明日の記憶のレビュー・感想・評価
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弱っているときこそ周囲からの見られ方が分かる
冒頭、アルツハイマー病が進行した佐伯と、その妻の枝実子が、美しい夕焼けの中で思い出の写真を眺めるシーンから、既に名作の雰囲気が漂っていた。辛いだけではない、温かく切ない話なのが、このワンシーンから予見させる。そして期待通り、最後まで惹きつける展開が続く。
まだ働き盛りで、しかも大プロジェクトのリーダーを務める人間が、自分がアルツハイマーと分かったときの衝撃は想像を絶するものだっただろう。アルツハイマーが進行していく恐怖、そしてそれを決して認めなくない気持ち、患者の尊厳などを、佐伯の視点から描けていたのが秀逸だった。
佐伯本人が周囲から愛されている人間だということも、今作が魅力的な理由の一つだろう。結婚式の祝辞を任されたり、退職時に部下から花束と自分達の写真(名前入りなのが良い)を渡されたり、妻が献身的にサポートしてくれたりするのは、全て彼が周囲から愛されているがゆえの出来事だ。周囲の思いやりが泣けるシーンだった。弱っているときや権力を持っていないときにこそ、周囲がその人を本当はどう見ているかが分かるのだ。
今作はキャストも豪華なのが見どころだ。渡辺謙とその妻役の樋口可南子はもちろんのこと、要所要所で香川照之や遠藤憲一などがその存在感を放っていた。
メッセージに嘘がない作品
2006年
当時社会問題となったアルツハイマー病を題材としている作品。
この誰にでも起きる可能性のある病気は、病気を知った自分自身の苦悩よりも当人の家族に大きな影響を与える。
当人にとって知らないということは「無」なので何も感じることはないが、あるはずの記憶が失われてゆくのを実感するのは家族で、その家族の苦悩は耐え難いものと思われる。
このような病気を題材にした作品は非常にたくさん送り出された。
この病気と様々なケースを掛け合わせることが様々な作品ができることが理由だ。
治療できないのでハッピーエンドにはなりにくく、病気をオチにすればミステリーにも成り得るし、若いカップルに仕掛ければ恋愛の最大の敵を作ることができるし、最近では殺し屋に仕掛ける作品まで登場した。
さて、
この作品はそのなかでもオーソドックスの部類 仕事と家族と娘の結婚 幸せの絶頂期の中で主人公に起きた病気
これだけを基本形にすることでこの病気が周囲に与える影響を人々に知って欲しいという思いが見られる。
タイトル「明日の記憶」とは、明日になれば今日の記憶は残っていないかもしれないという意味があるように思われる。
主人公に最初起きた人の名前や映画の名前が思い出せないという誰にでもよくあることに、この病気の恐ろしさと共感と「検査に行こう」という気持ちを誘因させている。おそらくこれが最大のメッセージだろう。実際にこの病気になった家族は、このような先品は見ないと思うからだ。
若年性であれば進行が速いというのを主人公の仕事上の些細なミスによって表現している。
この作品には余計な伏線を極力少なくして、病気になったこととその家族の献身、そして必ず起きる葛藤と感情の爆発を入れながら、家族の選択肢を示している。
冒頭のシーン 斜陽 西日 主人公の最後の記憶を暗示しているようだ。
孫の誕生と成長をコルクボードに張り付ける妻。すでに妻さえわからない主人公 その場所は妻が友人からもらったパンフレットの中の「ホーム」だ。
家族は、当人が何をどこまで覚えているのかを注視しながら探ることが日課になるのだろう。成長した孫娘の写真や娘の結婚式、そして家族写真などとコルクボードを買ってきた妻。日常生活は介護士たちに任せるしかなくなっている。
コルクボードを見ても反応を示さない主人公。そして「えみこ」と彫られたカップにも、もう関心を示すことがなくなっている。
作品の最後に、勝手に外に出掛けて幻想の先生と一緒に焼いたカップ。そのために出掛けたのに、帰り道で妻に合うが、それが誰だかわからない。ただ「想い出のカップ」だけを握りしめていた。そのカップさえも記憶から削除されてしまう悲しさ。
妻は気丈にも夫と一緒に西日を見続けている。できることはもうないようだ。ただ静かに夫と一緒にいることだけだ。
多くの家族がこのようなことになる。それを知った上で検査に行ってくださいと言うのがこの作品のメッセージだと思った。
社会問題化しているこの病気を現実の視点でまっすぐに描いた作品。
作中主人公が部下に対して熱く語っていることこそ、この作品を世の中の人に知って欲しいという思いだと思った。
泣きたくなる気持ち
渡辺謙扮する広告代理店の第2営業部長佐伯雅行は49歳で若年性アルツハイマー病に侵されていた。雑談の中でもディカプリオの名前も出て来なくなっていたし、首都高の出口も行き過ぎていた。
世の中様々な病気があるもののアルツハイマーはなりたくない病のひとつだね。恥をかいている様だし回りに迷惑かけるもんな。
これは劇場の予告編で見た覚えがあるね。アルツハイマーと宣告されるのはたまらんだろう。癌と宣告されるのもかなわんが、会社での立場は木っ端みじんだ。まさに泣きたくなる気持ちだろうね。
明日、アルツハイマーと診断されるかもしれないとすると恐い話だ。家の者も大変になることだろうね。やっぱり渡辺謙はいいね。
若年性アルツハイマー
主人公(渡辺謙)はもうじき50歳、広告代理店の部長でやり手だ。
調子が悪いので病院に行くが、若年性アルツハイマーと診断される。
妻(樋口可南子)に励まされながら生活を続けるが、娘の結婚を機に退職し、闘病生活に入る。
アルツハイマーとがん、祈るしかないかも。
【”こんな俺でごめんな・・”49歳にして若年性アルツハイマーに罹患したバリバリの営業部長の苦悩と、彼を懸命に支える同僚や、献身的な妻の姿に涙溢れる作品である。】
■平凡だが幸せな暮らしを送っていたバリバリの営業部長のサラリーマン・佐伯雅行(渡辺謙)。
ある日突然、彼は物忘れが酷くなり、若年性アルツハイマー病にと診断される。
こぼれ落ちる記憶をつなぎ止めようと苦慮し、病と戦い始める雅行。
妻・枝実子(樋口可南子)は、夫と共に病と戦い、最後まで側に居続けようと心に決める。
◆感想
・バリバリの営業部長のサラリーマン・佐伯雅行の境遇が自分に似ていて、驚いた。
ー 勿論、私は若年性アルツハイマー型認知症でないが、聡明なる妻からは私の書斎の扉に大きな文字で【出掛ける時は、エアコンを切る事!】と張られている。
最近、家を出る際に”鍵を掛けたか??”と思い、もう一度自宅に戻り確認するオイラ、大丈夫か・・。-
■今作では、バリバリの営業部長のサラリーマン・佐伯雅行を演じる渡辺謙が、自身の記憶が無くなって行く過程が観ていて辛い。
そして、彼は暇所に異動し、同期と思われる役員と思われる男(遠藤憲一)に辞表を出し、それまでの営業部の仲間達の励ましを受けつつ僅か50歳で、会社を去るのである。
部下だった人達から送られるその人の名が大きく記された色紙の数々。
・娘(吹石一恵)の結婚式で草稿を忘れつつ、妻に助け得られ、立派な挨拶をするシーンは沁みる。
・だが、その後、彼はやることが無く、聡明な妻は夫の病状を察し、働きに出て家計を支える姿。俯きながら、遣る瀬無い想いを抱える佐伯雅行の背中から漂う寂しさと無念の思い。
<近年、アルツハイマー型認知症をテーマにした映画が多数公開されている。
高齢化が進む世界の状況を反映したためであろう。
今作は、その流れを一早く察し、映画化した作品である。
渡辺謙と樋口加奈子の演技は素晴らしく、涙した作品である。
部長まで昇格し、これから・・、と思っていた佐伯の無念と、彼を支える且つての仲間と妻の姿が沁みる作品である。>
■私は、無宗教であるが、もし神様がいるならば、あらゆる癌と、アルツハイマー型認知症に効く薬を頑張って開発してくれて居る方々に、力を注いでくれないだろうか、と思うのである。
受け入れ難い事実と自然にやってくる現象!!
と向き合いながら、懸命に生きていく渡辺謙さん演じる佐伯と陰ながら支えていく妻
枝実子に家族の愛がありました。
娘の梨恵の結婚式で、緊張と焦りのなか
祝辞を述べた佐伯の手に触れた妻に
見守っていきたい気持ちで見ていました。
若年性アルツハイマー病と診断されて
窮地に立たされる会社員の男性!
自分が社会に取り残される!
幼い子どものように泣く男性はこれからの
現実を表していました。
会社の同僚の香川照之さんの
また、一緒に行こうよとの励ましの言葉が
優しい響きでした。
大滝秀治さんの器は作った人間像が器に
出ると言う台詞が心に残りました。
前半は圧倒的迫力。
記憶。昨日までの自分と今日の自分と、これから未来へ続く自分をつなぐもの。自分が自分である証。それが壊れていく…。
余命宣告をされて最後まで死の恐怖と闘うのと、記憶や時間間隔があいまいになって死んでいくのと、どちらが怖いのだろうかと考えたことがある。
けれど、この映画を観て、昨日まで当たり前だった風景や様々なものが、突然異次元に変わってしまう、なんて怖いのだろうと思った。
そんな疑似体験をさせられる前半はものすごい迫力で映画に惹きつけられた。
でも、後半。両俳優の素晴らしい演技。
でも、実際に認知症を抱えた方の様子を見聞きすると、ちょっと綺麗にまとまってしまったかなとも思う。
妻の名前を覚えていても、目の前の実物の妻が妻であることがわからないという過程を経る方もいらっしゃるし…。
認知症と言っても、アルツハイマー以外にもいろいろな病があり、年齢によっても、その方の個性によっても症状の出方は変わるのだろうから、
僅かな知識・経験でこの映画を否定することは相応しくないのだろうけど。
でも、作為的なところがちょっと鼻についてしまった。
「明日の自分」 私の中ではこの題名に変わっていた。母はこの病気で逝...
「明日の自分」
私の中ではこの題名に変わっていた。母はこの病気で逝きました。主人公のような症状、いっぱいあります。
「泣きます」という感想が多々見られるが、私は泣けなかった。ただただ怖くなった。いろんなことをどんどん忘れていく…恐怖でしかない。やがて家族すらも分からなくなるのだ。せめて家族に迷惑かけないよう、施設を考えておかなければならないかもしれない。
そうなる前に目一杯人生を楽しみたい(笑)
J:COM
リアル
エリートサラリーマンの佐伯の無念と恐怖が痛い程良く伝わってきて、自分自身に重ねて鑑賞することができました。私も年齢と共に人の名前や映画の作品名すら思い出せなくなってきているので、覚えていること自体が若さだったと実感しています。
自分はアルツハイマーにはならないと根拠の無い自信がありましたが、誰もに平等に訪れることなんですよね。アルツハイマーに限った事ではありませんが、身体と頭が動くうちにやりたい事をやろうと再認識しました。
10年ぶりに
10年ぶりに見た。
当時は会社の同僚に見送られる時が
ピークと感じていた。
久しぶりに見ると、
退職した後の夫婦の関係が
こんなにも素晴らしい作品だということに
年齢を重ねて始めて気付いた。
2人の表情がを見ているだけで、
想いが伝わってき過ぎて、
本当に辛くなる作品…
自分ならば、
相手にこんなに迷惑をかけたくないと思いつつ、
こんなにも思ってくれる奥さんを自分は見つけられるのだろか、夫婦って、家族の繋がりって良いなと思う作品だなと思いました。
若年性アルツハイマーをテーマにしてるんだけど、希望を持たせる方向で...
若年性アルツハイマーをテーマにしてるんだけど、希望を持たせる方向で作られていている。悲しく切ないながらもストーリーはファンタジーだと思った。現実はもっと大変だろうなということはどうしても考えてしまう。こういうことを実際に経験しているかどうかで感想はだいぶ違ったものになりそう。
働き盛りの中高年に突如襲いかかる若年性アルツハイマー病。治すこと...
働き盛りの中高年に突如襲いかかる若年性アルツハイマー病。治すことも進行を止めることもできないやっかいな病気だ。主人公佐伯雅行は部下に慕われる部長で大得意先のギガフォースの宣伝課長河村からも信頼されている。一人娘も“できちゃった婚”ではあるが、結婚式を控え、幸せの絶頂期にあるかと思われた矢先の病気発覚であった。
ストーリー的には妙な小細工をしない直球勝負の闘病記といったところでしょうか、佐伯夫妻の葛藤と愛を中心とした物語。リアルな演技と絶妙な心理劇。堤監督としてはおとなしいのかもしれませんが、ポイントを押さえた特殊効果によって、佐伯の記憶が失われていく過程や被害妄想になったかのような演出が患者の気持ちを同時体験できるようなシーンが良かったです。特に、妻の若い頃の姿を追いかけるシーンでは、その後新しい記憶を失っていくことを予感させてくれました。
夫婦愛以外でも、生きていればそれでいいというメッセージや、人の優しさ、思いやりに心打たれます。アルツハイマー患者だって、名前は忘れることもあるけど、その人が優しいとか怒りっぽい人だとか、感情に訴える性格だけは心に残るもの。観終わると、自分が暖かく優しい人間になっているかもしれません。
予告編にも登場していましたけど、退職の日に名前を書いた写真をもらうシーンでは確実に泣けます・・・
100-7
Amazon Primeで見た。自分とほぼ同じ年齢の設定なので、映画を見ながら思わず長谷川式テスト(100から7を引くテスト)などを頭の中で行っていた。娘の結婚式のシーンでは思わず涙だが、ラストシーンかと思いきや、自分的にはバッドエンドかな。でも良い映画です。
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