「不幸の連鎖」麒麟の翼 劇場版・新参者 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
不幸の連鎖
犯人は青柳武明(中井貴一)の部下である小竹(鶴見辰吾)だ!と推測したのが全て外れてしまった。しかし労災隠しは小竹の指示だよな・・・明らかにされなかったけど。
東野圭吾の作品は当たり外れがあるけど、これは“当たり”の方だと思う。当たりの要因としては社会問題を大きく取り上げている部分。ここでは容疑者である八島(三浦貴大・三浦友和と百恵の息子)が派遣先の工場において1週間休む怪我をしたことが発端になり、効率のために安全装置を切っていたことと労災申請しなかったことが取り上げられている。体裁のための労災隠しと、派遣切りだ。それを訴えることもできず、左腕にしびれが残ったまま、失業状態が続いた八島。東北の養護施設で育ち、そこで一緒だった中原香織(新垣)が同棲していたのだが、彼の無実を信じていた香織。しかし、被疑者となり、意識不明の重体の八島。警察では被疑者をそのまま送検しようと考えていたのだが、加賀(安部)だけは腑に落ちなかった。
青柳の家族は被害者であるにも拘わらず、労災隠しという問題でマスコミのバッシングを受けたりして、長女の遙香(竹富聖花)が自殺未遂をする。一方の長男・悠人(松坂桃李)は何かを隠しているようで、そこを加賀が追及する。3年前に水泳を止めたことを父に咎められた事実。そして、そこには中学校プールでの水難事故があったところまで突き止める。青柳が死ぬ直前に麒麟像まで歩いていった事実と、日本橋七福神巡りなど家族も知らなかったこと。謎がいっぱいの展開だったが、水難事故の被害者・吉永(菅田将暉)が未だに寝たきりの状態で、彼の母親がしていたお参りを青柳が行っていたことに結びつく・・・
水泳部の3年生が下級生だった吉永の失敗を責めて深夜のプールで特訓と称するイジメ。その事故を顧問・糸川(劇団ひとり)が隠蔽。さらに、父親の事件と関係があるんじゃないかと悠人が当時の3年生に呼びかけると、そのうちの一人杉野(山崎賢人)が地下鉄ホームで飛び降り自殺・・・寸でのところを松宮(溝端)が助けた。実は、杉野が青柳を刺していたことが発覚するというストーリー。
一つの事件・・・というより、事故により、色んな人が不幸になってしまう。真実を語る勇気さえあれば、被害者は吉永だけで済んだはず。そうした事件の謎解きよりも、青柳の息子を思いやる切なさが伝わってくる。まともに向かい合って語ることなく、息子のブログに書かれた千羽鶴を父親が代わりに引き継いだ事実。その時は息子のせいで吉永が障害者になったとは思わず、息子がひたすら回復を願っていたことを引き継いだだけだ。そしてそれを杉野に確かめたとき、杉野は自分のことも発覚すると恐れ、刺したまで。その事件直後、八島が青柳の所持品を奪った。この時の八島の心境を考えると、腑に落ちないのだが、そこまでするほど金に困ってたということか・・・