「予想外に良かった」夢売るふたり WILLさんの映画レビュー(感想・評価)
予想外に良かった
結婚詐欺の映画なんてなんか湿っぽくてどうかなぁ…と思いながらも西川美和さんと阿部サダヲさんに魅かれて観に行きました。
前半、結構笑えます。
阿部サダヲが電話で女の人に別れ話を告げる横で松たか子がせっせとセリフを書いて渡しているシーンがあったり、お金も後々返すつもりでいる二人には罪の意識がないまま犯罪が繰り返されます。
しかし、中盤から後半は、だます女の人の層も変わり、一気にシリアスな展開に変わっていきます。かかあ天下だった松たか子と阿部サダヲの関係にも大きな変化が生じます。
また、後半の展開から、あぁきっとこの夫婦は本当は子供も欲しかったんじゃないのかな…とか思わされます。でも、もう戻れない。取り返しがつかないところまできてしまっている。
欲を言えば、結婚詐欺をする前の夫婦生活を1カット描いてほしかった。たとえば、「子供がほしい」と甘える阿部サダヲに「今はまだ人を雇う余裕はなかと。あと1年はこのままでいこ」と避妊具を見せて諭す松たか子。
夢みがちな男に現実的な女。
私の好きなシーンは新しい店の設計図を胸に抱えて全速力で走る松たか子の腕からバラバラと設計図がこぼれおちてゆき、最後には1枚も残らないシーン。とてもせつないです。
松たか子さんは、大女優さんでありながら本当にすごい、こんなシーンも必要ならやってのけるんだ、と驚かされるシーンもいくつかあります。
阿部サダヲさんも結婚詐欺師でありながら、女の人と関わっていく中で交わす言葉に嘘が感じられない。さながら光源氏。
何より、主演が松たか子さんと阿部サダヲさんだから、こんなエグイことをテーマにしていても、後味が悪くないんだろうなと思いました。
監督も脚本も俳優陣も本当にすごい映画です。だまされたと思って観て下さい!