「もはやゾンビ映画とはいえないスケール感。パンデミックの終結法がアィディア賞もの。」ワールド・ウォー Z 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
もはやゾンビ映画とはいえないスケール感。パンデミックの終結法がアィディア賞もの。
『Z』はゾンビを指す、まごう事なきゾンビ映画。普段は低予算で作られるのに、この作品はハリウッド大作水準でグレードアップ。主演のブラビだけで、一体何本のゾンビ映画ができるのかというくらい贅沢な作品です。ゾンビ映画というとそれだけでパスしてしまう人も多いだろうと思います。しかし、本作はグレードアップした分、パニック映画に近くなって、おどろおどろしいスプラッターな場面描写が少なくなっています。だから、ゾンビ映画が苦手な人でもなんとか鑑賞に堪えられるのではないでしょうか。
低予算のゾンビ映画では不可能なゾンビの群れが都市を破壊していくシーンは、さすがにお金をかけただけに、迫力がありました。
最近は自らプロデュースすることが多いブラビだけに、単なるゾンビ映画だったら、いくらギャラを積まれても出演しなかったでしょう。奥様に笑われてしまうのがオチです('◇')ゞ。ブラビの心を動かしたのは、主人公の国連捜査官だったジェリーの信念に共感したのではないかと思います。
急速なゾンビ病のパンデミックにより、人類は絶対絶命の状況に追い込まれても、ジェリーは必ずどこかに、解決法の糸口はあるという希望を捨てなかったです。
そんなジェリーでも当初は、危険な任務となるゾンビ病の原因探索チームへの参加を拒んでいました。国連捜査官として今まで散々家族と離れて、危険で困難な紛争地帯で現地調査の任に当たっていたのですから、退役した今だからこそ、一秒でも家族のそばにいたいというのが、当然な思いでしょう。たれど、家族の安全を国連から人質に取られてしまい、渋々チームに参加するのです。ジェリーは、決してヒーローではなく、どこにでもいるパパだったのです。
でも一端任務についたら、国連捜査官の血が騒ぐ。中途半端では戻れない意地が出てくるのです。そして、あれほどの家族思いの男が、人類のために自ら人柱となって、家族に愛しているよとのメッセージを残して、自らを人体実験にかけてしまうのです。半端な信念の持ち主ではなかったのですね。そんな魅力的な主人公だから、ブラビは主役を引き受けたのだと思います。そんなジェリーの信念をあふれる気迫で演じきったブラビは、やはり千両役者だと思います。
ところで本作の魅力は、今までのゾンビ映画になかった抜群のアイディアだと思います。強力な感染力を見せつけているゾンビ病でしたが、ジェリーはそんな強力なウィルスの強みに弱点が隠されていると直感するのです。実際に、ゾンビの群れに襲撃されながらも、ゾンビ病にかからない例外をジェリーは見落としませんでした。それがヒントとなって、有効な対策を発見することになるのです。その発想は、日常のビシネスでも強力なライバルを超えていく上でヒントになるかもしれませんね(^。^)
しかし、そこにたどり着くまでの道のりは、お金をかけて作っている分簡単には辿りつかせません。何度も絶体絶命のピンチを乗り越えることになります。冒頭からして、ゾンビ病の原因探索チームの主役になるべきウイルス研究者が、最初に立ち寄った韓国の米軍基地でゾンビの襲撃に会い殺されてしまうのです。この段階で普通ならあきらめてしまうのですが、ウィルス研究の門外漢ならがも、韓国の基地でつかんだわずかなヒントでイスラエルに向かうのです。
高い擁壁で護られたイスラエルの首都エルサレムでしたが、群衆が大音量の音で挑発した結果、ゾンビが山なりになって擁壁を乗り越えてしまうのです。ジェリーが脱出のため乗り込んだ飛行機も、荷物室に潜んでいたゾンビに乗客が感染してパニックになります。 ジェリーがどこに行ってもゾンビが待ち構えている息切らせぬ状況で、緊迫感を募らせました。
イスラエルのモサドの高官からもらったヒントで、ジェリーはウェールズにあるWHOの研究所に向かいます。そこで、ゾンビ病の解決のヒントに気づき、ワクチンの素材となるもの取りに行く場面がクライマックスとして見物です。
何しろ目的の素材が有る隣の棟の研究室は、うじゃうじゃゾンビがいるところ。そこをかいくぐって、目的のものをゲットするのはどう見ても困難なことでした。ゾンビは音に反応するので、ソロリソロリと用心深くすり抜けようとするシーンは、スリル反転。これ迄の大規模なパニックシーンも目を見張るものがありましたが、やはりこの場面の接近戦のほうが、よりスリルを感じますね。
それでも、ゾンビに見つかってしまいジェリーに付き添ってきた研究員たちは、安全なゾーンに避難します。ひとりゾンビの群れのただ中に残されてしまうジェリー。こんなどうしようもない場面で、ブラビの演技が冴え渡ります。
続きは劇場で見るべし。いざいかん戦場の劇場へ!
追伸
鑑賞は3Dでしたが、映像にダイナミックな場面が多かったので、3Dが効果的に働いたと思います。お勧めできます。