劇場公開日 2012年1月14日

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「誰かが自分を愛してくれること」ヒミズ まおさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0誰かが自分を愛してくれること

2018年1月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

子供は親を選べない。生まれた環境も選べない。
親が子供を絶対に愛してくれるっていうのは、当然のことのように考えられているけど、その動物だって普通に持っている子供への愛情を持っていない親はたくさんいる。
「生まれてこなければ良かったのに」と親から言われる感情は、正直私にはわからない。その言葉を受け止められないように思う。
この主人公もその彼女も親からの愛情は受けていない。むしろ、死んでほしいという殺意に近い感情をぶつけられている。
無条件で受けられるはずの愛情を受けられず、憎しみだけを投げかけてくる家族。そんな家族なら、いない方がいい。
なのに彼らはまわりの人を憎まない。主人公は、震災で家をなくした人たちを助けている。彼女は、壊れかけている主人公のボートハウスを手伝いながらも彼を愛して彼を励ましている。
受けられるはずの愛情は受けていないのに彼らは、少しづつまわりから愛情を受け取っている。
主人公が最後にどうせ死ぬならこの命を何かに役立てたいと思い、自分が犯罪を犯してでも社会の悪人を殺したいと思ったその気持ちは、どこから来たのだろう。
そして、そんな自暴自棄になっている主人公に対して、最後に「がんばれ」と励ましている彼女の愛情は、何から生まれたんだろう。
世の中で親からの虐待、いじめ、憎しみをぶつけられることはたくさんあるけど、必ず、誰か自分を愛してくれる人はいる。(それは、親じゃなくても)そんなことを考えた。

七星 亜李