劇場公開日 2006年12月9日

「コンパクトに市川崑の生涯をたどるドキュメンタリー」市川崑物語 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0コンパクトに市川崑の生涯をたどるドキュメンタリー

2024年1月6日
PCから投稿

途中まではコンパクトに淡々と市川崑の生涯をたどるドキュメンタリーで、紹介される作品の多くは、題名と一枚の写真を提示するのみ。豪華なフィルモグラフィーには圧倒されるが、自分は1/3も観ていないと気づく。ナレーションではなく文字で進行するアイデアは、面白いだけでなく観やすかった。アニメ作家としての意外なデビューや、和田夏十との関係性もよく分かった。作り手の思いが語られるのは、後半に「犬神家」を語る下り以降であって、全体としては作り手の思い入れを押しつけるウザい作品ではない。それまでは岩井監督は自分の姿を謙虚に消しており、岩井作品ということは見終わった後に初めて知った。そして「犬神家」以降は一転して、岩井の思いが溢れてくる調子の変化が面白い。市川崑とは関係ないが、「犬神家」のテーマが「ルパン三世」で有名な大野雄二作であると知ったのも収穫。市川崑をよく知る人には物足りないだろうが、虚心坦懐に観れば良い作品。

Imperator