「愛おしい作品☆」夢売るふたり kinukenさんの映画レビュー(感想・評価)
愛おしい作品☆
遅ればせながらやっと見ることが出来ました。^^;
一通り見て、ウチ帰って咀嚼して、やっと分かった部分がありました。
それは、どこに救いがあるのかなあ、、といういこうこと。
登場人物は、思えば皆、善人だらけです。 詐欺をする側の里子も貫也もある意味底抜けに善人。 だって詐欺でお金集めたあと、お店が成功したら倍返ししようねと、借用証書に感謝で手を合わせてるし、何といっても罪の意識がないですからね。。 それにちゃんと夢、売っています!
もちろん、どう考えても早晩捕まるに決まっている行為を繰り返しているあたり、いわゆる〝頭隠して尻隠さず″状態。 悪人、というより、相当愚かな人物たちでしょう。
愚か、ということで言えば、この映画に出てくる人々は、ほぼ例外なく皆愚か。 それは終盤に出てくる探偵さんや子供、さらにお父さんまで愚かです。
視聴者は、この救いがたい人々に対して〝俺はこんなことしないよ。″〝私はこんなバカじゃないわ。″とまずは拒絶反応を起こすでしょう。 しかし、必ずどこかで〝自分でもしているような愚かな行為″が散りばめられていて、視聴者は鏡を見せつけられるような心境になってきます。 おそらくそこが監督の狙い目。
飲んだくれて平気で人前で吐いてしまったり、オナニーしたり、暴力振るったり、お人好し過ぎて簡単に騙されてしまったり、自分の理想と真逆なことをして自己撞着起こしたりと・・・。
たぶん、みな、どこかで同じようなことやっています。
相手を想っていても、その相手が複数人いたらややこしいことになる。
人生、そんな単純なものじゃないし、良かれと思ってした行動が空振りどころか他人を傷付けてしまう結果を招くことだって往々にしてある・・。
そんな不可思議な宇宙に放り込まれた私達に一体救いはあるのだろうか?
そう考えると、やっぱり結論は一つしかありません。
それは、己の愚かさに気づくこと。
己の愚かさをいったん認めてあげること。
そこからしか次の人生、なかなか見えて来ません。
自分は愚かじゃないよ、と思いたいけど、つっぱりたいけど、愚かな自分に冷静になる方がちょっと楽になれるし、人に優しくなれるし、次に進める気がします。
さらに自分の愚かさにちゃんと思い至れば、この映画の登場人物全てが愛おしく感じられるし、映画館出たあとの全ての人々にも優しい眼差しを向けることが出来ます。
(相手の〝愚か″をなじってばかりだとストレスたまるでしょ?)
でも、後半になって貫也が里子に楯突くように発言する場面が二回ほどあります。私にはそこが最も重要なポイントに感じられました。
そこで初めてお互い正面から向き合ったのかもしれません。
里子は、自分の心をちゃんと見てくれる貫也に、内心喜びを感じたのだと思います。 喧嘩のようにしてやり合う言葉の応酬に、実は本音とともに真実の思いやりがあったように感じましたね。
あと、男同士で「お前にこいつを幸せにしてやれんのか?」と言われる風俗嬢は「誰に評価されなくても、自分で落とし前つけれる今の状態が一番幸せ。」と発言し、視聴者はハッとします。 暴力を振るわれ、お金を巻き上げられる可哀想な女はサイテーの人間だと、どこかで見下してしまっている〝自分″に気づくからです。 そして実は最もまっとうな考え方をしているんですよね・・。
この映画はですからとっても逆説的ながら、非常に温かみのある映画であり、表面的にはひねくれてはいても、実は監督さん最大限の〝人間賛歌″なのだということが了解出来ました。
うん、西川美和さん、すごくあったかいよ。。^^
すみません、↑を書いた者です。
冒頭、
〝それは、どこに救いがあるのかなあ、、といういこうこと。″
といういこうこと。→ ということ。
の間違いです。
m(_ _)m