「計算され尽くした脱力系の笑いを敢えて今サラリーマン社会に投じた度胸は評価して良い。オモロいか、オモロないかは別だが…」サラリーマンNEO 劇場版(笑) 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
計算され尽くした脱力系の笑いを敢えて今サラリーマン社会に投じた度胸は評価して良い。オモロいか、オモロないかは別だが…
大不況の下、殺伐とした会社内で繰り広げられるサラリーマン共のどこかヌケた生活を独特の笑いの視点で連ねたコントドラマがまさかの映画化。
スタッフ・キャスト陣自身も精神状態は“まさか”のモードだったらしく、深夜のユル〜〜いノリを躊躇なく、そのままスクリーンに乗っけており、全編不条理な展開は、緻密な計算であり、ヤル気ゼロにも受け取れる。
特にクライマックスへと進むに連れて、加速化する脱線事故の玉突き加減は、《天下の国営放送が何、カルト映画撮ってやがんだ?!》と、呆れかえる始末だった。
面白いっちゃあ面白いけど、ツマンナイっちゃあツマンナイ不思議な空気で批評するのが難しい。
でも、確実に断言できるのは、《バカバカしいっちゃあ、とてつもなくバカバカしい映画だね》ってぇ事ぐらいである。
万年B級会社の落ちこぼれ社員がスクラム組んで一大プロジェクトを立ち上げ、トップ企業に挑むプロセスは、クレイジーキャッツ全盛期の『無責任シリーズ』を彷彿とさせる。
ビール会社が舞台やので、『ニッポン無責任時代』の現代版ってぇ位置付けだろうか?
奇想天外なアイデアでビール業界を七転八起しながら切り込んでいく道程をノーテンキなギャグ、歌、恋etc.エンターテイメント満載で盛り上げていくため、共通項は多い。
しかし、大きな違いはスーダラスイスイ♪とばく進する植木等のような看板エースが不在であることだ。
故に開発チーム各々の個性を発揮し、笑いのキャッチボールを投げ合う。
そんなオチの無い団体芸は、己の引き出しから『プロジェクトX』をパロディ化した捨て身の策と云える。
天下のNHKも、やぶれかぶれやな〜と思うと許してもエエわぁと気楽に接してしまう。
そこが狙いなんやろね
受付嬢に篠田麻里子を、超老け顔の新人社員に平泉成を、負けず嫌いの社長に伊東四朗を…etc.etc.贅沢な端役を並べるスタッフの遊び心を受け入れるのも今作の楽しみ方の一つかもしれない。
計算され尽くした脱力系コメディは数多くあれど、敢えて大不況の今、会社に持ち込んで一本の映画にこしらえた意味は意外と大きいハズでは?
ギリシャ破綻のニュースを尻目にふと思ったところで、最後に短歌を一首
『戦場に 企画書搾り 打ち込めば 弾けてセクスィー 美酒の苦味よ』
by全竜