力なのだろうか。(トホホである)
あの夫婦はその後いったいどうなったのだろうか…
夢見たふたり
火事で焼き出された夫婦の顛末を語った作品。
妻の里子は現実的で、とりあえず何でもいいから食べて行こうとする。だが夫の貫也は仕事をより好みし旧友には店が失くなったことも言えず、見栄だけが先行する。
ひょんなことから夫の意外な才能を見つけた里子が貫也を煽って結婚詐欺をはたらきはじめる。
騙された女たちが料亭のカウンターに並ぶシーンがある。
皆、一様に貫也を恨んだりはしていない。むしろ“いい夢”を見させてもらったとあっけらかんとしたものだ。殺伐とした世の中、人生にはお金で買えないものがあると言わんばかりに、見ず知らずの女たちが一人の男を巡って話に花が咲く。
ただし、たった一人の女を除いては・・・だ。この女が後半の話の行方を左右する。
西川美和監督は相変わらず着眼点が面白い。いっときの伊丹十三のようだ。
ひとつひとつのシーンが、取材や資料に裏付けされたようにきっちり描き込まれる。例えば料亭の火災のシーンにしてもツッコミどころがないわけではないが、それを許さないだけの説得力をもつ。
ドラマに挿入されるさりげないカットも、日常の観察眼の鋭さを窺わせる。タイトルバックでのトレーニング中の女性の肩から汗が湯気となって立ち昇るカット。あるいは貫也がアパートの一室でボーっとしている時の廃品回収車から流れる音などだ。
だが、今作はあまりに役者を揃えすぎたせいか、話がだらだらと間延びして西川監督本来のキレのよさが影を潜めてしまった。
西川組ができるのも結構だが、観ていて何が起こるか分からないフレッシュ感は失わないでほしい。
今回は松たか子の演技に助けられた恰好だ。
店を持ちたいという夫の夢を叶えるため、資金調達のためと夫の情事に目を瞑る妻。
にも関わらず立地条件や内装に夢をつのらせエスカレートしていく夫。悶々とする想いを抱きながら、ひたすら夫の帰りを待つ妻。
さらには標的であるはずの女に情を示す夫についにキレる妻を松たか子が鋭く演じる。
ラスト、里子の哀れみと怒りがない交ぜになった目が語る。
「あんたが夢を見たから我慢してきたのに、なにやってんだか」と。
里子が見てきた夢は、夫が夢を叶えることだった。
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