「暴れなかったし、馬にも乗らなかった松江所長(松平健)。サンバを踊るかと思っていたら、阿波踊りを踊っていた」バルトの楽園(がくえん) kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
暴れなかったし、馬にも乗らなかった松江所長(松平健)。サンバを踊るかと思っていたら、阿波踊りを踊っていた
笑ってしまいそうになったけど、こらえました。実話がベースなだけに徳島の坂東捕虜収容所の物語に坂東英二が出演・・・さすがに彼は久留米の所長だったようですが、下手するとコメディ映画になってしまうところです(実際に彼の故郷だそうです)。また、脱走ドイツ兵カルルが匿われた民家では市原悦子が「日本昔ばなし」のように傷の手当てをし、パロディっぽい会話にほんわか気分にさせられましたが、青のコンタクトをつけた大後寿々花と自転車の少年なんて『SAYURI』のパロディだとしか思えず、これで松平健が白馬に乗って海岸を走っていたら卒倒してしまうところでした。
第一次大戦中の敵国ドイツ。その捕虜に対しても人間らしく扱い、その恩返しとして日本では初めてのベートーベン第九交響曲を演奏してくれるというストーリー。テレビのスペシャルドラマでも観たことがあるのですが、この映画ではドイツの偉大な音楽に触れる喜びよりも会津出身の所長の寛大な待遇を讃えるような内容になっていました。それはそれで映画として成り立つのですが、感動できるはずの第九の演奏に関しては、最後にちょこっと付け足したというイメージしか残りません。もっと楽団員をクローズアップしなければ、この映画のタイトルそのものも「がくえん」と読ませるより「らくえん」のほうがいいのではないかとも感じてしまうのです。
松江豊寿という人物は会津人として政府や軍部に虐げられたという過去もあり、その辛い経験とドイツ兵捕虜に対する優しさは「武士の情け」というキーワードで結びつく。積極的なドイツ文化吸収と人道的扱いという功績を残す彼は尊敬に値する人物なのに、感動できないのは何故なんだろう。やはりこの映画の作り方。ドイツ音楽の素晴らしさや印刷技術、パンなどの食文化を取り入れた事実よりも、愛国心や武士道ばかりが強調されていたことや、ドイツ音楽に傾倒していく日本人がほとんどいなかったことが原因なのかも・・・
最後に、頼むから、第九を聴きながら阿波踊りやヘッドバンキングするのはやめてください・・・実際に日本人の反応はそんなものだったのかもしれないけど、笑ってしまうじゃないですか・・・