「順調に第4ステージに進む父親のユーモア」人生はビギナーズ きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
順調に第4ステージに進む父親のユーモア
父親ハルは自由に生きようと決心した。
花火が上がり、「ファーック!」と叫び、医者も仲間も呼んでパーティーで盛り上がる。
政治活動もスタートすれば宗教的随筆にも着手する。
こんなにも残りの時間で輝けるならぱ、余命告知を受けてロスタイムを知らされるのも悪くないと思えるね。
75歳の父親がゲイカミングしたことは、息子ユアン・マクレガーにとっては天地もひっくり返るほどの戸惑いだっただろう。
だけどね、
僕たちは老いていく自分の父親について今までどれほどの事を知っていただろうか、
(「LGBT 」はエピソードとしてはひとかけらに過ぎない)。
たくさん話してきただろうか、
根掘り葉掘り質問してきただろうか、
手をつないで一緒に散歩してきただろうか。
喧嘩はやったか?
きっと驚きの事実を僕たちは何にも知らない。
別れ間際になってさえ父の半生さえまともに知らなかった僕たちの不甲斐なさを、本作は教えてくれるんだ。
でも惨めではないクリストファー・プラマーの最期。
⇒「サウンドオブミュージック」以来の、背筋の伸びたトランプ大佐との50年ぶりの再会。子供の時以来の尊敬するおじ様に会えた感激に心がしびれた。
映画は、父親の死後の部屋の片付けと生前の回想が順ぐりに巡る。
不器用な父が息子を心配するセリフが所々に耳に残る。
すでに父親の記憶も曖昧になってきているところなどとても正直。
父親の死を悼んで新しい恋にも仕事にも乗り切れないそんなリアルなユアン・マクレガーに好感大だ。
そして思う、
父と自分の“満足できるやりきった別離“など誰にも持ち得ないだろうけれど、時間切れの悔しさは亡き人への愛の想いに比例するだろうことを。
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【関連する映画】
・「ブランク13」(斎藤工監督)で、葬儀の場で会葬者の口づてに父親を知るのも良いだろうが、せっかくなら、生きているのなら、父親に会いに行くべきだな。
・「オーケストラ!」で本人ユダヤ人出自のメラニー・ロランが根性ある役所を見せています。影を負ってどこか過去を秘めた表情は本作にも。
・「アーティスト」でパルムドッグ受賞のワンちゃんですか!?アーサーくん。
きりんさん、コメントありがとうございました。
そうですよね、やりきった別離はありえないですよね。私も両親を亡くしてますが、もっとああしとけば良かったとか考えてしまいますし。
でも、家族が亡くなっても、近しい人が亡くなっても、クリストファー・プラマーが亡くなっても自分の人生は続いていくわけですし、たまに思いだしながら自分は自分でしっかり生きていく事が大事なのかなと思いました。