劇場公開日 2011年9月1日

  • 予告編を見る

「「いのちの樹」という点では、先日見た『ツリー・オブ・ライフ』よりもこっちの作品のほうが雄弁に語りかけていると思います。」ライフ いのちをつなぐ物語 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「いのちの樹」という点では、先日見た『ツリー・オブ・ライフ』よりもこっちの作品のほうが雄弁に語りかけていると思います。

2011年8月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 前作『アース』は画面に拡がる何万匹の動物の群れを捉えた映像に感動しました。あれからBBC NATURESの撮影技術は進化を続けて、本作では動物目線のいままで見たこともない視点から動物たちの生態を捉えることに成功しています。先ずは動物たちのまるでシナリオどうりに演じているかのような決定的む一瞬に驚かされ、その次の瞬間では、創意工夫でエサをとり、エサにされる危機から逃げる、そんな動物たちの必死の姿に感動させられました。いのちをつなぐために、山川草木の一切の生き物たちが全てをかけ、必死に生きる姿を見せつけられると、なんて自分はちっぽけなことで悩んでいるのかと反省してしまいました。そして、神仏が創造された500万種に及ぶ地球上の数々の生物種たちは食物連鎖しあい、互いの自己犠牲の上で「いのちの樹」を作り上げているのですね。百獣の王ライオンですら、自分たちだけでは数ヵ月で死滅してしまうことでしょう。一匹たりとも他の生き物の存在に依拠しなければ生きていけないことが本作ではありありと浮かんできます。小地蔵的には、『諸法無我』を強く感じた作品でした。「いのちの樹」という点では、先日見た『ツリー・オブ・ライフ』よりもこっちの作品のほうが雄弁に語りかけていると思います。

 『アース』と違う点は、大規模な群れを描くことよりも、一匹の動物の視線にこだわって撮影されたことが大きいと思います。まるで脇役が主役を見つめるようなカメラワークで取られた映像は、より一層ドラマ性が色濃くなりました。

 印象深いのは、冒頭登場するアザラシ親子の深い絆。天敵を避けるために敢えて極寒の内地で出産する親アザラシの子供を守るための行為は涙を思わず誘われました。
 次いで登場するのが、何やら見慣れた日本の温泉風景。なんと長野の地獄谷のニホンザルが二番手で登場するではありませんか。海外の人には、極寒で極楽気分を味わう温泉サルがよほど珍しかったのでしょう。ただ初めて知ったのは、どんなサルでも自由に入れる訳ではないこと。ボス猿の一派しか入浴が赦されないのですね。じっとそばで凍えているだけ。う~ん、サルの社会も序列が厳しいですぅ~(^^ゞ
 冒頭には、他にも親カエルの頑張りぶりなど、主に親子ネタで感動シーンを見せつけてくれました。

 次に登場するシークエンスは、生存のために驚異的な技を見せる動物たちの生態がクローズアップされます。自然界の常識を破り三兄弟で息を合わせてダチョウを捕獲してしまうチーターは、なかなかのチームプレイぶり。
 はたまた、群れで魚をぐるぐる囲っていくイルカの智慧に脱帽。追い詰められたイワシは、ピョンピョン跳ねて、イルカの口の中へダイブ!!口をぽっかり開けていただけで、エサのイワシが飛び込んでくれるように仕向けるなんて、なんて賢いのでしょうと感心させられました。
 また驚くべきは、地下に巣に巨大農場を作ってキノコ栽培をするアリの姿でした。これだけでもびっくりなのに、キノコの原料となる植物の茎を切り出して運ぶ姿が圧巻です。数百匹のアリたちがエッチラコッチラ、切り出した大きな茎を持ち上げて運こぶところをカメラはアリ目線で映し出していて、ちょっと見たことない風景を見せてくれます。

 見たことない映像の決定版は、ハネジネズミの逃走するシーン。これはCGか!と思えるくらい、現実離れしたカメラアングルで、ハネジネズミの疾走感を切り取っていました。小地蔵のトンヅラする早さには自信があったのですが、ハネジネズミくんには負けましたねぇ(^^ゞ

 最後に、いのちをつなぐ行為として生き物たちの婚活活動が描かれました。クジラの雌は海面をヒレで叩いて、臭いを振りまき、オスを呼び寄せます。集まったオスたちは、20トン以上の巨体を激しくぶつかりながら、求愛合戦を繰り広げるのです。なのにですぞぉ、呼び寄せたメスは、オスの気を引きつつ、全力で逃げるのです。ワタシを捕まえてぇ~とね。クジラのオスはつらいよぉ~と寅さんも同情するかも知れません。何やら、人間の女性でもあり得そうな、クジラのメスの小悪魔ぶりでありました。

 力強く生きる動物たちの姿に、みなさまもきっと生きる勇気を与えられることでしょう。必見ですぞぉぉぉ!

流山の小地蔵