「狂乱とファンタジー」アンダーグラウンド(1995) こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
狂乱とファンタジー
えらいものを観た。
観終わってすぐの感想はそうだった。
とはいえ万人に受けるタイプの作品ではない。長いし。
シュールな笑い(実際には笑えないけど)に満ちている。
ナチス政権下での設定の映画は多数あるが
このような狂乱とファンタジーの味付けのされてるものは
少ないだろう。
チャップリンをも彷彿とするブラックコメディ、
そして地下生活でも逞しく生活を続ける人々。
ここでは長年ゲリラ生活で耐えたベトナムの人々をも
思い出した。
しかしそれだけで話は終わらない。
ナチスが終わってからも彼らの人生は続く。
愚かしいまでの欲望にまみれたり
時代遅れともいえる信念に殉じるのは
滑稽でさえある。
大変で辛いようなことも度を越えてしまうと
笑えてくる、そんな世界を観ているようで
ともかく突き抜けた一本だ。
一つ戦争が終わった、解放されたと
思っても次々と火種があり
ほとほと人間というものは
愚かで救いがないと思わせるのだが
ラストが本当はこうありたかったと思わせる
世界で胸が切なくなる。
国は消えてしまった。
漂流していく彼らは止まるところがあるのだろうか。
正直冒頭からこの映画のノリになかなか
ついて行くのが大変なのだが
果たしてこんな映画を
そうそう作れるものだろうか?
めったにお目にかかれるものではないと思う。
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