「生き抜くために。」日本列島 いきものたちの物語 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
生き抜くために。
自然・動物ドキュメンタリーといえば、
とにかく英BBCの映像網が群を抜いているのだが、
日本にも、こんなにたくさんの著名な写真家たちがいて
素晴らしい作品が撮れるんじゃないの!を証明する作品。
BBCならばNHK(爆)というわけで^^;さすがの底力。
日本では最大規模の自然ドキュメンタリーだそうだ。
タイトルから、多くの動物が登場するのかと思いきや、
そうでもない。一家族の生態を春夏秋冬で追い続け、
その成長を記録している物語だった。
残酷だったり(まぁそれが当たり前なんだけど)
食う・食われるにピントを合わせる外国産とは違って
いかにも日本的といえば日本的な親子の物語が多い。
そう書くと、平和だねぇ~という具合に聞こえるが、
実はそれが一番大切で、知っておかねばならないこと、
彼らも人間と同じで、家族を守り生きている。
動物によって、巣立ちの時期も違えば、親の子育ても
違うのだが、命を投げ出しても我が子を守ろうとする
母親がいれば、子に噛みついて巣立たせる母親もいる。
母親を失えば一気に死に繋がる残酷な集団組織の謎や、
巣立ちのあとの生き別れの儀式もおさめられている。
様々な動物の習性や、食べ物をめぐる過酷な旅路、
自然の猛威に命を落とす光景など、目まぐるしく変わる
四季の風景と動物の生き様に、観ていて全く飽きない。
ナレーションが最初、うるさいかな。と危惧したが、
しつこく語るのでなく、その光景を説明するに留まり
これもまた日本的でいいかもしれないと思えた。
親切すぎるドラマめいたナレーションは却って喧しいし、
かといって何の説明もなく死んでしまうのも悲しすぎる。
人間の言葉を話さない動物たちの気持ちの在り処をどう
汲みとって映像に載せるか。ドキュメンタリーは難しい。
それにしても…。
動物には学ぶところがこんなにも大きい。
彼らは何を望んでいるのかが一目瞭然。食べ物が欲しい、
嫁や婿が欲しい(爆)、住み家が欲しい、身体を温めたい、
どれもこれも生きることに直結することばかり。
毎日の生活で狩りを学び、遊びを覚え、群れのルールや
ひとり立ちの準備を整える、まさに生活圏のオーソリティ。
甘えも泣きも許されない残酷な世界でただ必死に毎日の
食べ物を探しまわる猿の子供に、人肌の温もりをあげたい、
と考えるのは人間の(上から目線の)優しさである。
生きるに必死な世界では大人も子供も関係ない。そこは
ある意味、戦場のようなものなんだ…と認識させられる。
死んだら土に帰る。食うも食われるも運命の掟。
あ~私だったらもう、とっくに死んでいるに違いない…
子供たちが巣立つ際の精悍な顔つきがよかった。
人間も、あんな顔つきで我が子をひとり立ちさせたいもの。
(極寒の世界に耐える動物たちと撮影するカメラマンの忍耐力)