ガール : インタビュー
香里奈が本音で語る“ガール”な生き方
日本版「セックス・アンド・ザ・シティ」と呼び声が高く、女性たちから熱い注目を浴びている映画「ガール」。香里奈、麻生久美子、吉瀬美智子、板谷由夏といった今をときめく女優陣が、女性の仕事、結婚、恋愛、友情、そして女性が抱える悩みの数々を表現。そこには、多くの女性が共感する、男性にとっては女性を理解するキーワードがギュッと詰まっている。29歳の主人公・由紀子を演じた香里奈も「女子の内面というか、考え方がすごくリアルに描かれていました」と、映画「ガール」の魅力と自分らしいガールな生き方について語る。(取材・文/新谷里映、写真/堀弥生)
映画の中心となる女性キャラクターは4人。広告代理店勤務でファッション大好きの悩み多き29歳の由紀子、上司という立場に悩む34歳のキャリアウーマン・聖子(麻生)、年下の新入社員に一目ぼれしてしまった34歳の容子(吉瀬)、36歳のシングルマザー・孝子(板谷)。いずれのキャラクターにも「共感する部分があった」という香里奈だが、由紀子と自分自身は「似ていない部分もあった」と意外な発言。現在28歳とキャラクターと年齢が近く、モデルとしてファッション業界に身を置くなど、由紀子との共通点は多そうだが、「似ていない」という言葉の裏には、演じる難しさがあったようだ。
「同世代としての悩みは分かるし、ファッションが好きなのも同じなんですけど、由紀子というキャラクターは何かひとつ問題を抱えているのでははく、30代手前の29歳の年齢や時期が抱える、漠然とした問題を抱えているキャラクターなんです。だから共感はするんだけれど、それをどう表現したらいいのか、実はすごく難しかったんですよね。微妙な心情の変化や内面の成長をどう見せようかと。でも、服装によってテンションが変わったりする由紀子の気持ちはよく分かります。私は、年齢なんて記号というか単なる数字でしかないと思っているタイプなので、由紀子が聖子さんたちにファッションが年齢相応じゃないと指摘を受けるシーンも、えっ、ダメなの?って。そこは同世代としてショックでしたから(笑)」と本音をこぼす。続けて、38歳のイタイ若作り女として登場する先輩の光山、通称“お光”(檀れい)もフォローする。「みんなと一緒じゃないところ、流されないところは好きですね。TPOをわきまえているし、自分がイタいって分かってやっているということは、ちゃんと考えての行動、ものすごく頭のいい女性だと思うんです。そういう女性って素敵だなって思います」
「このファションは何歳までOKなの?」。女性の誰もが常に疑問に思っている悩みに対して答えを与えてくれるのが由紀子や光山のキャラクターであり、ファッションリーダーとして女性から圧倒的支持のある香里奈だからこそ由紀子を演じられたとも言える。もちろん、この映画のなかでも相当な数の衣装を身にまとい、モデルで培った経験を存分に発揮し、多くの女性を「こんなふうにお洒落を楽しみたい」と元気にさせる。その衣装の数は23着。決定するまでの試着を合わせると、50着以上もの衣装を試し、「いままでで一番衣装合わせが大変でした(笑)」と、話はガールの裏舞台へ。大変だったのは、衣装を選ぶこともさることながら、深川監督をはじめとする男性スタッフへの女性ファッションの説明だったということも、今作ならではのエピソードだ。
「由紀子はいろいろなジャンルが好きで、いろいろなカワイイものを身に付けたいタイプ。なので、男性スタッフの方々に、ファッションのジャンルについて説明することから始まりました。スタイリストさんが集めてくれた資料をもとにして、これがマリン系ですよ、これはプレッピーって言うんですよっていう具合に(笑)」。ファッションに精通した香里奈、40万部を超える奥田英朗の原作、「60歳のラブレター」「神様のカルテ」など人間ドラマを描くことに長けた深川栄洋監督の手腕により、今作は新しい女性のバイブルとして誕生した。また、「100回生まれ変わったって、私は100回とも女がいい」というセリフをはじめ、共感必至の言葉、ガール(女性)の心に響くセリフがちりばめられているのも魅力のひとつ。香里奈の心に深く刻まれたのは「人生の選択肢が増えて、かえって不自由になった。何を選んでも、違う道があったのではと思ってしまう」というナレーションの一節だった。
>>次のページへ続く