夢売るふたりのレビュー・感想・評価
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悪夢と成長。
タイトルは夢売る~なんだけど、とても夢見られるような
内容じゃないし^^; これかなりの悪夢になりそうな感じ。
でも自営業を営んでるご夫婦なら、こんな苦労はおそらく、
(今のご時世)とうに越えてきましたよ、って感じですかね。
相変らず残酷な描写が巧い監督だな~と思うんだけど、
今回は夫婦を主役に持ってきて、初めて?女性の視点で
物語が描かれている。
よくこういう夫婦って見かける(存在する)と思うんだけど、
どれだけ寄り添っていようが、夫婦って他人なんだよね。
同じ夢を追っているようで、おそらくそれに対する価値観は
違っているし、お互いの想いとかけ離れているのは当然。
他人同士が肩寄せ合って、相手の欠点や弱点を補いながら、
こんなはずじゃなかったのにさ^^;でもまぁ、仕方ないよね。
なんて思いながら(騙し騙し)恋愛今昔を体感する結婚生活。
最大の局面は今回のように「危機」が訪れたことで、それを
どう受け止め対処するかの方向性がお互いにズレてたこと。
相手の「底」が見えてしまったにも拘らず、それでも諦めない
(この人はずっとこうしてきたんだろう)妻が、一世一代の
詐欺芝居(というより復讐)を夫に仕掛けたことが発端。
店が焼失したことで心身消失してしまったかのような夫が、
些細なあやまちで知り合いと一夜を共にしたことが許せない。
いや、許せないですよ。分かりますけどね、その気持ちは。
(でも本当に許せないのは自分自身の愛憎ね)
あまりに夫を愛する(やや偏執的な)妻は、その報いをどう夫に
受けさせようか、夫に見下され利用されている立場の自分を
高見に立たせ、双方を利用する立場に立ってしまったのだ…。
この妻、決して頭が悪いとは思えないんだけど、
計画的なように見えて感情で動いている(女性特有の)弱さが
絶対あとで命取りになるだろうなーと思ったら、案の定だった。
様々な女を騙したあと、まだ足りないと呟く妻に夫が言う一言。
これがまた大図星で衝撃的。
どれだけ騙してお金を巻き上げても、新しい店が持てようとも、
目的を見失ってしまった夫婦にはもう嬉しそうな顔は見えない。
それよりも日々の充実感を(他人を見ながら)求めてしまう。
入り浸った母子家庭に家族愛を感じ始めた夫に、妻は恐怖を覚え
ついには刃物まで握ってしまうのだが…。
見ていて悲しいのは、どうしてそれだけ愛している相手にまで
自分の気持ちに嘘をついてしまうのかというところだ。
妻は思ったはずだ。騙される女たちがなぜあんなに自ら進んで
夫にお金を差し出し、それも満面満足でいられるんだろうかと。
(違うのも一人いたけど^^;)
それは自分が夫にやってきたのと同じこと、でも夫はその女たち
よりも妻と「夢」を選んで帰ってくる。だからまだ大丈夫。騙せる。
こんな疲れる賭けに身を投じるのならいっそ、夫に
思いの丈をぶちまけてしまえばよかったのに。もっと早い段階で。
「アンタ、誰のおかげでここまで…!」って、言えるわけないか。
この妻はどれだけ夫に尽くし通してきたんだろうと思う。
借金に借金を抱え、店を持つために子供も作れず、やっとの
思いで夫婦の夢を叶えたと思ったら、あの火災だ。結婚してから
一日でも安息日があったんだろうかとさえ思える。
あるいは、こうなったら「意地でも」離れられなかったんだろうか。
自分も女だから分かる部分は多々あるが(しかもイヤな方向性で)
全くもって割り切れないのがこの時のこういう気持ちなんである。。
西川監督、ホントいい味出してるわ。
先日ある番組で嬉々として映画を語る監督に共感を覚えたばかり。
よっぽど映画が好きなんだろうな、が見えるお人柄^^;だった。
おそらく今回の松たか子への仕打ち(爆)あのリアルな下ネタ場面も、
監督が面白がってやらせたんだろうな~が、どうしても垣間見える。
で、観客は衝撃受けてるワケだからまずまずなんじゃないかと^^;
「ゆれる」では香川照之に脚上で万全の洗濯物たたみをやらせ、
「ディア・ドクター」ではカナブンを何十匹と取り揃えて撮影に挑む、
いや~松さん、あのシーン何回撮ったの?と聞きたくなる出来映え。
これだけ楽しんで映画製作する監督に対して、
いやです。できません。なんて言うわけないよね~あの二人ならば。
阿部サダヲの濡れ場も(初めて観たけど)けっこう頑張っていたしね。
観る方も演ずる方も、どっぷりと西川美和の世界に浸かっているのだ。
考えさせられる箇所は非常に多い作品だが、テーマはシンプル。
今は最悪、今後は最強のふたり(おフランスに負けず)になるでしょう。
(騙される女たちがこれまた秀逸。紀代とひとみには頭が下がるねぇ)
愛おしい作品☆
遅ればせながらやっと見ることが出来ました。^^;
一通り見て、ウチ帰って咀嚼して、やっと分かった部分がありました。
それは、どこに救いがあるのかなあ、、といういこうこと。
登場人物は、思えば皆、善人だらけです。 詐欺をする側の里子も貫也もある意味底抜けに善人。 だって詐欺でお金集めたあと、お店が成功したら倍返ししようねと、借用証書に感謝で手を合わせてるし、何といっても罪の意識がないですからね。。 それにちゃんと夢、売っています!
もちろん、どう考えても早晩捕まるに決まっている行為を繰り返しているあたり、いわゆる〝頭隠して尻隠さず″状態。 悪人、というより、相当愚かな人物たちでしょう。
愚か、ということで言えば、この映画に出てくる人々は、ほぼ例外なく皆愚か。 それは終盤に出てくる探偵さんや子供、さらにお父さんまで愚かです。
視聴者は、この救いがたい人々に対して〝俺はこんなことしないよ。″〝私はこんなバカじゃないわ。″とまずは拒絶反応を起こすでしょう。 しかし、必ずどこかで〝自分でもしているような愚かな行為″が散りばめられていて、視聴者は鏡を見せつけられるような心境になってきます。 おそらくそこが監督の狙い目。
飲んだくれて平気で人前で吐いてしまったり、オナニーしたり、暴力振るったり、お人好し過ぎて簡単に騙されてしまったり、自分の理想と真逆なことをして自己撞着起こしたりと・・・。
たぶん、みな、どこかで同じようなことやっています。
相手を想っていても、その相手が複数人いたらややこしいことになる。
人生、そんな単純なものじゃないし、良かれと思ってした行動が空振りどころか他人を傷付けてしまう結果を招くことだって往々にしてある・・。
そんな不可思議な宇宙に放り込まれた私達に一体救いはあるのだろうか?
そう考えると、やっぱり結論は一つしかありません。
それは、己の愚かさに気づくこと。
己の愚かさをいったん認めてあげること。
そこからしか次の人生、なかなか見えて来ません。
自分は愚かじゃないよ、と思いたいけど、つっぱりたいけど、愚かな自分に冷静になる方がちょっと楽になれるし、人に優しくなれるし、次に進める気がします。
さらに自分の愚かさにちゃんと思い至れば、この映画の登場人物全てが愛おしく感じられるし、映画館出たあとの全ての人々にも優しい眼差しを向けることが出来ます。
(相手の〝愚か″をなじってばかりだとストレスたまるでしょ?)
でも、後半になって貫也が里子に楯突くように発言する場面が二回ほどあります。私にはそこが最も重要なポイントに感じられました。
そこで初めてお互い正面から向き合ったのかもしれません。
里子は、自分の心をちゃんと見てくれる貫也に、内心喜びを感じたのだと思います。 喧嘩のようにしてやり合う言葉の応酬に、実は本音とともに真実の思いやりがあったように感じましたね。
あと、男同士で「お前にこいつを幸せにしてやれんのか?」と言われる風俗嬢は「誰に評価されなくても、自分で落とし前つけれる今の状態が一番幸せ。」と発言し、視聴者はハッとします。 暴力を振るわれ、お金を巻き上げられる可哀想な女はサイテーの人間だと、どこかで見下してしまっている〝自分″に気づくからです。 そして実は最もまっとうな考え方をしているんですよね・・。
この映画はですからとっても逆説的ながら、非常に温かみのある映画であり、表面的にはひねくれてはいても、実は監督さん最大限の〝人間賛歌″なのだということが了解出来ました。
うん、西川美和さん、すごくあったかいよ。。^^
松たか子さんの目!
阿部サダヲさんもそうですが、
松さんの目を見てるだけでもその時の心情、悲しさ、哀れさなどが
読み取れる「目」だったと思います。
旦那(阿部さん)に風呂場で問い詰めるシーンも
あえて口に出さないからかえって怖いですね。
その後から結婚詐欺の話に進んでいくのですが。
ギターの音色をBGMにところどころちりばめて、
火事でお店を焼かれるシーンから始まって
悲しさを増幅していまいした。
最後も松さんの「目」で終わってしまって
あいまいに(想像にお任せしますパターンで)終わってしまいましたが
やはり二人の好演が光っていたと思います。
ダブル主演みたいな感じですね。
固い。小説みたいな映画。
素晴らしい雨のシーンと実景の数々、そして『ディアドクター』にも増して、演出は堂々たる感じだったけど、なんでだろう、いっこうにエンジンがかからない。かからないのは脚本なんだろうと。
前の偽医者に続いての結婚詐欺の話、よっぽど西川監督は軽犯罪に潜む人間性が好きなんだろうな。で、今回は夫婦がテーマ。最初はうまくいって、ほころびがでて追い込まれていくのはこの手のパターンだけれど、まず軽犯罪映画につきものの軽妙さがない。冒頭に夫婦が出会うであろう割りと寂しい人々が並行して描き出されるが、騙されるのがそんな寂しい人たちばかりなので生き生きしてこない。この辺は『ディアドクター』と違う。また、美しい実景に差し挟まれてどんどん重くなっていく。いっそもっと嫁さんをモンスターにしてしまえばと思わなくもないが、いかんせん松たか子、かわいい。特にMな人にはまだまだいじめとしても甘いくらいだろう。夫婦の縛って縛られての関係は宗教か魔法のようなものだけど、でもやっぱりどこか快楽のようなもので回ってなければいけないような気がするが、エモーションと快楽がない。
この素材とこのキャラクターたち、小説だと生きるのだと思うけど、映画としてはまったく生きないな、と思った。
主演ふたりはよかったが、配役が地味に豪華で、鶴瓶ほかチョコっと豪華なキャストは効果的でないように思った。別の意味で、芝居はできなくとももっとカラッとしたキャラクターがいてくれたらと思った。
ブラックな夫婦善哉
結婚詐欺という主題の裏で人の心の微妙な移ろい、変化を描いている良作。
松たか子演じる妻里子の葛藤がよいです。
この里子は本音をうまくぶつけられない性格。
常に良妻を演じていて当たり障りなくどんな人にも感じよく接していくことができるタイプ。
対する夫の貫也は不器用だけど自分の内面をさらけ出して人とつきあうタイプ。
これって人に気に入られないことも多いけど相手の心の深いところを掴むことができるってこと。
里子がこの夫の特性を利用しようと考えたのは最初は浮気の腹いせだったかもしれないけどだんだん手管が巧妙になっていって騙すことに慣れてしまっていく。
そして貫也も様々な女性に接するうちに、自分の力に自信を持ったことと妻の冷徹な面に軽蔑の念を持つようになったことで夫婦の力関係、バランスが逆転していく。
すごいと思うのはどんなふうに二人の関係が変化しても夫婦の絆は決して切れないってところ。
里子は自分の汚い部分を貫也に見せたくないって思ってたんだろな。
自分を抑えてる里子がかっとなって本性を見せる部分、松さんの迫力がすごくよかったです。
しかし全体的に地味にまとまりすぎてるのが残念。も少し緩急つけて盛り上げてもよかった気が。
表情やしぐさで表現してるとこ多くてわかりづらいのだけど個人的にはこういう考えさせたり想像させるつくりの作品は好きです。
良くも悪くも二人三脚
女性監督が描く女性の怖さを、松たか子が実にうまく演じていて、男としては身のすくむ思いで観ていた。
風呂場でのシーン、あんな責めは今まで観たことないけれど、実際にあるのかもなんて気がした。あったらコワイとも…
この映画に出てくる人たちはみんな憎めない。結婚詐欺は勿論犯罪だが、夫への仕返しからどんどんエスカレートして、2人とも罪の意識が薄くなっていく中で、夫の貫也(阿部サダヲ)はふと我に返ったように良心に苛まれたりするのだが、妻の強さに負けて結婚詐欺を繰り返していく。
そしてストーリーはラストへ向かう。
因果応報か。里子(松たか子)の腕から夢が逃げて行ってしまうシーンは印象的だ。
本作の役者さんは皆ホントに上手いですね。主役の二人は勿論実力派だけど、あのウェイトリフティングの女性が実に良かった。本当の選手にしては演技が上手いなぁと思って観ていたけど、後で調べたら彼女は役者さんで、演技でウェイトリフティングの訓練をしていたら、本当に上手くなって大会で準優勝したとか。スゴイよね。
本作は女性の怖さ、強さ、愛の深さを見ることが出来ます。それに比べたら男はなんと弱く無力なのだろうか。(トホホである)
あの夫婦はその後いったいどうなったのだろうか…
夢見たふたり
火事で焼き出された夫婦の顛末を語った作品。
妻の里子は現実的で、とりあえず何でもいいから食べて行こうとする。だが夫の貫也は仕事をより好みし旧友には店が失くなったことも言えず、見栄だけが先行する。
ひょんなことから夫の意外な才能を見つけた里子が貫也を煽って結婚詐欺をはたらきはじめる。
騙された女たちが料亭のカウンターに並ぶシーンがある。
皆、一様に貫也を恨んだりはしていない。むしろ“いい夢”を見させてもらったとあっけらかんとしたものだ。殺伐とした世の中、人生にはお金で買えないものがあると言わんばかりに、見ず知らずの女たちが一人の男を巡って話に花が咲く。
ただし、たった一人の女を除いては・・・だ。この女が後半の話の行方を左右する。
西川美和監督は相変わらず着眼点が面白い。いっときの伊丹十三のようだ。
ひとつひとつのシーンが、取材や資料に裏付けされたようにきっちり描き込まれる。例えば料亭の火災のシーンにしてもツッコミどころがないわけではないが、それを許さないだけの説得力をもつ。
ドラマに挿入されるさりげないカットも、日常の観察眼の鋭さを窺わせる。タイトルバックでのトレーニング中の女性の肩から汗が湯気となって立ち昇るカット。あるいは貫也がアパートの一室でボーっとしている時の廃品回収車から流れる音などだ。
だが、今作はあまりに役者を揃えすぎたせいか、話がだらだらと間延びして西川監督本来のキレのよさが影を潜めてしまった。
西川組ができるのも結構だが、観ていて何が起こるか分からないフレッシュ感は失わないでほしい。
今回は松たか子の演技に助けられた恰好だ。
店を持ちたいという夫の夢を叶えるため、資金調達のためと夫の情事に目を瞑る妻。
にも関わらず立地条件や内装に夢をつのらせエスカレートしていく夫。悶々とする想いを抱きながら、ひたすら夫の帰りを待つ妻。
さらには標的であるはずの女に情を示す夫についにキレる妻を松たか子が鋭く演じる。
ラスト、里子の哀れみと怒りがない交ぜになった目が語る。
「あんたが夢を見たから我慢してきたのに、なにやってんだか」と。
里子が見てきた夢は、夫が夢を叶えることだった。
嫁Haaaan?
繁盛している小料理屋。ほぼ満席。夫婦二人できりもりしている。とても二人ではまかないきれないと思う。マスター@だんだんさんでもムリだろう。ヤキトリの火がおしながきに引火。消火しようとして油ナベをひっくり返してまさに火に油を注ぎ店は全焼。それが物語のはじまり。ふとした夫の浮気。妻は怒り心頭。でも、簡単に金が手に入ると分かり、夢や希望のない女(ひと)へ小さな夢を与えて金を頂戴する詐欺稼業へ。夫はせっせとまじめに女をだまし続けるが、徐々に疲弊する。そして、これは浮気に対する妻の腹いせと理解する。腹いせよりも復讐に近いかもしれない。妻のオナニーは?夫婦のセックスは?サギる相手に奉仕するため夫婦のは控えたのか?妻は子どもができない体なのか?夫は子どもが欲しくて子持ち女にはしったのか?夫の父親との会話はなんだったのか?分からないことが多い。観客に親切すぎるより考えさせる方がいいと思うが、今作は分からなすぎ。監督の今までの作品は分からないながらもなんとなく分かったような気にしてくれたが、今作は最後まで分からなかった。でも、監督はいまや数少ないオリジナルシナリオ作家だから、これからもオリジナルにこだわって勝負してほしい。
上手くいかないね人生は
夢を追いかけていた夫婦が、焼け焦げになってしまった夢のために、他人に夢を売る事になりました。
結婚詐欺を重ねる夫は、優しく明るく思いやりもすべて、寂しい女性達に与え、いつしか夢売る詐欺師となりました。
松たか子は、持ち前の演技力で明るい妻を演じています。貞淑な妻が、いつしか夫以上に結婚詐欺に積極的に関わり、女達から金を巻き上げ、次々にターゲットを見つけ出すのです。
夫は妻に言われるままに、女性達に夢を売って行きます。知らずの間に、自分の夢が何だったのかも分からなくなっても。
夫に裏切られた妻の復讐劇にしては、あまりにも演技不足、演技力の不足ではありません。西川美和監督が松たか子に遠慮したのかも知れませんが、貞淑な妻の変身にしては、あまりにも希薄。
役が足りません。
騙された女性達は、まるで友達との噂話しのように詐欺師のことを話題にします。夢売るふたり、いつの間にか違った夢を追いかけた夫婦は、手のひらからこぼれ落ちた夢を拾い戻すことはありませんでした。
うまくいかないもんですね。人生は!
良質な小説のよう…
色んな意味で(?!)、良質な中篇小説を読んだような印象が残った。映像よりも、心にぐさりとくる強烈な台詞が次々とでてくるし…。
もちろん、『風の中の牝鷄』のような階段落ちのシーンとか、『ヒア アフター』のマット・デイモンみたいにフォークリフトを運転する場面とか、過去の映画の記憶を思い出させてくれるところもぽつぽつあって、その時は映画らしさを感じるのだが。
見応えどっぷり。
コワくて可笑しい悲喜こもごも祭り。
孤独の切なさと、挫けないタフに溢れ、
修羅場の人生を生きて強くなる人間への応援讃歌。
奥深~いヒューマンドラマを堪能。
激しい感情をこめた内面の発露、
息を呑む松たか子の表情変化の数々がスゴい!
いい映画でした
結婚詐欺の映画なんて非常に安っぽいものになるのではないかと恐る恐る見に行ったら、とても繊細に表現された世界で人々が生きている人が描かれていた。阿部定男さんが大変な熱演だった。男女の複雑な思いが含みたっぷりに描かれていて厚みのある映画だった。
雇われ店長とはいえ、夫婦で居酒屋を切り盛りしているならそこで頑張ればいいではないかと思わずにはいられなかった。しかし、それでは満足できない人間としての業も感じさせる映画だった。
もっと落とし所が無かったのか?
映画を通してこの二人の夫婦の肉体の結びつきが無いが脚本家のどうだこんなことも表現して凄いだろうというようなシーンはどれも心を打たない。
夫婦なのだから主演女優と夫役の濡れ場が必然なのに描き手が主演女優に遠慮したのだろうと思わせる部分があり。描き切れない夫婦間。その後、どんなに嫉妬しようが所詮綺麗事だけでは説得力を持たない。
夢売るふたりだが・・
つまらない夫婦。
着眼点が良い、煽りが良いだけにもっと落とし所が無かったのか。考えてしまう。予告編以上でも以下でもない。生ぬるい作品。
プラスな気持ちにはならない。
CMでラストが気になったので観てみた。
内容はCMのまま、営んでた店が燃えて、
新しく店を出す資金を結婚詐欺で捻出する。
全体的にブラックで見ていて楽しくはない。
この映画を観て何を感じれば良いのかわからない。
夫婦の壊れていく感じ、落ちていく感じ、
騙される女性を観て、プラスな気持ちにはならない。
終わりは無難な着地で旦那が捕まって終了。
特に気持ちが救済されることはない。
予想外に良かった
結婚詐欺の映画なんてなんか湿っぽくてどうかなぁ…と思いながらも西川美和さんと阿部サダヲさんに魅かれて観に行きました。
前半、結構笑えます。
阿部サダヲが電話で女の人に別れ話を告げる横で松たか子がせっせとセリフを書いて渡しているシーンがあったり、お金も後々返すつもりでいる二人には罪の意識がないまま犯罪が繰り返されます。
しかし、中盤から後半は、だます女の人の層も変わり、一気にシリアスな展開に変わっていきます。かかあ天下だった松たか子と阿部サダヲの関係にも大きな変化が生じます。
また、後半の展開から、あぁきっとこの夫婦は本当は子供も欲しかったんじゃないのかな…とか思わされます。でも、もう戻れない。取り返しがつかないところまできてしまっている。
欲を言えば、結婚詐欺をする前の夫婦生活を1カット描いてほしかった。たとえば、「子供がほしい」と甘える阿部サダヲに「今はまだ人を雇う余裕はなかと。あと1年はこのままでいこ」と避妊具を見せて諭す松たか子。
夢みがちな男に現実的な女。
私の好きなシーンは新しい店の設計図を胸に抱えて全速力で走る松たか子の腕からバラバラと設計図がこぼれおちてゆき、最後には1枚も残らないシーン。とてもせつないです。
松たか子さんは、大女優さんでありながら本当にすごい、こんなシーンも必要ならやってのけるんだ、と驚かされるシーンもいくつかあります。
阿部サダヲさんも結婚詐欺師でありながら、女の人と関わっていく中で交わす言葉に嘘が感じられない。さながら光源氏。
何より、主演が松たか子さんと阿部サダヲさんだから、こんなエグイことをテーマにしていても、後味が悪くないんだろうなと思いました。
監督も脚本も俳優陣も本当にすごい映画です。だまされたと思って観て下さい!
夢を売り、金を取り、愛を失う
慎ましく小料理屋を営む夫婦が居た。
突然、不注意から店が火事になり、全てを失う。
再建の為、妻は働くが、職に就けない夫は重荷に感じる。
偶然知り合いの女性と会い、抱く。その女から大金を貰う。
その事を知った妻は夫に詰め寄るが、ある考えが浮かぶ。
妻がターゲットを選び、夫が口説く。
ターゲットは輝きを失った女たち。結婚という夢を売る。
女たちは次々と落ち、懐に大金が転がり込む。
再建の為、夫は抱き、妻は苦悶する。
再建のメドが立ち始めた夢間近、二人の間は軋み始める…。
冒頭の二人には夢も愛もあった。
が、結婚という夢を売り始めてから、愛は何処に?
結婚を売る夢は妻の腹いせでしかなく、夫は罪悪感を感じ安らぎを求めるようになる。
擦れ違うモヤモヤとした心と心。
道を踏み違え、ズルズルと続く悪循環。
人生の危うさと繊細さを見事にすくい上げる西川美和監督の手腕は、現代屈指。
それを完璧に体現した松たか子と阿部サダヲも賞賛モノ。
騙される女たちも十人十色。それぞれの背景とドラマがある。
中でも江原由夏演じるウェイトリフティング選手と安藤玉恵演じる風俗嬢が出色。
夢を売り、金を取り、愛を失う。
それでもラストシーンには愛が失われていない事を信じ、希望を感じた。
女たちの見せたくない内面を同情も抱擁もしない。冷静な視点がいいところ
本作のポイントは、「普通の女性にあるえたいの知れなさ」を描きだしたところにあると思います。西川監督は松たか子の起用にあたり、「主演作の『告白』で演じた女性教師も、怖い面があったけど、もう少し生活感のある、泥臭い感情を松さんが演じるとどうなるんだろう。様々な役を演じてきているのに、まだ未知数の部分があるんじゃないかと思った」と語っています。(読売新聞2012年9月7日夕刊インタビュー記事より)
同性である西川監督ですら、女性の個性を書くのは「非常に難しい」ともらしていました。「類型的でない新しい女性を書きたいと思っても、『へっ?』って言われるので、既にある型に合わせないといけない」。だから、「今まで作られてきたヒロイン像の呪縛から逃れること」が大きな挑戦だったというのです。
その得たいの知れなさは充分に発揮されて、夫をコントロールして、平然と結婚詐欺を重ねていく、モンスターぶりを遺憾なく松たか子が表現してくれて、監督の狙い通りのこれまでに描かれたことがないヒロインが登場します。
しかし、後半からラストにかけての物語のオチの付け方には、前作の『ディア・ドクターのようなキレの良さを感じませんでした。人間の持つ不可解さを追求する余りに、不可解すぎるシーンが多く、主人公の本音をわざと見えにくくしているのです。さらに輪をかけて、登場人物の心象を語り終えずに、ばっさりカットして強引に場面展開するところや、逆に意味もなく無言のアップがあるなど、見ていてこれはどういう意味だろうという場面が数多く映し出されました。
さらに、登場する騙された女たちのその後の顛末も、掘り下げられていません。消化不良気味になったのは、少々エピソードを詰め込みすぎたのではないかと思います。今回も徹底したリサーチを基にしたというから、落とすには忍びなかったでは?217分の長めの尺と相まって、ラストの詰めに悩んだのではないかと推察しました。
もとより前作でも騙す側にもそれなりの事情を盛り込んで、騙す側にも三分の理 を説くことで問題提起してきたのが西川監督の手法であったはずです。
今回のテーマが、『夢売る』ことであれば、もっと騙す方に義を持たせてやり、騙された側がそれでも満足していたという前作同様の結論に導くべきでは?
ラスト近くに普通に弁護士が登場して、依頼人が騙した側を責め立てるようになってしまうのは、幕引きとしては余りに普通になってしまいました。
だから終わり方も、ごく普通の終わり方に幕切れしたことが残念です。
元々は是枝監督の発案だった本作。ゴンチチ風のサントラや、場面と場面の間の撮り方など随所に是枝監督風の場面が散りばめています。
穿った見方をすれば、西川監督にとって主演級がキャストされた大作で、それぞれの出演シーンに気遣いしなければならず、また企画アイディアを出してくれた業界の恩人である是枝監督のアドバイスを無視できず、いろいろ気遣いをしなければいけなかったところが、本作の微妙に漂うイマイチ感り原因ではなかろうかと思うのです。
物語は、小料理屋を営んでいた里子(松たか子)と貫也(阿部サダヲ)の夫婦が、火事で全てを失ってしまうところから始まります。しかし、2人は自分たちの店を持つ夢をあきらめきれません。里子は、貫也の浮気をきっかけに結婚詐欺を思いつきます。
里子が計画し、貫也が女をだましていき、あと一息で新店にこぎ着けるとき波乱が。果たして夢を売り続けた顛末はいかにという話でした。
見どころは、まず夫の浮気を知ったとき、里子が見せる嫉妬の底知れぬ怖さ。男として、これは怖かったです。なのに次のシーンでは、喜々として夫に指令を出して、訳ありの女たちからお金を出させていくように里子は豹変します。この辺の微妙な里子の心理描写は、「ゆれる」で見せた西川監督の真骨頂というべきものでしょう。人間の心の襞を奥深くえぐるように描きだしていくのです。
不思議なのは、阿部寛なら分かるけど、なんで阿部サダヲで、ころころと次から次に女が騙されていくのかという素朴な疑問です。けれども、そんな疑問も払拭するかのように、女心を知り尽くした里子は、裏で夫を操り、自分の仮病までネタにして狙った女から確実にせしめるのでした。
巧みなのは、消してお金を請求しないこと。逆に、惚れた貫也に援助したがるカモになった女たちに、冷たく断れと指令を出すところが憎いくらいです。
かかってきた電話のそばで里子が答えるべきシナリオをかいて渡しているところは、このふたりの関係性を象徴していて、可笑しかったです。
だまされるのは結婚したい独身女性、男運の悪い風俗嬢、不倫で大金を手にした女など男社会で傷を負いながらも生きてきた女性たち。自分の今の状況や周囲の目を意識し、傷つきやすく、心と性を揺さぶられていたのです。 カモにされた女たちと貫也とが激しく絡むシーンも多く、鈴木砂羽までが風呂場で濡れ場を演じているのが意外でした。
そんな中で、貫也のこころのゆれは分かりやすいものでした。どうしても騙しているうちに情が移っていくのですね。そんな男の純情さが発揮されるのが、女として意識されないウェートリフティングの選手に見せる愛情。相手が純情だと、見かけは関係なくホロリと情をいだいてまうところは、とても分かりやすかったです。また息子を抱えたシングルマザーの女の家に居着いてしまうのも、男がいだく家族団欒への憧憬を描いて、共感してしまいました。
それに比べて、里子の心理は、もやもやしていて掴みようがありません。本当にお金が欲しいのか、他の女と交わる夫を許しているのか、女が女を心底騙せるものなのか。そして、本当に夫のことを愛しているのか?
夫が外泊を重ねるため夫婦生活の途絶えた里子は、オナニーまでして自らの衝動を抑え込むのです。しかも他の男からの誘惑に乗るそぶりをして拒絶します。
女のゆれは、里子のように繊細で小さいものなのでしょうか。その表情の微妙な変化に、監督は里子のこころの移り変わりを観客に委ねさせます。
ただ食い入るように里子の表情を凝視続けていても、ますます彼女の本心が見えなくなりました。
そんな得体の知れなさこそ、監督の狙った術中なのかも、しれません。
ラストも、そこまでして!とため息が出るほどの変わりよう。ホント人間の不可解さを思い知らされました。西川監督は、女たちの見せたくない内面をあからさまに描いたのではないでしょうか。同情も抱擁もしない。冷静な視点がいいところ。自身が未婚であることから、冷徹な観察者として徹底できたのかも(^^ゞ
美人なのに、もったいない!
心をえぐられ、人を見つめる優しさに包まれました
苦くて、切ない、そして人を愛する気持ち・・・
人間をまっすぐ見つめる西川監督の目が、
迷いながら歩いている人の姿を、心情を
飾らずに描いている映像が優しくも感じ、
心揺さぶられました。
俳優さんの演技も素晴らしいです。
松たか子は聖域か。
西川美和が監督を務めているので、迷うことなく、観に行きました。良くできた脚本でした。西川美和本人が自身で小説化すれば、芥川賞を取れるでしょう。登場人物が多いのが難で、途中で判らなくなるところがありました。特に阿部サダヲの毒牙に引っかかっていく女性たちがそうです。ちょっと、多すぎるような気がしました。しかし、一番、気になったのは、ずっと、安全な場所に居続けた松たか子です。夫役の阿部サダヲが身を粉にして奮闘しているのに、松たか子はいつも安全な場所にいます。ちょっと、狂気に襲われる場面があるくらいで、最後も何事もなかったかのように物語は終わります。裸になれ、とは言いません、でも、松たか子には、半狂乱になったり、殴り合ったりする演技を求めてはいけないのでしょうか。この映画には松たか子に対する西川監督の遠慮が看て取れます。最後の場面はちょっと、陳腐でしたが、全体的にはいい映画でした。これからが楽しみな監督です。
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