夢売るふたりのレビュー・感想・評価
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女の強さを再認識
東京の片隅で小料理屋を営む貫也(阿部サダヲ)と妻の里子(松たか子)。ある日店が火事になり二人はすべてを失ってしまう。ある日貫也が常連客と一夜をともにしその際成り行きで貰った大金から里子は結婚詐欺で金を騙し取ることをおもいつく。結婚願望の強いOLや寂しい女性の心の隙につけ込んで店を再開するための資金を稼ぐのだ。
結婚詐欺に引っかかる女性陣が田中麗奈、鈴木砂羽などかなり見応えある演技だった。
女性の心理を描くのはやっぱり西川美和さんピカイチだと思う。阿部サダヲの演技も上手くこんな人だから騙されちゃうんだろうなという感じでした。
二人で店を再開するために女性を騙すことを繰り返すがいいひとを騙すことに疲れとうとう違う方向に向かってしまったねじれた結末もこの監督らしいと思った。
『夢売るふたり』
松たか子、最優秀女優賞の演技は圧巻。
万札を叩きつけるお風呂場の冒頭シーンからラストまで、所帯持ってる男は思わず目を背けちゃうねこれ。
そこに博多弁が刺さる刺さる。
またBGMのギターが何ともイイ。憎い映画だぜ、西川監督さんよ。
他の映画も観たくなりました。
「自転車」が暗示する夫婦の行き着く先は……
阿部サダヲ演じる夫・貫也が、松たか子演じる妻・里子と共謀して、女性を騙して金を奪って資金を貯め、火事で失った店の再建を目指して行く。そうして繰り返し詐欺をしていく中で、すれ違う夫婦の関係を描いている。
本作は、度々登場する「自転車のシーン」で夫婦の関係を暗示しながらストーリーが展開する。
映画の冒頭、小さな居酒屋を営んでいる夫婦は、市場で買い物をし、2人それぞれの自転車を仲良く揃って漕いでいく。夫婦の関係が、共に歩んでいる姿を描いている。
さらに続くシーンで、「この夫婦は、夫が妻のいう通りに行動していれば上手くいく」という事が台詞とともに、映像でも示される。一方で夫は「言うことを聞いているフリをしてるからこそ上手くいってる」と反論する。2人のバランスが上手く行っていた時期だ。
この夫婦の歯車が狂い始めたのは、夫婦の居酒屋が火事を出した時からだ。
店を焼失して失意する夫が自暴自棄になっているところに、妻が自転車で迎えに行く。その後、夫が坂道を一所懸命に漕ぐ自転車の後ろに妻が座り、夫にしがみつく。夫を後ろから支える妻の姿、必死に、そして幸せに生きようとする夫婦の姿だ。
この直後、失意からやる気をなくしていた夫の浮気をキッカケに、妻は詐欺を思いつく。夫が女性を騙して金を巻き上げ、それで貯めた金で、2人の店を再建させる計画である。
詐欺が成功し始める頃になると、女から騙しとった金をズボンの後ろポケットに無造作に入れている夫の自転車の後ろに、妻はガッツリとまたがる。この時はもう、夫にしがみつくことはない。しかも、この時の夫は、妻のパート仕事が終わったのを迎えに来ている。妻が夫をコントロールしている描写。
ところが、始めは妻が詐欺の計画を立て(監視もしている)、夫が実行犯だったのに、妻も実行犯として動き始める頃になると、少しずつ夫婦の関係に変化が生じる。
妻が一人で自転車に乗って捜し出したウエイトリフティング選手のひとみ(江原由夏)、夫が偶然に知り合って自転車の後ろに乗せた風俗壌・紀代、この2人の登場で、夫婦の詐欺による店再建計画が、少しずつ破綻に向っていく。
夫・貫也は、ひとみが「普通の感覚」である事に癒しを感じ、紀代が「地に足をつけて生きている」ことに共感する。一方、妻・里子は、夫が自分の元に帰らず女のところで過ごす夜、欲求不満を解消するため自慰にふける。2人は、もはや同じ自転車に乗る姿は描かれない。
しかし、この頃はまだ2人は愛を感じ合っている。夫が朝方帰ってくると、妻は一緒にベッドに行き抱き合って寝る。再建する店の開店準備も進み始めた。そして、貫也も里子も、子供が欲しいと願っている。
ひとみと紀代から金を巻き上げる日、夫は2人の家を行き来する際、真っ暗な道を孤独に自転車を走らせる。かつては、2人で上り坂を登っていた自転車は、今は夫一人が乗り、坂道を下って行く。夫婦の行く末に明るい未来は感じられない。
夫が、次に自転車の後ろに乗せた人物は、シングルマザー・滝子の一人息子だ。この頃になると、夫婦の気持ちは完全にすれ違っている。
夫が、滝子の家族達と鍋を囲んで団欒している時、妻は生理を迎えて(未だに子供が出来ない事を示唆)一人寂しく夜を過ごす。
結局、夫婦の店再建計画は、完全に破綻する。
夫は、妻の元から一人で自転車に乗って滝子の元へ向うが、どこか後ろめたさを感じ、一瞬だけ振り返る。しかし妻の姿はない。そんな夫の気持ちを察した妻は、夫を見送ろうと後を負うが、すでに夫は自転車で走り去った後。このシーンの後、ストーリーはクライマックスに向けてテンポが加速する。
騙された女性達の中で唯一、執念深く夫婦を探しだした咲月(田中麗奈)の追及をキッカケに、滝子にのめり込んだ夫と、そんな夫の気持ちを察した妻、それぞれの行動が仇となり、夫が逮捕されて夫婦の計画は終焉する。
ちなみに自転車は、ここでも登場する。夫が滝子の家から帰って来ない事で、夫の心変わりを心配した妻が、滝子の家に足を運ぶが、自転車は滝子の家の前に停められている。妻は、夫の心変わりを確信する。
さて、逮捕されて服役することになった夫や、騙された被害女性達、そして魚市場で働く妻、そんな登場人物達の「事件後」を描いて映画は終了する。
この際、自転車に乗っているのは、滝子と一人息子だ。この自転車の描写は、一体何を表しているのだろうか……。
木村多江が演じる滝子が親子で自転車に乗る姿は、どう考えても、それまでに登場して来た自転車と同じように、何かを暗示しているはずだ。この点をインタビュー記事で引くと、木村多江は、自転車に乗れないにも関わらず、2人乗りの練習をしている。もし自転車に意味がないなら、役者が自転車に乗れないと言えば、無理せず、手を取り合って親子で歩くシーンでも十分だった。つまり「自転車の後ろに息子を乗せている滝子」は、監督に撮って必要なシーンだったのだ。
最初は、「自転車に乗っている親子の元に、出所後の貫也は行くのではないか?」と解釈した。
しかし、このラストシーンで、一番最初に詐欺計画のキッカケを作った浮気相手・玲子(鈴木砂羽)の元に、(たぶん妻から)多額の現金が送られてくる。これは、妻が一人ひとりの被害者に金を返済しながら、夫の帰りを待っていると受け取れる。
さらに、ラストシーンに登場する2羽のカモメ(英語でカモメを表す「seagull」は、「sea gull」=海の盗人でもある)。このカモメを、夫婦は、それぞれ別の場所からではあるが、一緒に見上げているかのように描かれて、映画は終了する。これも、確実に何かを象徴しているはずだ。
そうすると、夫婦の象徴だった自転車に、滝子親子が乗っている事で、今後、夫婦の間に子供が出来ることを暗示しているのだろうか……。しかし、それはかなり無理のある描写の気がする。
監督の別のインタビュー記事を読むと、もともとは、夫婦が2人で死んでしまうラストシーンを構想し、実際にそのラストシーンでシナリオを書いていたが、もう少し救いある展開と考えてラストシーンを変えたとも言っている。
はたして、この夫婦は、いずれ再び一緒に人生を歩んでいく(子供も授かる)のだろうか……。あるいは、夫婦が死ぬというラストシーンは変更したが、やはり2人は二度と結ばれないという暗示なのか……。
という事で、結局、このラストシーンの解釈が、いまいちスンナリと解釈できずに、未だにもやもやし続けている。
せっかく有効に自転車を使って来たのに、最後の自転車の暗示が、もう1つよくわからない。もっとも、それが監督の狙いかもしれない。
この点について、もうちょっとスッキリ出来て、かつ共感できれば、作品の評価を考え直したい。
モヤモヤはするが、観ておいて損はない作品。
松たか子の演技はもちろん、安藤玉恵や鈴木砂羽など、女優陣の熱演も一見の価値アリ。また、冒頭で、阿部サダヲ演じる夫が、客の女性への距離感が何の気なしに近く、普通の顔ながら女性にモテる男である事も示唆している。こういう演出の妙味も、西川監督らしいと感じる。
なかなかの良作。
虚し過ぎた
だいぶ虚し過ぎた。
松たか子も阿部サダヲも共に良い演技をしているのに全体的に虚し過ぎた。
切な過ぎた。
というのが最後の感想。
最後の松たか子の表情が意味深で、こちら側に委ねた終わり。
ホント、ふたりの夫婦愛が虚しく感じる。
それなりに面白かったけど、多分もう見ない。
愛おしく恐い女と馬鹿で愛おしい男
序盤から中盤にかけては馬鹿で善良な男が、しっかり者の女に依存して生きているかに見える。それが物語が進むなかで、次第に揺らいでくる。一見、センセーショナルな展開のなかに、主人公ふたりの関係性の機微がとても丁寧に描かれていて、泣き笑いのような複雑な感情に支配されていく快感がある。
終盤のドタバタは少し雑な気もしたけれど、幕切れの鮮やかさにそんなことはどうでもよくなってしまった。
ラストシーンのあの表情を前向きに捉えるか後ろ向きに捉えるかで、物語に対する感想はかなり変わってくるように思う。個人的には希望を見たと思っている。
贅沢な。
せっかく阿部サダヲと松たか子なのに、
暗くて暗くて、重い映画。
宣伝だけを観て面白そうだから
観てみたけど、想像してたのと違って。
脇役もいい人、沢山出てたのにもったいない。
まさかチンピラに伊勢谷友介が出て来るなんて。
あれはあれで似合ってたけど、笑
そして、そんな簡単に世の中お金かしてくれる人いるのかな?
楽してお金稼ごうとして、よっぽど精神的に辛くなって淋しくて。
だったら地道でもこつこつ貯めて行った方が
絶対幸せだったのに。
夫婦になるって怖い。
すこ~しだけ、素敵な夢を見せてあげれば・・
映画「夢売るふたり」(西川美和監督)から。
火事で店を失くした夫婦が、店を再建するために、
「結婚詐欺」という方法で資金を集めるストーリー。
そんなにうまくいくのだろうか、と思っていたら、
映画とわかっていながらも、なるほどなぁ、と感じた。
「結婚詐欺」というよりも、この人のために
お金を提供してあげよう、という気持ちにさせるテクニック。
そのコツを妻役の松たか子さんが呟く。
「夢なんて、ほんの少しで充分よ、ほんの少し。
すこ~しだけ、素敵な夢を見せてあげれば・・
やさしい星たち、まばゆい星たち、そのきらめきに、
ほんの少しだけ色を付けてあげましょう。
そうすればみんなきっとあなたのために、輝いてくれるわよ」
言い方を変えれば、こんなことだ。
「みんな寂しくて、みじめな想いを抱えているのよ。
立場もお金も、人間関係も、今あるものはもう何一つ、
自分の人生を変えてくれはしない。未来も見えない。
十年後の自分なんて、考えるのもイヤ」
そんな人たちに、タイミングを外さず、声をかければ、
「あなたは星たちを照らす、小さな太陽になれるはず」
詐欺って、こんな人間の心理をうまく操作するんだなあ。
松たか子。阿部サダヲの名演技。
役者がとてもあってました。夫婦感が半端なくありますね。みてて起こる事一つ一つに衝撃が走りますね。悪いことをしたらアザとなってかえってくる。その言葉通りですね。
結構深い終わり方で、離れても夫婦愛は変わらないという感じでしたね。
悲しい仮面夫婦
火事で無くなった店を取り戻すために、夫が女性を騙し、金を巻き上げる。シナリオは妻が書く。
設定がリアルで、こんな風に近づかれたら騙されるかもしれない、と、正直怖くなった。それくらい、感情描写がうまく出ているし、エグい。わざわざ癌の本を読んで勉強したり、どうやって金を巻き上げるか試行錯誤していくところが、気味悪く思った。
結局、夫が詐欺をしている間にお互いの心が離れて行き、お金のためなのか、復讐のためなのか、心の隙間を埋めるためなのか、全てが分からなくなっていく。
破滅型のシナリオで、救われない気持ちになったが、貫也が子供の罪を自分が被るシーンは、やっぱり悪くなり切れない彼のキャラと、どこかこの泥沼から逃げ出したい感情を描いていたように思う。
物語はゆっくりと流れていき、盛り上がりも少ないので、正直後半は退屈だった。私自身は好きな映画ではないが、こういう描写が好きな人がいるのはわかる作品だった。
こういうダメな男はけっこういる
男ばかりではないが、ここに登場した人物は結構いる。
特にリフティングをしている女の子はとても痛くて好きだった。
話は途中からテンションが下がってゆくが、この女の子のはとてもよかった。この子がその間のテンションをつないでくれた。
だから、ぼちぼちの作品。
夫婦の境界線
ターゲットを見つけシナリオを書くのは妻、妻のシナリオ通りに女たちの心の隙間につけ込み金を引き出すのは夫。最初は浮気した夫に対する腹いせ半分。しかし、妻はこの人には自分しかいない、という絶対的な自信があったはず。ところが、妻の不用意な発言から、夫婦の間の信頼が揺らぎだす…。
ストーリーも前提となる設定がまず巧みだし、相変わらず、この監督は仕草や目線といった言葉に頼らない感情表現が巧い。監督の要求に応える役者もいい。特に夫に騙される個性豊かな女たち(夫婦にとって“運命の女”となった鈴木砂羽も含めて)を演じた女優陣が素晴らしい。ただ、妻がマスターベーションするシーンやトイレで生理に気付くシーンは夫が別の女と寝ている状況で、夫婦生活がどうなってるかという遠回しな表現なんだろうが、これはもっと直接的でもよかったかも。
東京の下町の風景が柔らかく見える撮影はとても好みだった。
いいシーン、いい台詞、いい役者のオンパレード。
観終わったあとは、寝付けない映画です。
非常に映画的で、情熱的で、知的な、野心作であることに間違いはありません。
とりあえず、見て欲しい作品であります。
観終わったあとに、ああだこうだといつまでも頭から離れてくれないのは、やはり西川作品です・・・。
育児中なので映画館には行けなかったのですが、夫と一緒に見たかったので(笑)、夫婦で見ました。
(以下、少しネタバレ)
それを踏まえて、傑作になれなかった失敗作であったとも、言い換えられる作品でもあります。
『何が言いたいのか分からない』という感想が見受けられますが、それは、いいシーン、いい台詞、いい役者が多過ぎるに加えて、クライマックス(夫婦間であったり貫也と女たちとのシーンであったり)が幾度も差し込まれるので、どこに焦点を当てて観ればいいのか迷わせるのです。
脚本も監督自身が書かれているので、削れなかったのでしょうね。しかしこのテーマで、ほぼラストが想像つくにも関わらず、二時間以上引っ張るのはムリがあったように思います(『ゆれる』よりも20分弱長い)。
で、この映画では、なんだか色々なメッセージが語られちゃうのですが(それが鼻につくという人もいるでしょう。私も、カラッとブラックだった『蛇イチゴ』が好きだったなあ)、里子がモノローグのようにつぶやく「他人の人生に乗っかってると、卑怯な生き方になるよ」が西川監督の、映画を通じて女性に対するメッセージと受け取りました。
不倫、恋愛、結婚、人と同じように何かに乗っかってかないととやりきれないながらも、そんな中でもがく女性たちへのエール。
ただ、後半、ラストに向けて、夫婦関係の機微(詐欺を続けているうちに、2人の方が詐欺みたいな仮面夫婦になってしまった)という重く興味深いテーマと、↑のメッセージの持つフェミニズムが、里子という1人のキャラクターの中で平行して展開してしまったことで、里子の持つマグマのようなエネルギーが二分化してしまい、それに加えて貫也と女たちの一悶着やら子供までが絡み、ストーリーが破綻してしまったように思います。そしてラストを地に足を着けて働き始めた里子のまなざしに一気に収束させたのは・・・うーーん。それこそ役者に乗っかり過ぎに感じてしまいました。
(ロバートアルトマンなら、点でしかない女たちを線で繋げただろうし、スコセッシなら里子と対になるサブキャラを据えるとか、映画として構築しただろうな・・・別に彼らに倣うことはないんだけど、いいシーンのオンパレードだけでは映画にならないことを残念に思う。西川監督が大好きなだけに)
ちなみに私は、青空を番(つが)いの鳥が飛ぶのを眺めながら妻を想う貫也と、朝まだ人が夢を見ている時間に働き一人で生きることを選んだ里子、に、対照的なものを感じました。
夫婦は元に戻らないと思う。どうです?西川監督。
でっかい?が出ました
面白くありませんでした。
だけれども、見終わってから色々と思考を巡らすと、始めのそれとは違ってきます。
独特な視点の作品を作り続ける西川美和監督。コメディイメージの強い俳優を据えての最新作ということで、期待して鑑賞しました。
夫婦による結婚詐欺を主軸にした映画で、あまり良い印象は受けませんでした。
何しろ、主役二人が犯罪を犯す側ですから、どうあっても倫理的に誉められるわけがありません。
しかし、その行為はさておき、この映画の面白さは、どうやらその心内にあるようです。
物語が進むにつれ、登場人物の思惑が垣間見れるのですが、それは善意なのか悪意なのか?
愛情なのか憎悪なのか?
利己なのか利他なのか?
場面一つ一つにその両方が込められており、見る側としては混乱してしまいます。初見で面白くないと感じた理由もこの為です。
「人間は単純ではない。色々な面を持ち合わせている」と言われてしまえばそれまでですが、物語を提供するという意味で言えば、そのやり方は、どんな展開もアリになってしまうのでは…。
見ている私自身が、良心の呵責に耐えきれなくなりそうで、見終わった後は愕然としました。
しかし、時間を開けて熟考すると、初見とは違う側面も見えて来ました。「むしろ、単純なのにどちらにも転びきれない不安定な存在、それが人間」なのかと。
そして、物語後半に風俗嬢のくだりがあります。それがキーポイントに思えてきました。
もしそうだとしたら、相当意地悪な仕掛けです。(誉め言葉
私の思い込み過ぎでしょうか?
本意はどうなのかと、考えれば考えるほど混乱します。
でも、心に残る作品なのだから、やっぱり凄い映画です。
俳優の演技も素晴らしかったです。
阿部サダヲは、コメディ色を消して危うい夫を。
松たか子は、言葉少ない虚ろな妻を。
そして、脇を固める俳優陣の有り体は見事の一言です。
考えて考えて、唸りたい方にオススメです。
この夫婦は続くんだと
最後にカモメを見て、映画を観終わって、
『一生を同じくする』という決意のある夫婦の話なんだろうと
自分の中では結論が出ました。
夫から妻へ、裏切りもある。辛辣な言葉もある。
妻は夫に、執着があるのに、結婚詐欺をさせる。
結婚詐欺を繰り返し、
最後に子持ちの公務員と
関わっていったなかで。
火事という命の危機の中でも持ち出した、
板前の命ともいうべき包丁を
彼女の家に持っていく夫。
その家に忍び込み、
その包丁が雑に置かれているのを見た妻。
どんなにか心が乱れただろう。
階段を踏み外しもするだろう。
包丁は、2人の夢の象徴じゃないかと思う。
この夫婦の、危機といえばこの地点だった。
そして夫がした選択に、妻はフォークリフトを運転して
夫の出所を待つんだろう。
夫の選択は、結婚詐欺を続ける事への
ピリオドだったような気がする。
この2人、
憎んでも蔑んでも、相手がどうでも、
根っこでバカみたいに相手を愛しちゃってるのかもしれない。
結婚詐欺なんて、褒められた事じゃもちろん無い。
しかしするほうもされたほうも、
それでも生きていく。
ひとときの『夢』を確かに売ったのかもしれない。
前半をすっぱり端折りましたが、
全てのシーンに
意味があると思いました。
松たか子さんの、
全く揺らがない見る者を恐れさせる強い瞳に
惹きこまれました。
阿部サダヲさんは、夫の掴めない役所を
演じるのにピッタリな俳優だと思いました。
妻側の気持ちは、自分が女として
なんとなくわかるのですが、
夫側の気持ちが掴み切れなかった点が少し
残念でした。
結婚詐欺をはたらいているうちは、
相手を好きだという、自己暗示がかけられる
タイプだったのか。
純粋に好意を寄せている様子と、
見事に金を引っ張る様子が私の中では
一致せず、冒頭にあった
『嫁に操られている様に見せて
実は自分が操っている』という言葉どおり、
観客さえ踊らされた感じがします。
よくよく練られた、
面白い映画だと思いました。
ただ後味はあまりよくないかもしれません。
高麗屋の、お譲さんは、やはり、ただ者ではありませんでした。
松たか子さんと寺島しのぶさんは、どうしても比べられますが、たまたま、出演する作品が違うだけで、高麗屋さんのお譲さんとと音羽屋さんのお嬢さんとの実力の違いはないと感じました。
もう、公開して2か月くらいたっていると思いますが、有楽町の映画館は満席でした。
まず、脚本が秀逸。それこそ、冒頭の火事さえなければ、仲の良い夫婦が切り盛りして繁盛する小料理屋の話で終わるのでしょうが、極限まで追い詰めれた時には、奥さん(松たか子)=女性のほうが肝が据わるという、よく、有りがちな話ですが、それだけでは終わりません。
そこは、阿部サダヲ、松たか子の役者上手な登場人物。
一筋縄では行きません。最後まで、一気に、観ました。
「小さな幸せ」を守ることが、どれだけ、他人に迷惑を掛けて、涙を流し、血を流すかという、人間の業を見せつけられた作品でした。
高麗屋さん(松たか子)は、『告白』から、完全に、音羽屋さん(寺島しのぶ)に並んだと思います。
本作の続編は、ないでしょうが、北陸の港町で、つつましく、暮らしていく二人の将来を予想しながら、劇場を出ました。
今年の邦画の「当たり」のひとつです。
劇場迄行ったかいが有りました
欠点も穴もいっぱい。でも最高級のエンターテインメントです。吉川美和監督は凄い。ちっさい可憐な女の子みたいな監督がこんな人間の本性をえぐる深い闇を表現して行きます。好きな役者さんばかり‼吉川美和監督は伊丹十三監督を彷彿させますね。ひとつだけ注文を付けます。出だしからBGMにイライラ‼趣味悪く有りません?邪魔で邪魔でーーでも監督を信じてるから次回作楽しみです。
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