佐賀のがばいばあちゃんのレビュー・感想・評価
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【戦後まもない日本の貧しき市井の民の、逞しさと優しさ。がばいばあちゃんの数々の名言が心に響きます。】
<Caution!内容に触れています。>
■戦後まもなく、広島に住んでいた、父のいないアキヒロは、飲み屋を営みながら二人の男の子を育てていた、母(工藤夕貴)の元から佐賀の母の母、つまりはお婆さん(吉行和子)の家で暮らすことになる。
母を恋する想いを抱きながらも、アキヒロは独自の哲学を持つ祖母と二人で逞しく成長していく。
◆感想
・今作は、やはりばあちゃんを演じた吉行和子さんの姿に尽きると思う。
・ばあちゃんは、傷心の中やって来たアキヒロに”ばあちゃんは、朝4時から働くから。”と言って、有無を言わせずに米の炊き方を教え、家の前に流れて来る所謂規格外品の野菜を喜んで拾う。
その表情には微塵の暗さもない。
まるで、貧乏を愉しんでいるようである。
■ばあちゃんの名言
・くらーい貧乏、明るい貧乏。うちは明るいびんぼうだから、よか。
・辛い話しは、夜するな。明るい昼にすれば、大したことはなか。
他、数々の名言が散りばめられている。
と言って、ばあちゃんがケチな訳ではない。アキヒロが、中学になった時に野球部の大将(主将)になった時には、一番高いスパイクを夜にスポーツ店を叩き起こして買ってあげている。
・アキヒロが、母恋しさに線路に行って広島はどっちか?と思っていると現れる謎のオジサン(三宅裕司)が、優しく見守っているのも良い。このオジサンは随所で現れるが、誰だか分かるよね。
■ばあちゃんの優しさ、佐賀のアキヒロの先生たちの優しさ
・アキヒロが、毎月届く母の手紙(今月は病気になってしまい、2千円しか送れません。)を読んで、いつもはご飯を2杯食べるのに、元気なく一杯で止めた夜に、アキヒロの枕もとに置いてあった大きなおにぎり。
・アキヒロの家にいつもやってくる豆腐屋のオジサン(緒方拳)が、アキヒロに”いつもの欠けた豆腐下さい。”と言われ、皆キレイな豆腐なのにわざと指で穴をあけて半額で売る姿。
・運動会の日に、広島から母が来ずに、独りで梅干しだけの弁当を食べようとしたアキヒロの所に”お腹が痛くなった。弁当を取り換えてくれ。”と言ってやって来る先生たちが持って来る豪華なお弁当。
<今作は、貧乏でも気の持ちようで、心だけでも豊かな暮らしが出来るという佐賀のばあちゃんの人生哲学や、佐賀の市井の人達の優しさに満ちた笑って沁みる作品である。>
もみじまんじゅうぅ
島田洋七による昭和30年代の自伝的ストーリー。高度成長期の頃の映画化という点で、なにかと『ALWAYS三丁目の夕日』と比較されますが、こちらは古行淳之介というもじりではなく、本物の吉行淳之介の妹である吉行和子が主演だ。
明弘少年は2人兄弟の弟。父親は原爆症で早くに亡くなり、母と三人暮らしなのですが、生活が苦しいため、佐賀のおばあちゃんのもとへあずけられることになった。佐賀に連れられていく方法も騙して拉致したようなもの。そしていきなりのホームシック。8歳だと当然です。
ようやくばあちゃんとの生活も慣れてきたかと思っても、「かあちゃんに運動会に来てもらいたい」と子供らしい願い。この運動会のシークエンスは自分の小学校時代を思い出してしまい、泣けてしまいました。楽しい昼食の時間だとか言われても、親が来ない子供は寂しいものです。「運動会のかけっこで順位をつけるな」といったバカな発言をする親もいるようですけど、そんなことより「親と一緒の昼食時間を無くせ!」と主張したいですね。劇中には弁当を交換してくれる優しい先生が登場しますけど、世の中いい先生ばかりではありませんから・・・
先祖代々明るい貧乏を目指すばあちゃんでしたけど、人生訓の宝庫のような人でした。生きることが素晴らしいといった想いが伝わってきます。剣道に憧れるけど金がないからと許されず、おばあちゃんの経済事情も察知できるようになった明弘は柔道ならと申し出るが許されず、「スポーツがしたければ走れ」と言われる。しかも靴は磨り減ってもったいないから裸足で!自分も貧乏だったけど柔道は許されたなぁ~などと、すべて自分の幼少時代を思い出しながらの鑑賞になりました。学校の先生にしろ、緒方拳演ずる豆腐屋さんにしろ、周りも(人に気づかれない)優しい人ばかりだったし、すべて島田洋七の人生のこやしになっていたんだと感じられ、ちょっと羨ましくも思えてしまいます。
演技ではハズレのない山本太郎はもちろんよかったし、工藤夕貴もよかった。島田洋八の登場シーンはなぜか見逃してしまったけど、エンドロールの協力者の中に今いくよ・くるよを見つけたので、ちょっとだけ得した気分になりました。さすがに「もみじまんじゅう~」は聞かれなかったが、このギャグもばあちゃんがいなかったら生まれなかったんでしょうね。
【2006年6月映画館にて】
子育てに悩んでいる人がいたら、この作品で自信がつくと思います。心温まる一品。
MOVIX柏の葉のワンコイン上映で見てきました。
がばいばあちゃんというと、ドケチな鬼婆風のイメージがありました。でも映画をみたら全然違っていましたね。
確かにすごいところはあります。常に大きな磁石を腰からぶら下げた紐引きながら、落ちているくず鉄を拾い集めるところは、がばいです。
裏の川には堰を設けて、近くの市場で捨てられる野菜などをかき集めて、川はスーパーマーケットたい!と豪語します。そればかりか、灯籠流しで流されてきたお供えものをありがたく頂戴してしまうのです。
でもその反面、ケチなばかりではありませんでした。明広がケガをしたときタダで診察してくれ、バス代まで工面してくれた診療所には、即刻乗り込んでいき診察料とバス代を払うなど、ここ一番ではスジを通します。
明広が野球部のキャプテンになったときは、祝いだからと一番高いものをいって、2000円のスパイクシューズを強引に1万円で買おうともするのです。
ばあちゃんの台詞から、どうして“がばい”になったか分かる気がしてきました。貧乏には暗い貧乏と明るい貧乏がある。どうせなら貧乏を楽しめと明広にいうのです。
この人は環境に負けない人なんだな、愚痴を言わない人なんだなと思いました。明広にろくな食事を出せないことも、当然とは思ってなく、何とか食べさせてあげたいという温かい気持ちがよく感じられました。特に明広の運動会の朝、せめて卵焼きを食べさせてやりたいと、かなりの気迫で「生め!」とニワトリに叱り飛ばしているところは何とも可笑しかったです。
明広も母親とおばちゃんが貧乏なところはちゃんと心得ていて、文句も言いません。家計がピンチと知って、ご飯を1膳で我慢したりして殊勝な心がけなのです。そんな明広の枕元に、喰えとメモを置いて握り飯を差し出すばあちゃんの優しさにホロッとしました。 またこっそりアルバイトをして、ばあちゃんに内緒でメガネを買ってやるなど、なかなか孝行なんですね。
原作がヒットしたのは、単にタレント本というだけでなく、厳しい環境の中でも、愛情があれば子は育つという体験に多くの方が共感したからではないでしょうか。
子育てに悩んでいる人がいたら、この作品で自信がつくと思います。厳しい家計の中で満足に子供たちに手をかけてやれないとお悩みのひともいることでしょう。でも大丈夫なのですよ。
かえって満ち足りた生活の中よりも、足ることを知る日々を送る方が、子供たちは親の愛情を知り、感謝することを学ぶものでしょう。
明広が広島に戻ることになり、ばあちゃんと別れるときのさっさと行けとむ言っておきながら、行くな~と何度も叫ぶシーンが印象的でした。ばあちゃん役の吉行和子は、気の強さと優しさとかばいぶりでいい味を出していました。明広の演技も素直さが出ていてよかったです。
ところでエンドロールで、協賛のところに地元佐賀の個人名や中小企業名が多数告知されていました。佐賀県民が小口で出資しあった、まさに県民映画だったようです。
なお、原作者島田洋七自身が監督を手がける「島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん」の撮影が本日クランクアップしたそうです。
こっちは来年公開で、ばあちゃんに香山美子さん、昭広の母親が高島礼子さん。郵便配達員で東国原英夫宮崎県知事も出演。原作者としては、本作の出来栄えにちょっと不満があったのかな?
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