「【”己の罪を知り改心せよ。”高慢、非道なる将軍、極悪なる部下の裏切りにより愛娘を亡くし美しき妻に去られるも、且つて愚弄した少林寺に入門を許され、仏法の元、豊かなる人間性を取り戻す逸品也。】」新少林寺 SHAOLIN NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”己の罪を知り改心せよ。”高慢、非道なる将軍、極悪なる部下の裏切りにより愛娘を亡くし美しき妻に去られるも、且つて愚弄した少林寺に入門を許され、仏法の元、豊かなる人間性を取り戻す逸品也。】
■初期の中華民国。軍閥が割拠する中、少林寺は貧しき民の救済の場となっていた。
ある日、負傷した登封城の将軍が逃げ込んで来るが、追って来た軍閥の長侯杰(アンディ・ラウ)により少林寺の僧の前で殺され少林寺の僧たちを侮蔑して去る。だが、侯杰も、腹心の部下曹蛮(ニコラス・ツェー)の裏切りによって最愛の娘勝男を失い、美しき額夕(ファン・ビンビン)から詰られ妻は彼を捨て去る。
全てを失った彼を救ったのは、少林寺を収める方丈(ユエ・ハイ)や厨房係である飄々と生きる悟道(ジャッキー・チェン)であった。侯杰は一からやり直すために出家することを方丈に願い出て、赦されるのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・まずは、今作のキャスティングが豪華過ぎるのに驚く。アンディ・ラウ、ニコラス・ツェー、ファン・ビンビン、ユエ・ハイ、ジャッキー・チェンとまあ、驚くべき陣容である。
・今作では侯杰を演じたアンディ・ラウが主人公であるが、上記役者が扮したキャラクター造形もキチンと立っていて、大変に良い。
特に、極悪なる曹蛮を演じたニコラス・ツェーと、矢張り悟道を演じたジャッキー・チェンである。
・アンディ・ラウは当然良くって、傲慢な軍閥の長から、全てを失い少林寺の方丈から”浄覚”と言う名を授けられ、仏法の元、人間的に成長していく様を見事に演じている。
・悟道を演じたジャッキー・チェンは、初期のコミカルな演技を復活させ、飄々と生きる厨房係を絶妙に演じている。ジャッキー・チェンはこういう役が一番似合うのではないかな。
■軍を使って、財宝を奪っていた曹蛮と、名を改めた”浄覚”との少林寺内での一騎打ちのシーンは白眉である。
砲弾が寺の屋根を壊す中、”浄覚”は落ちて来た柱から曹蛮を護り、自らは柱の下になり息絶えるのである。驚愕する極悪の表情が消え去った曹蛮が見ている中、”浄覚”は大仏の座禅を組む掌の中に納まるのである。
そして、曹蛮は自らの行いにより死屍累々たる人々の姿を呆然と見ているのである。
<ラストは、悟道に導かれ少林寺を去る民たちの姿が映し出されるのである。瓦解した少林寺を遠方に見ながら涙を流す少年僧に対し、悟道は”大丈夫。少林寺は皆の心の中にあるんだよ”と笑顔で励ますのである。そして、その列の中には少林寺に連れて来られた際に、且つての夫の姿を見て”今の貴方が一番好き。”と言った額夕もいるのである。
今作は、少林寺という仏の教えを守りつつ、弱き民を助けていた武術の寺の僧たちの人間としての美しき姿を背景としながら、その中で”己の罪を知り改心した。”男の生き様を描いた逸品なのである。>