「Zの意味が分かる。」ワールド・ウォー Z ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
Zの意味が分かる。
近年観たパンデミック映画で印象に残る恐ろしさだったのが
S・ソダーバーグの「コンテイジョン」。
もちろんゾンビは出てこないけど、人間がバッタバッタと
感染して死んでゆくのに原因が特定できない恐怖、というのを
存分に感じ、最後の発生源にも息を飲んだ。
今作を観て、それにかなり近いものを感じた。
最初はゾンビ映画だ、と(確か宣伝されていたと思うんだけど)
思って普段ホラーを観ない私でも、ゾンビ映画は笑えるからね~
といった理由で観られたりするので、簡単に捉えていたが
蓋を開けたら…いや~笑えない。とても笑えない作りだ。
そもそもゾンビが面白くも何ともない、ふざけた箇所もない。
ひたすらゾンビの弱点を探し出すブラピの視線が描かれており
前述の映画で言えばM・デイモンのようにも見える。
なのでゾンビ映画を期待すると、エッ?となるんだけど、
しかしながらゾンビ化しているのは事実なので、となると
今作のジャンルは何になるんだろうか…。
ゾンビ。ホラー。パンデミック。私にとってはホラー映画だった。
冒頭からもの凄い速さで襲われてはゾンビ化し、群れとなって
壁までよじ登るゾンビの大群。もはや人間と思われることもなく、
どんどん焼却されていく彼らを観て、これは映画なんだ、という
ところでやっと我に帰るくらいで、実際に肩に力が入りっぱなし。
どこでどう襲われてどうなるかが見えないので、
(まぁブラピは死なないし、ゾンビ化しないだろうと思いつつも)
あっという間に繰り広げられる恐怖のパンデミックが堪らない。
物語的には決して新味はなく、前述の映画と同じく、原因究明と
ワクチンの開発しか人間に手立てはないのだが、
何しろ襲いかかってくるゾンビから逃げ回りながらになるので、
それも一向に進まない。
ブラピ以外のキャストには有名無名を混ぜているので、どの顔を
見ても皆気味が悪く、ゾンビか?いや、人間か?と詮索する程で
いや~最後まで溜飲が下がるのなんの。
相手がゾンビか見えない細菌かの違いだけで、怖さに変化なし。
唯一笑えた(わけでもないけど)のは、休眠状態のゾンビくらいか。
あのくらいゆっくり動いてくれないと…なんて思ったりしていた。
それにしても、ゾンビをかわす方法が○○になること。っていう
自然法則というか摂理というか、まぁそうなるかなぁ的な結論に
達するところがどうなんだろうとも思えたけれど、あのブラピの
選択眼は凄かったわね。一歩間違えば、、、でしょう。それまで、
やれ家族!家族!って言っていたのに、いいの?その選択。って
自分が究極の立場にいないもんだから余計にそう思ってしまった。
最近ではやたらと家族思いが先行しているブラピ夫妻の印象。
だからあんな描写になったのも頷けるんだけど、人類存亡の危機
を目の前に、俺はやらないよ。っていえる男もどうなんだろう。
確かにそれで家族と一生逢えなくなる可能性もあるわけだから、
うーん…な選択になるだろうけど。功績がモノをいったわけで。
しかし「手伝わなきゃ艦から下りてもらう」ってそれも酷い話だ。
ともあれ今作の結末は、結末にはならない。
まさかゾンビにはならずとも、こういうパンデミックの恐怖は、
これからも消えることなく続いていくことを考えると、
とても絵空事で済まされる内容でないところが、ただただ恐ろしい。
(ぜーんぜん日本は出てこなかった気がするけど、どうしてかしら)