「恐怖と作品の虜となり、もう逃げられない」エイリアン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
恐怖と作品の虜となり、もう逃げられない
私なんぞが説明するまでもないSF映画の名作。
SFとホラーを融合させ、今後もこれを超える作品は現れないであろう、同ジャンルの金字塔。
リドリー・スコットにとっても本作と『ブレードランナー』でSF映画史に足跡を残した。
元々リドリーにSFやホラーのセンスがあったかはちょっと疑問。その後の作品を見ても、この御大はダイナミックで硬派な作品がスタイル。
やはり本作は、H・R・ギーガーによるエイリアンのデザイン、ラヴクラフトのクトゥルフ神話を彷彿させる世界観を創造したダン・オバノンの脚本によるものが大きい。
リドリー御大にとってたまたまの巡り合わせだったかもしれない。しかしそれを、見事自分のものにした。それも才だ。
『2』のジェームズ・キャメロン印のミリタリー・アクション、『3』のデヴィッド・フィンチャー印のサスペンス・スリラー、『4』のジャン=ピエール・ジュネ印のダーク・ファンタジー…。シリーズ化されてからは各監督の色が反映されているのが非常に面白い所。
エンタメ性は抜群に『2』だが、完成度やクオリティーは圧倒的に本作。
スペースジョッキーの美術は荘厳ですらある。エッグ、フェイスハガー、チェストバスターの不気味さ。未知の生命体の究極とも言えるゼノモーフのインパクト…。
ノストロモ号のセットも素晴らしく、我々ももう一人の乗組員となってそこにいる感覚に陥る。
『スター・ウォーズ』でSFX時代が到来して間もない1979年。全く古臭さを感じさせないSFX技術。
主題曲の作曲だけでも一ヶ月を費やしたというジェリー・ゴールドスミスの格調高い音楽。
そして、本作の見せ場である見せない演出。暗闇の中から、突然背後から…。嗚呼、ギーガーによるデザインをもっとよく見たいのに…! しかしそれがより好奇心と恐怖心を煽る。
各々が才気が炸裂し、相乗した。
実は私にとって、トラウマ映画の一つ。初めて見た時が中学生か小学生高学年の頃。
人間の胸を突き破って現れるチェストバスターに受けた衝撃…! 以後敬遠してしまった。暫く経ってから改めて見たら、作品の完成度に感嘆。
もう一つ。白い体液まみれのイアン・ホルムも…。
ちなみに私のトラウマ映画/トラウマシーンは、『スプライス』、『ロボコップ』でピーター・ウェラーが蜂の巣にされるシーン、そして本作である。
45年前。シガニー・ウィーヴァーの若い事! 今でも凛とした美しさ。今、何歳…?
ゼノモーフのモチーフが男性器である事は有名。
ラスト、エロチックな下着姿のリプリーに襲い掛かり、何かを連想させる。このおぞましさが、『エイリアン』の不気味さ、恐ろしさでもある。
将来、人類が本格的に宇宙に進出した時、こんな生物と恐怖に遭遇したら…? それをダイレクトに描き、100%絵空事ではない…かもしれない。
唯一生き残り、エイリアンを倒したリプリー。脱出シャトルのコールドスリープで宇宙を漂い、救助された時再び…!
それとはまた別の場所で、奴と遭遇したクルーたちが…。