「固い。小説みたいな映画。」夢売るふたり ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
固い。小説みたいな映画。
素晴らしい雨のシーンと実景の数々、そして『ディアドクター』にも増して、演出は堂々たる感じだったけど、なんでだろう、いっこうにエンジンがかからない。かからないのは脚本なんだろうと。
前の偽医者に続いての結婚詐欺の話、よっぽど西川監督は軽犯罪に潜む人間性が好きなんだろうな。で、今回は夫婦がテーマ。最初はうまくいって、ほころびがでて追い込まれていくのはこの手のパターンだけれど、まず軽犯罪映画につきものの軽妙さがない。冒頭に夫婦が出会うであろう割りと寂しい人々が並行して描き出されるが、騙されるのがそんな寂しい人たちばかりなので生き生きしてこない。この辺は『ディアドクター』と違う。また、美しい実景に差し挟まれてどんどん重くなっていく。いっそもっと嫁さんをモンスターにしてしまえばと思わなくもないが、いかんせん松たか子、かわいい。特にMな人にはまだまだいじめとしても甘いくらいだろう。夫婦の縛って縛られての関係は宗教か魔法のようなものだけど、でもやっぱりどこか快楽のようなもので回ってなければいけないような気がするが、エモーションと快楽がない。
この素材とこのキャラクターたち、小説だと生きるのだと思うけど、映画としてはまったく生きないな、と思った。
主演ふたりはよかったが、配役が地味に豪華で、鶴瓶ほかチョコっと豪華なキャストは効果的でないように思った。別の意味で、芝居はできなくとももっとカラッとしたキャラクターがいてくれたらと思った。
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