ペントハウス : インタビュー
ベン・スティラー、初挑戦のジャンルで得たものとは?
「ペントハウス」は、「オーシャンズ」シリーズを彷彿(ほうふつ)とさせるクライム映画だが、犯罪に挑むのがズブの素人集団というところが新鮮だ。高級マンションの使用人たちは、悪徳住人から搾取された金を取り戻すべく、壮大な強奪計画を実行に移すことになる。そのリーダーとなる管理マネージャーを演じるのが、ベン・スティラーだ。コメディからシリアスまで、どんなジャンルも得意とするばかりか、脚本家や監督としても活躍する。今作では、実直でお人よしの主人公をハートたっぷりに演じたスティラーに直撃した。(取材・文/小西未来)
——この映画に出演を決めた理由はなんですか?
「『ペントハウス』のアイデアがとても気に入ったんだ。僕は、これまでいわゆる強盗映画に出たことがない。僕自身、大好きな映画ジャンルで、このジャンルの映画ばかり見て育ったというのにおかしな話だよ。
『ペントハウス』の設定は、僕が子どもの時に見た映画を思い起こさせるんだ。たとえば、『ブルー・カラー 怒りのはみだし労働者ども』とか。もちろん、『ペントハウス』のほうがずっと軽いノリだけど、ひどい目にあわされた男たちが仕返しをするという設定は共通している。
それに、エディ(・マーフィ)、ブレット(・ラトナー監督)、ブライアン(・グレイザー)と仕事ができるというのも魅力だった。ブライアンがプロデュースする映画に出るのは、実はこれが初めてなので、とても興奮したよ」
——この映画で描かれている貧富の差という題材は、ものすごくタイムリーですよね。
「確かに今の世の中は、不満に満ちている。こうなったのは当然の流れだと思う。ウォール街での抗議デモは、その象徴。社会の現状、とくに経済状況に、多くの人は不満を感じていて、それがデモにつながった。
ただ、この映画を引き受けるにあたり、そういう要素は考慮に入れなかった。これは単なる映画だし、それもコメディ映画だしね。ただ、ストーリーは優れていて、リアリティがある。もちろん、映画的なフィクションではあるんだけれど、土台の部分にはリアリティがきちんとある。笑いも取ってつけたものではなくて、それぞれの登場人物が置かれた状況から自然に生まれてくるようになっている。
だから僕は、この映画に出演する際に『どうやって笑いを取ってやろうか?』なんて考える必要がなかった。僕としては、ジョシュという男になりきろうとしただけ。それに、エディ・マーフィが出ているから、僕の負担はずっと軽い(笑)」
——(笑)。
「笑いはすべてエディに任せて、僕は真面目に演技をしただけ。だって、エディより面白いことなんてどう頑張ったって無理だからね」