もうひとりのシェイクスピアのレビュー・感想・評価
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「ロミオとジュリエット」と「ジュリエットとロミオ」
映画「もうひとりのシェイクスピア」(ローランド・エメリッヒ監督)から。
「戯曲37曲 ソネット154篇 物語詩 数編
それらは全て人類と英語における究極の表現として、知られる。
それなのに、それなのに、
シャイクスピアの自筆の原稿はいかなるものであれ、見つかっていない。
400年もの間、何ひとつない。我らのシェイクスピアは謎の存在だ。実体がない」
この台詞で始まる物語は、シェイクスビア別人説を私に信じ込ませた。
日本でも「織田信長」や「上杉謙信」の女性説などがあるように、
まったく否定できないところに、この推理の面白さがある。
実は、原題の「Anonymous」は「匿名の」の意。
(書物では)作者不明の、(歌では)読み人知らずの、という使われ方をする。
しかし「作者不明」よりも、仮説を立てて立証していく方が、ワクワクするし、
真実味が増すのは、言うまでもない。
日本的に言えば「影武者」の要素が強いかもしれない。
メモしていて気付いたことだが、1か所だけ首を捻るシーンがあった。
オックスフォード伯は「(ロミオとジュリエット) ロマンス悲劇だ、
『弱強五歩格』で」と作品名を告げたにもかかわらず、
影武者の劇作家は「ジュリエットとロミオ」と作品名を間違える。
単なる和訳の間違いなのか、意識的に間違えたのか、気になっている。
こうなったら、もう一度、原語で確かめるしかないかなぁ。(汗)
P.S.(ラストシーンの台詞を・・)
「奥さま、あなたやご一族や、この私やエリザベス女王でさえ、
ご主人と同じ時代に生きることができて光栄です。
見事な言葉が書かれたその時代に。
石ではなく、詩で形づくられた記念碑は、永遠に人々の記憶に残る。
言葉は息から生まれる、息が命から生まれる限り」
大胆な推理がおもしろい。
ウィリアム・シェイクスピアが、実は別人だった?!
今に至るも、自筆原稿や日記などが見つかっていない。そのため、推測される別人説。
別人として有力視とされるのが、哲学者フランシス・ベーコンや第17代オックスフォード伯エドワードなど。
その一人、オックスフォード伯エドワードに焦点を当てた作品だ。
監督は、ローランド・エメリッヒ。
「インディペンデンス・デイ」の監督だけれど、以外にも、良かった。
重厚な造りの邸宅やお城。
衣装。
文字の美しさ。
何気なく使われる小物。
そのどれもが、素晴らしい。
それを見るだけでも、嬉しくなっちゃう。
法律や古典の知識が無いと書けない戯曲など、学歴のないシェイクスピアが、どうして書けたのだろう。
シェイクスピア後の売れっ子作家となったベンジャミン・ジョンソンを、使い走りに使ってみたり。
当時の政治状況やエリザベス1世との愛憎を交えた大胆な推理は、おもしろかった。
シェイクスピアが有名になってから獲得した紋章には、「NON SANZ DROICT」と書かれている。
意味は、「権利なかざるべし」だそうな。
それにしても、リス・エヴァンスは、上手な役者さんですね。
いけすかない意地の悪い役もこなせば、こんな悩める役もサラッとこなしてしまう。
さすがです。
サウサンプトン伯ヘンリーを演じたゼイビア・サミュエル。
若き日のオックスフォード伯を演じたジェイミー・キャンベル・バウアー。
この二人がそっくりに見えて、困った。
二人ともイケメンだよね~。
デビッド・シューリス演じるセシルと、息子のロバートと、前出の3人をしっかり覚えておくと、ストーリーがよくわかる。
ベンジャミン・ジョンソンは、お顔に特徴があるので、見分けがつく。
William Shakespeare。
shakeは、揺れる。震動する という意味。
spearは、spear carrie で、チョイ役、エキストラ という意味。
な~んて、考えると余計に面白い。
シェイクスピアの本当の姿がわかる
シェイクスピアが謎の人物であることは周知の事実だ。
ウィリアム シェイクスピアは、英文学の最高峰、英国を代表する劇作家で詩人。 記録によると、1564年に生まれて1616年に亡くなったことになっている。出身はイングランド地方ストラトフィールド アポン エイボン。父は町長に選出されたこともある皮手袋商人、母は裕福な家庭出身で、3番目の子供として生まれ、ストラトフィールドにグラマースクールで学んだ。 その後、高等教育を受けたかどうか、全くわかっていない。18歳で26歳の女性と結婚したあと どんな職業についていたか、など何の記録もない。28歳くらいでロンドンに姿を現し 劇場で役者として演じたり、脚本を書くようになった記録がある。
この16世紀という時代には一握りの人間しか物を書くことが出来なかった。田舎で生まれ育ち、結婚し、高等教育を受けたかどうかわからない人間が 人間への観察と人生に深い洞察をもった膨大な量の文学作品を書くことが出来るだろうか。ヨーロッパ各地の気候や風土にも詳しく、外国を舞台に悲劇や喜劇を書き残し、舞台でも成功させた。仮に天才だったにせよ、たった一人でできる仕事量だったろうか。シェイクスピアは生前、自作の信頼できる出版を ひとつとして刊行しなかった。シェイクスピアは、本当に数々の作品を書き残した人物と 同じ人物だろうか。
この問いの一つの答えを映画監督、ローランド エメリッチが映画で描いてくれた。
エリザベス一世の時代。スコットランド、イングランド、アイルランド全土を エリザベス女王が治めていて、政治的に安定していた時期だ。エリザベスは芸術を愛し、詩や物語を愛したが とりわけ劇に興味を持っていた。ロンドンではエリザベス朝演劇の興隆にともなって劇場活動が盛んになった。オックスフォードの最も古い歴史を持つ貴族、エドワード デ べラ(伯爵1550-1604)は 幼い時から自分で脚本を書いて芝居を作る才能に恵まれていたことから エリザベスは 彼を子供のときから寵愛した。そして親が亡くなると、エドワード デ べラはエリザベスの宮廷に迎え入れられ、秘書官のウィリアム セシルによって、ラテン語、フランス語、ダンス、乗馬、射撃などのスポーツにいたるまで王室教育を受け 世界各国を旅行し軍隊経験もして育った。美しい少年から立派な青年に成長したエドワードが 文学だけでなく武道にもスポーツにも才能をみせるに伴い エリザベスは 彼をはるかに年下でありながら 男として愛情を持つに至る。
エリザベス女王の秘書官として政権を補佐をしてきたウィリアム セシルはエリザベスの義母の結婚相手でもあったが 詩や文学を学問の中では一番卑俗なものととらえ、エドワードの文学的才能を嫌っていた。セシルはエリザベスが子供のときから その教育係であったが、エリザベスが政権を継いでからは 政務全てにわたる補佐官として絶大な影響力をもち、息子ロバート セシルにも同じようにエリザベスに仕えさせていた。ロバート セシルは脊椎湾曲症の障害を持っていて、エリザベスの秘書官として終生を忠実に仕えている。
エリザベスとエドワードとの熱愛関係が 目に余るようになると、セシル父子は 政治的な計略を仕掛けて エドワードを謀反人として隔離し、女王から遠ざける。しかし、実はエリザベスは エドワードの子供を妊娠していて、秘密裏に男子を出産していたのだった。
エドワードは セシルの計略どおりに セシルの娘と結婚を強いられ、セシルの屋敷に住むことを強要される。愛人を奪われ、望みを失い、エドワードはセシルの屋敷で、書斎に篭ってばかりいる生活を送るようになった。
一方、街では演劇が盛んで 劇場が次々と出来て、市民も貴族もみな芝居を楽しんでいた。ベン ジョンソンという劇作家が 芝居の中で政治批判をした罪で逮捕された。罰を受ける寸手のところで エドワード デ べラが救いの手を差し出す。ベン ジョンソンを自分の書斎に招いて、エドワードは自分が書いた戯曲を ベンの名前で発表して上演して欲しいと頼み込む。セシルも妻も エドワードが戯曲を書くことを 禁じていたが、エドワードは書くことを止めることが出来なかったのだった。渡された芝居はどれも上演されて 市民の間で大好評だった。エドワードも芝居を見に来て、自分が書いて 演じられている芝居を観て楽しんでいた。以来、べンは定期的に エドワードの屋敷に行き、脚本を受け取り、それを上演するようになっていた。
劇場でシェイクスピアの名が もてはやされるようになって、観客達はシェイクスピアを見たがった。そこで大人気を良いことに 俳優の一人が自分がウィリアム シェイクスピアだと名乗りを上げた。この役者は ろくに文字も書けない男だった。これにはエドワードもベンも驚いたが シェイクスピアがこの役者と結びついて 人々の人気者になっていくことをとめることはできなかった。
エッセックスのリチャード デべラクス伯爵が セシルの命令によって謀反人として逮捕された。そのとき、一緒に逮捕された伯爵の親友が じつはエドワードとエリザベス女王との間に生まれて 密かに育てられていた息子だった とセシルから知らされて、エドワードは慟哭する。すぐに、エリザベス女王に膝をついて、息子の恩赦を乞う。女王は怒り狂う。しかし女王は、エドワードとの愛情の結晶だった息子に 恩赦を与える。そのかわり、エドワードの名を消し去るように、どんな記録からも消して、追放する と宣言する。
エドワードと息子とは 初めて出会い 親子として、しっかり抱きあう。
こうしてエドワードは 晩年、宮殿を追われ、貧しい暮らしの中で執筆を続け、死んでいった。死の直前、ベン ジョンソンが呼ばれ すべての著作がベンに手渡される。セシルはエドワードが書いたものをすべて葬り去ろうと火を放つが、ベンの機転で、著作の数々は守られ 後世に伝えられていく。
というおはなし。
2011年 トロント国際映画祭の開会式で初めて上映された新作映画。
1550年から1604年までのロンドンを背景に、VFX CGテクニックを使って シェイクスピアの謎に迫ったフィクションミステリーだ。
シェイクスピアは 数々の作品を書いた人物ではなく、実際の作者はオックスフォードのエドワード デ べラ伯爵ではないか、という説は 昔から根強くあった。この伯爵が 文芸にすぐれた知識人で、エリザベスと親しく、宮廷で音楽会や芝居を催して 女王や貴族達を喜ばせたことは事実とされていて、謎の多い人物でもある。たしかにシェイクスピアの作品をみれば エドワード伯爵のように、特別な英才教育を受け、ヨーロッパ各地を自由に旅行するだけの資格と資金を持った人間でないと書けなかっただろうと思われる。
「ヘンリー4世」、「リチャード3世」、「ヴェニスの商人」、「ロメオとジュリエット」、「リア王」、「ジュリアス シーザー」、「アントニオとクレオパトラ」、「真夏の夜の夢」、「マクベス」、「お気に召すまま」、「じゃじゃうまならし」、「テンペスト」などなど。美しいソネットの数々、、、。
多様で、膨大な著作の数々。シェイクスピアが誰なのか、、、一人ではなく、複数の作者が居るのではないか、エドワードではないか、フランシス ベーコンか、クリストファー マーロウかも知れない、、、いまはもう誰にもわからない。
しかし、彼の作品が ほかの誰にも書けなかった 素晴らしいものであることは、誰にも否定できない。
バネッサ レッドグレープが演じる、エリザベス女王がすごい迫力だ。いまだに健在でうれしい。
エドワード デ べラを演じた ライ インファンズと、若い頃のエドワードのジェイミー キャンベルが とても魅力的。素晴らしい演技をみせてくれた。
エリザベス一世の時代、セシルとの関係など、また諸外国との関係など、いろいろ出てきて、英国史のおさらいで勉強になる。当時の豪華な衣装や 儀式などの時代背景や ロンドンの市民の姿なども とてもよくわかって興味深い。
とても良い映画だ。
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