セカンドバージン : インタビュー
初めての映画の現場を終えた長谷川に、浮ついた気持ちは微塵もない。鈴木と深田恭子という、日本映画界で活躍を続ける女優ふたりを間近に見て、得るものも大きかったようだ。「言葉で表現するのは難しいのですが、俳優として人に対する接し方、役に対する取り組み方といった細かいところで『自分もこうありたいな』と思って見ていましたね」
そして、自らに対してはどこまでも貪欲な姿勢を貫こうとしている。いま、喉から手が出るほど欲しているものは「眠らなくてもいい体力。どんなときでも疲れを感じない強靭(きょうじん)な力が欲しいですね」と真摯(しんし)な眼差しで語る。さらに、「どうしたって過酷なスケジュールになってくると、ふだんはアイデアが出てきたりするのに、肉体的に言うことをきいてくれないことってありますよね。今だってないわけじゃないんですが、精神的にも肉体的にも体力が一番ほしいです」と明かす。
長谷川は、ドラマ版での役づくりの際、行と似たキャリアをもつ元官僚たちの話を聞いたという。「取材をさせていただいたとき、『昔の官僚は国のビジョンを考えている人が多かった』とおっしゃっていたんです。もちろん公務員ではあるわけですが、今は必ずしもそういう人ばかりではなくなってしまったと。上司として部下の仕事を見ていれば、その人の志が手に取るように分かる。今だって『日本のために何かしようとしている』人がいることも事実だと。僕も、役者としてそういう人間でありたいなと思いました。経済のために何かができるわけではないけれど、文化のレベルをもっと上げていきたい。日本映画界の端っこでもいいですから、自分も世の中に貢献できるようになりたいなと強く感じています」
日本映画界の名優・中井貴一が以前、「映画俳優にとってデビュー作というのは本当に大切なんだ」と熱く訴えていたことがあった。長谷川にとっても、銀幕デビュー作「セカンドバージン」は今後の俳優人生において重要な位置づけになるはずで、「ドラマ版も映画も僕にとってターニングポイントになった作品であることには間違いありません。このお仕事のおかげでいろんなお仕事が入ってきましたし、いろいろなことができるようになった。本当に感謝している作品です」。今後2作目、3作目とキャリアを積み重ねていく過程で、長谷川の殊勝すぎるくらいに殊勝な姿勢は、日本映画界にとって大きな財産となるはずだ。