「フィクションとしてのリアリティ」もうひとりのシェイクスピア arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
フィクションとしてのリアリティ
特に選んだ訳でもないが『ブーリン家の姉妹』の次に同じくチューダー朝を舞台にした作品を観ることになる不思議。
今作の舞台はアン・ブーリンとヘンリー八世の娘エリザベス一世の治世。
今もまことしやかに語られるシェークスピア別人説に基づくフィクション。
シェークスピア別人説については極論としてあまり真面目に取り上げられることもないようだが、これは実在した登場人物を使い、結果としての史実を見事にフィクションとして融合させた秀作だと思う。
ストーリーとして良く出来ていると共に、“あったかもしれない事実”として、とても説得力がある。
物語の中心人物は“もうひとりのシェークスピア”であるオックスフォード伯エドワードだが、彼を取り巻く登場人物、エリザベス一世、セシル親子、ベンジャミン・ジョンソン、ウィル・シェークスピア、サウサンプトン伯など皆キャラクターが立っていて、この時代の群像劇としても見事に成立している。
監督はローランド・エメリッヒ。
この人は、大味な大作映画の人というイメージで、まったく興味もなかったのだが、今作では、監督も“化ける“ということを痛感させられた。きっと今までは、いい企画と脚本に巡り合えなかっただけだったんだろう。
舞台に始まり舞台に終わる構成も、ストーリーにピッタリだった。
監督も俳優も、食わず嫌いは禁物です。
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