「ミッシェル・ウィリアムズのマリリンだけでも、この映画を観る価値アリ。」マリリン 7日間の恋 梅薫庵さんの映画レビュー(感想・評価)
ミッシェル・ウィリアムズのマリリンだけでも、この映画を観る価値アリ。
1956年、マリリン・モンローとローレンス・オリヴィエが共演し、オリヴィエが監督した映画「王子と踊子」撮影の舞台裏でおこった、マリリンと無名の助監督の密やかなロマンス。
マリリンを演じたミッシェル・ウィリアムズは完璧。マリリンの曲を自身で吹き替え無しに歌いこなした上に、その演技のみならず、彼女の持つ心の繊細さ、危うさまでを演じきっている。マリリン以上にマリリンらしい、というのは、誉め過ぎかもしれないけれど、それほどあまりあるミッシェル・ウィリアムズの可愛さがこの映画の全て。なので、彼女の演じたマリリンだけでも、この映画を観る価値がある。
その上で、脇役陣もさらにいい。特にサー・ローレンス・オリヴィエを演じた、ケネス・ブラナー。最初、オリヴィエは演技の上の問題でマリリンと対立するが、それは後に、老いを感じつつあった名優が嫉妬心と裏腹に、一人の女優に魅せられていく。また、ドミニク・クーパー、エマ・ワトソン、そしてジュディ・リンチもGJ。
マリリンの、相手となる無名の助監督コリンを演じた、エディ・レッドメイン。どこかで見た顔だとずっと思っていたが、あとで、以前見たウィリアム・ハート主演「幸せの黄色いハンカチ」のリメイク版「イエローハンカチーフ」(2008)で、武田鉄矢がやった若者の役をやっていたことを思い出した。この映画では、英国の裕福層出身という設定。所謂、イケメンじゃないということで、ちょっとした否定的な意見もあるようだが、純情な若者のを素直に演じていて、好感が持てた。
好きな場面は、マリリンとコリンがつかの間のデートをする場面。現実に戻らなければならないその帰り道、コリンはマリリンの手をそっと握ろうとするが、彼女はそっとコリンの想いを拒否する。BGMはナット・キング・コールの「枯葉」。夕暮れがセピア色となってつつむなか、二人の短い恋の終わりを美しく描いていたのが印象的。
だれかが呟いていたけれど、もう確実にマリリン・モンローを全く知らない世代がいる中で、この物語の背景がどれだけ受け入れられるか、わからない。もちろんそれを十分知ったうえでこの作品を観れば、もっと面白いけれど、たとえそうでなくても、純粋にファンタジーとして観ることが出来るなら、誰にでも受け入れられるラブロマンスといっていい。
3月28日 角川シネマ有楽町