「【“住田、頑張れ!死ぬな!夢を持て!”今作は両親に捨てられた少年を両親のネグレクトに逢う少女及び被災した人達が支える物語であり二人を演じた染谷将太と二階堂ふみの演技が、物凄き作品である。】」ヒミズ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“住田、頑張れ!死ぬな!夢を持て!”今作は両親に捨てられた少年を両親のネグレクトに逢う少女及び被災した人達が支える物語であり二人を演じた染谷将太と二階堂ふみの演技が、物凄き作品である。】
■両親(光石研&渡辺真起子)に捨てられた住田(染谷将太)は、母が経営していた貸しボート屋を、無気力な表情で営んでいる。
貸しボート屋の周囲には、震災で家を失った人達、ヨルノ(渡辺哲)達が住田の許可を得てブルーシートで暮らしている。
住田の同級生、茶沢景子(二階堂ふみ)は、両親からネグレクトに遭いながらも、日々住田の貸しボート屋に来て、手伝い、ヨルノ達とも交流を持つ。
或る日、住田の父(光石研)が、いつものようにフラリと家に来て、ヘラヘラ笑いながら住田に”死んでくれよ。”と言った後に、住田は衝動的に父をコンクリートレンガで殴り殺してしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・前半は、救いようがないほど暗い展開であるが、アイロニーが炸裂している。住田と茶沢の担任教師は、”被災しても、頑張れ。君たちは世界で一つだけの花だ。”と言うが、茶沢は職員室に乗り込んで”世界で一つだけの花って何ですか!”と詰問するも、薄っぺらい善意をひけらかした担任は絶句するばかりである。
・住田の家にやって来る、父が600万の借金をした金子ローンの連中(金子:でんでん
谷村:村上淳)も、前半では暴力的だが、会社社長だったヨルノが、肩代わりして全額返済すると、金子は住田に対し接し方が変わるのである。シニカルでありながら、人間の本性を描いている。
■今作は、人間の悪性と善性を描いた映画である。
善性の塊は、茶沢であり、ヨルノ達である。
悪性は住田と茶沢の両親と、劇中で描かれる数名の無差別殺人犯である。
その境にいるのが、住田である。
だが、その住田を、自らも両親のネグレクトに逢い、家ではヘッドフォンをしながら暮らす茶沢は必死に支え、彼を善の側に引き寄せるのである。
■ラストシーンは特に凄い。茶沢は住田の横に寝て”将来、結婚しよ!”と言うのだが、住田の表情は心なしか、穏やかになっている。そして、明け方に彼は隠し持っていた拳銃を持ち、池の中に入って行き拳銃を頭に向けるも、空に向かって撃つのである。その銃声を貸しボート屋の中で、聞いている茶沢。
だが、住田は池からずぶ濡れで上がって来て、池に向かって”呪いの石”を投げていた茶屋に”自首する。”と言うのである。
そして、二人は駆けだして、茶屋は住田に”住田、頑張れ!死ぬな!夢を持て!”と叫び、それを聞いた住田も涙を流しながら”住田、頑張れ!”と叫ぶのである。
ラスト、画面は津波に流された家々の跡を、俯瞰して映すのである。
<今作は両親に捨てられた少年を両親のネグレクトに逢う少女及び被災した人達が支える物語であり、二人を演じた染谷将太と二階堂ふみの演技が、物凄き作品である。>
