「ボグサイドの虐殺」ブラディ・サンデー jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ボグサイドの虐殺

2020年6月17日
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1972年1月30日 北アイルランドのロンドンデリーで 下院議員がカトリックへの(プロテスタントからの)暴力、選挙、雇用等での差別撤廃を求めるデモを計画する

前年から始まったインターンメント(逮捕状なしの拘束~悪質尋問手法)停止も訴えていた

北アイルランド自治政府はデモ禁止
この事件後に英国政府直轄統治となったが
インターンメントは 1975年末迄継続された

一発の銃声(後に英国側からと確認)を境に状況が一変、英パラシュート部隊は豹変する
この辺りの描写が 臨場感あふれていて、怖い
こうなる伏線も描かれている

激励に訪れた少佐の〈デモ隊=IRA=暴徒化〉という単純認識と部下を鼓舞する発言の数々…
彼より情勢を理解する現地作戦本部の中佐は反論しない(できない組織形態か)
忖度もあるかもしれない
(後で責任を押し付けられる)

少佐の鼓舞は その部下から兵士へ各々の解釈で伝えられた

この指揮系統の乱れ、無理解が惨劇を招いた一番の原因なのが理解できた

少佐も政府の誰かに忖度したのか?

兵士達はアドレナリンが出てしまったが、カトリックに対する憎しみはそれほど感じられない
この後、IRA支持が拡大し〈北アイルランド紛争〉に突入していくのは誰にでも理解できる

昨年(2019)元英軍兵士1名が 殺人罪で起訴されたが、遺族の憤りは収まらない
本当の責任も もっと上層部にあるような気がするのだが…

事件を再現する試みで、エキストラにデリー市民、パラシュート部隊に英国軍兵士だった人々を使っているらしい
手持ちカメラの長回し、自然光撮影も効果的
私は映画「アルジェの戦い」を思い出した
こちらは虐殺だが

エンドクレジットにU2の〈Sunday Bloody Sunday〉がかぶさる

jarinkochie