「『007』誕生50周年の今年に相応しいシリアスななかに、惚けたお笑いが絶妙に融合していました。」ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
『007』誕生50周年の今年に相応しいシリアスななかに、惚けたお笑いが絶妙に融合していました。
いや~試写会で大爆笑してきましたよ~。
アトキンソンの『Mr.ビーン』シリーズは、余りにナンセンス過ぎて白けました。今回はシリアスなところとオトボケのメリハリが絶妙で思わず笑ってしまったのです。彼もいい年になって、コメディアンとして脂がのってきたという感じですね。
『007』誕生50周年の今年。タイトルクレジットからして、本家を真面目にパクっています。本編各シーンでも、『007』シリーズのどこかで見たことのあるリスペクトされたシーンが続々出てきます。そのためアクションも、おふざけばかりでなく決めるところはきちんと決めています。超高速走行の車いすとパトカーのカーチェイスシーンや、ラストの高所で静止したロープウェイでの格闘シーンなど、結構真面目に見せ場はありましたね。それと本家並みに世界各地でロケをやっていて、パクリ作品にしてはお金かかっているなぁと思いました。
『007』シリーズのファンも、本作なら許してもらえるでしょう。なおエンドロール中におまけ映像があります。最後までお席を立たれないようお願いします。
冒頭のシーンから傑作です。
ヘマをしたイングリッシュは、自信を失ってチベットでカンフー修行に打ち込む日々を過ごしていました。ひげ面のイングリッシュはなかなか壮観。カンフーの型もバシっと決まっていて、最初はアトキンソンとは気がつかず、どこかの二枚目俳優に見えてほどです。だけどそれだけで終わるはずはありません。修行の目的は、弱くて柔らかいところを固く鍛えるのだったというナレーションのあとで、イングリッシュが必死で局部を鍛える映像となって、笑ってしまいました、お約束ですねぇ。でも急所打ちにも平然と耐えられるところまで鍛えられたイングリッシュのチン力は、ラストシーンの重要な伏線だったのです。意外な効力を発揮して、敵からの攻撃をかわしてしまうので。馬鹿にはできませんよ。
スパイに復帰したイングリッシュにはお馴染みの「ボンドカー」とスパイグッズが与えられます。この「ボンドカー」エンジンV8のリアルでものすごいモンスターカーなんです。ただ音声認識コンピューター搭載が徒になって、勝手に動くことも。その度にイングリッシュを悩ますことも多々ありました。
スパイグッズも本家にひけをとらない装備です。しかし8年ぶりに復帰したイングリッシュには、何番の装備がどんな機能を持っているのか覚えきれません。スイスで敵陣深く潜入した時、選択を間違えて、大音量で救助信号を上げてしまうところには、笑ってしまいました。
『007』シリーズには、ボンドガールがつきものですが、今回はそれらしき存在はありませんでした。そのかわりイングリッシュの協力者となる心理学者ケイトがなんとイングリッシュに恋してしまうのです。ラストには、ケイトがキスしてイングリッシュが生き返るというおまけ付き。こんなお伽話な展開は、『Mr.ビーン』では考えられません。顔面の表情分析のプロであるケイトが、告白を受けて驚くイングリッシュの表情を本人を前にして冷静に解説して、口説くところが面白かったです。
さてストーリーは、本家よろしくボルテックスの3人の正体と3人が持つ特殊兵器に繋がる鍵の争奪戦になっていきます。その中で明らかになるのは、モザンビークでのイングリッシュの失態。なんてことない、やっぱり任務をさぼっていたではありませんか。でも今度のアトキンソンはただのぼんくらではありません。モザンビークでの大統領暗殺の要所の記憶を頼りに、次第にボルテックスの陰謀に近づいていきます。モザンビークでは警護のSPが突如暗殺してしまったのです。ボルテックスの陰謀とはどうやら、何らかの方法で、特定の人物を洗脳して操りヒットマンに変えてしまうという核心にイングリッシュは近づいていきます。
そのなかで、どうやら3人目はM17にいることが分かってきます。その人物を前にして、助手のタッカーがこいつだと名指ししても、イングリッシュは同僚を尊敬していてみみを貸そうとしません。このやりとりはなかなか絶妙で、信じて貰えないタッカーが可哀想になりました。
あとは予想通り、イングリッシュは裏切られてピンチに。
果たしてイングリッシュは、スイスで行われる英中首脳会談を無事に終わられることができるかどうか、圧巻のラストシーンを御期待ください。
ところで、イングリッシュを付け狙う婆さんスパイはなかなか手強くて、神出鬼没。英国王室にも侵入して、イングリッシュを付け狙う婆さんは、とっさに女王と入れ替わってしまいます。婆さんと勘違いして、顔を見ずに女王をヘッドロックしてしまうイングリッシュのなんとドジで恐い物知らずなんでしょう。その辺の愚かさは、『Mr.ビーン』と変わっていませんでした。
でも、ケイトとラブラブになって本作は当人にとって良かったのでは?