「生き抜くことの過酷さを思い知る」陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
生き抜くことの過酷さを思い知る
ニューヨーク、移民が半数を占めるクイーンズ地区。この地の子供たちが一切トラブルに巻き込まれずに成人することなど皆無なのだろうか。
殺人を犯してしまった少年・ジョナサンは、ワラをも掴む気持ちで自己を正当化し、危険を承知で助けの手にすがった。そうしないと、この地では生き抜いていけない。なんであろうと、助けの手があるだけでも幸運なのだ。
生きることの難しさを知るジョナサンにとって、家族は宝物だ。やっと手に入れた安らかな生活。そこに、過去の忌まわしい事件を蒸し返す正体不明の人物が現れたのだから、心中穏やかではない。
悲しいことに、事件を目撃した幼なじみを疑ってしまう。「ぜったい、誰にも話さない」と約束した言葉を疑ってしまう。
人というのは、保身に走ると、どうしてこうも人を信じることができなくなるのか。第三者の目で見たとき、成人した幼なじみの言葉の端々を咀嚼すれば、約束を破っていないことが感じ取れるはずなのに・・・。
この作品からは、生きることの難しさ、そして、信じることの難しさを痛いほど感じる。
警察組織の黒い内幕も語ってはいるが、主人公が過去の露見を恐れた行動の代償はあまりにも大きい。
また、大人のエゴで救われた少年は、果たして幸運だったのだろうか。罪は罪として、法に照らした処分を受けたほうが良かったのではないか。そう思いはするが、それも少年が“ミルク”と呼ばれた白人だから言えることだ。ほかの人種だったら、正当防衛で処理などという甘い判定は到底望めない。そういう土地なのだ。
登場人物の心情を汲んだフォーカスなど、撮影が上手い。また、編集も現在に少年時代を挿し込むタイミングの手際がいい。